見出し画像

川の歴史と"できかた"を想像してみる:河川の変な流れ探索part4(岩手県南東部中山間地域)【流域を考える旅vol.1】

前回まで、この地域の河川の特徴について見ていきました。
やはり変だなと思う場所がいくつもあり、どんな歴史なのか探ってみたくなってきました。
今回は、そのカギになりそうな特徴をピックアップして色々と考えてみたいと思います。

川の歴史を考える

やはりナゼこうなったか?は気になりますよね。
今回も研究論文などの情報は見つかりませんでしたので、地形・地質の既存資料をもとに筆者が考察してみます。

全体図

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した図をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

この地域のいくつかの河川を見てみると、いくつかのポイントがあります。

〇上流に幅広い谷があるか?
この地域の河川は「上流側の谷が広い」のが気になるポイントですが、そうでもない河川もあります。
その違いが川の歴史と関係していそうです。

〇河川の標高の違い
もちろん川ですので下流から上流まで標高は様々ですが、主要部分の標高に違いがあったりします。これもカギになりそうです。

〇地形&地質の違い
この地域はトーナル岩(花崗岩系の岩石)がメインですが、同じトーナル岩でも微妙な違いがあり、川の歴史を左右していそうです。

では、それぞれ見ていきます。


幅広い谷の有無と標高を確認

地形図のスケールを使って谷の長さ(幅の広い区域)を測ります。
標高はスーパー地形アプリで確認します(十字カーソルを合わせるだけ)。

砂鉄川_興田川

〇砂鉄川中流部
・幅:約500~800m
・長さ:約10km
・標高:約90~170m
この地域最大級です。幅広い谷が長く続いています。

〇興田川下~中流部
・幅:約500~800m
・長さ:約7km
・標高:約90~170m
いくつか狭窄部はありますが幅広い谷が長く続いています。砂鉄川より1まわり小さいといったイメージです。

猿沢川平坦範囲

〇猿沢川中流部
・幅:約500~800m
・長さ:約3km
・標高:約100~130m
幅は砂鉄川、興田川と同等ですが、長さが短い分小規模です。

砂鉄川_曽慶川_千厩川

〇曽慶川上流部
・幅:約200~500m
・長さ:約8km
・標高:約40~110m
長さこそ約8kmと長いですが、幅は上の3河川と比べて狭いです。
また特徴的なのが標高で、極端に低いですよね。

千厩川_大平川

〇千厩川上流部
・幅:約300~500m
・長さ:約5km
・標高:約100~170m
長さ・幅ともに興田川よりやや小規模ですが、標高は同程度。
また中流域に幅約500m、長さ約1kmの小規模な平坦地があります。

〇大平川上流部
・幅:約100~200m
・長さ:約3km
・標高:約100~140m
他の河川と比較して河川幅は圧倒的に狭く、そういう意味では普通の河川です。比較のため上流域を測ってみました。
中流域かなり小さいですが平坦地が島状に見られます。


大平川のナゼ

こうして見ると6河川の中では大平川が一番特殊です。
河川幅は狭く他の河川のような「変だな」と感じるような幅の広い谷は見られません。(※逆に言えば「普通」なのですが笑)
これは千厩川の中流域と同様だと考えることもできます。
千厩川は上流域こそ幅の広い谷ですが、それ以外は狭窄部の多い河川です。

これは、地域南部の地質と関係がありそうです。

画像6
スーパー地形(カシミール3D)上でシームレス地質図V2(産業総合研究所)を表示。

図の中央やや上よりの「への字」の水色部分が千厩川上流の平坦地です。
地質図を見ると千厩川の北には、トーナル岩(花崗岩系の岩石)の後に貫入したマグマが冷えた岩石があります(図の紫色)。
以前、この地域の地質のお話で紹介したひん岩です。(※シームレス地質図では石英閃緑岩と記載)
そして同じものが東や南東にも分布しており、この岩石は比較的硬いらしく、高い山地になっています。
またトーナル岩が周囲の地層を焼いて硬くしたように、ひん岩の周囲のトーナル岩も焼かれて硬くなったと考えられます。

つまり、これが千厩川中流域と大平川に幅広い谷が極端に少ない理由と思われます。

この地域の歴史がなんとなく分かってきました。
次回では中央~北部の4河川の歴史について考察していきます。

お読みいただき、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?