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「冬の匂いと石油ストーブ」

2021年12月17日のエッセイの再掲です。


冬の浴室の空気は、特別な匂いがする。
どうしてかわからないけれど、その冷たい匂いが、祖母の家と同じに感じるから。

子供の頃、祖母の家にはしょっちゅう訪ねていた。
夏休みや冬休みは必ずそこで過ごしたし、ゴールデンウィークなども隙あらば訪ねた。
だから、祖母の家の、一年の色々な時期を知ってはいるのだけれど、匂いで思い出すのは冬のことばかりだ。

湯気に混じった石油ストーブの匂いとか、心臓の鼓動が早まるくらい冷たい廊下の空気とか、こたつ布団の含んだ温もりとか、そういうものが、私の身体が大きくなっていってもいつも全く同じ体感でそこにあった。
実家を出ても、帰りたくなるような懐かしい匂いや景色は、実家ではなく祖母の家にある。

クリスマスからお正月までの期間が、一年の中で特別な気がしているのは、きっとこの思い出のおかげだ。
無邪気な子どもではなくなって、サンタも来なくなったけれど、今年もやっぱりどこか特別な気持ちで、来たる年末を待っている。


かや


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マガジン『榧乃徒然』にて、毎日エッセイと日記を書いています。
今回のエッセイは、こちらの記事からの抜粋による再掲です。


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この写真は、《冬、山の向こうの夕焼け》


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