見出し画像

「バイクに乗れば」

2021年12月23日のエッセイの再掲です。


自転車に乗ってコンビニまで行こうと思い、その前にタイヤを指先で押して空気の具合を確認して、だいぶ抜けているようだったので空気を入れる。
ほんとうにたまにしか乗らないせいで、ほとんど自転車に乗るたびに毎回この動作をしている。
近場のコンビニに行く程度のことならば、いっそ歩いた方が早いのではないかという気になってもくるが、そんな考えを振り払いながら黙々と空気入れのペダルを踏む。
手間がかかっても、たまの自転車はやっぱり特別なのだ。

何度も歩いて往復している道でも、自転車に乗ればいつもの道と違って見える。
視点が少し高くなって、視界がとても広くなる。
遠くまで見えて、多くの音が聞こえる。
坂道を下るときに風を切る感覚は、身ひとつでいるときには知り得ない高揚感がある。
運動不足の脚は、少しの距離でもすぐに疲れるけれど、目一杯ペダルを漕いだ後の脚の重さは、なんだかちょっと気持ちいい。
自転車を降りたあとに歩くと、自分の脚の進むのがものすごく遅く感じて、水の中を歩くときみたいな感覚になって、それも面白い。
そういう良さが、この乗り物にはある。

バイクに乗れば、車に乗れば、また違う面白さがあるのだろうな。
バイクも車も、一度も運転したことないままに死ぬのはもったいない気もするから、やっぱり免許を取ろうかな、といつもほんの少し思ってはいるのだけど、本気の勇気はまだない。
いつか、その気になるときがやってくるだろうか。
もしかすると、くるかもしれない。
そのときはきっと、朝焼けの海を目指して走るのだ。


かや



・・・

マガジン『榧乃徒然』にて、毎日エッセイと日記を書いています。
今回のエッセイは、こちらの記事からの加筆修正による再掲です。


・・・


この写真は、《私の愛車》






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?