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エッセイアーカイブ集

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『榧乃徒然』内にて書いたエッセイの中から、たまにピックアップして無料公開しています。
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記事一覧

「愛しき鳥」

「愛しき鳥」

*2022年4月8日のエッセイの再掲です。

家で飼っている鳥に、名を呼びかけて手を差し出すと、必ず寄ってきて、その手に乗ってくれる。
毎日のことで、それが当たり前だと思っている。
けれどこの間ふと、「乗ってくれるかな?」と、なぜか初心に返ったような、出会ったばかりの頃の感覚がよみがえった瞬間があって、そのとき冷静になった。
小さな小鳥が、無防備にも巨人の手に乗ってくれるのなんて、ぜんぜん、当たり

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「バイクに乗れば」

「バイクに乗れば」

*2021年12月23日のエッセイの再掲です。

自転車に乗ってコンビニまで行こうと思い、その前にタイヤを指先で押して空気の具合を確認して、だいぶ抜けているようだったので空気を入れる。
ほんとうにたまにしか乗らないせいで、ほとんど自転車に乗るたびに毎回この動作をしている。
近場のコンビニに行く程度のことならば、いっそ歩いた方が早いのではないかという気になってもくるが、そんな考えを振り払いながら黙々

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「慢心に泡」

「慢心に泡」

*2021年12月6日のエッセイの再掲です。

今朝、朝食を終え、いつものように洗い物をしていたら、コーヒーサーバーが手から滑り落ちた。
落ちたと言ってもシンク内での出来事、高さ十五センチそこらからの着地だったので、ふつうに拾い上げて洗い物を続行しようとしたのだが、体感三秒ののち、私は思わず「ええええっ」と声を上げた。
ぶつかったところの縁が、無惨にも大きく欠けてしまっていたのである。

食器を割

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「冬の匂いと石油ストーブ」

「冬の匂いと石油ストーブ」

*2021年12月17日のエッセイの再掲です。

冬の浴室の空気は、特別な匂いがする。
どうしてかわからないけれど、その冷たい匂いが、祖母の家と同じに感じるから。

子供の頃、祖母の家にはしょっちゅう訪ねていた。
夏休みや冬休みは必ずそこで過ごしたし、ゴールデンウィークなども隙あらば訪ねた。
だから、祖母の家の、一年の色々な時期を知ってはいるのだけれど、匂いで思い出すのは冬のことばかりだ。

湯気

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「つくりとほどき」

「つくりとほどき」

*2021年12月18日のエッセイの再掲です

昨日から外泊しているのだが、宿泊前の荷造りをするとき、私は身の回りの荷物をまとめるという作業がかなり下手くそであると実感する。
宿泊準備が整うまでにあちらこちらと七畳ほどの狭い部屋を何度も往復し、一度荷物を鞄に詰めたかと思えば、あれも持って行きたい、とまた部屋の中を物色するためあちらこちらとうろつき回る。
しかしこれは荷物になるだけであまり使わないか

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「わからん生えた」

「わからん生えた」

*2021年12月14日のエッセイの再掲です

親知らずがかなり生えてきている。
毎日、あー、生えてきてるなー、と思っている。
上の歯に一つと、下の歯にが二つ生えてきており、下のはどうやらかなり横向きになっている。
特に右下の親知らずに押し出された歯茎が、行く宛てを見失い、肉塊として残っていてなかなか気持ちが悪い。
微かな痛みもあるので、そろそろ歯医者に行った方がいいなと思っている。
思ってはいる

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