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【世界188カ国から40万人が来場】イタリア・ミラノサローネとは?現地からのレポート、日本人有名建築家の作品も


イタリアといえば、食・美術・音楽・映画・サッカー・ファッションなど、様々な方面で有名なものがあるが、皆さんは何を一番に思い浮かべるだろうか?

このnoteでは、これまで筆者の専門ということもあり、音楽についての記事を中心に書いてきたが、今回は幅を広げ、建築・インテリアデザインについて書いてみようと思う。

なぜ今デザインなのかというと、今月9月5日から10日まで、筆者が住んでいるイタリア・ミラノで、"サローネ・デル・モービレ・ミラノ(ミラノサローネ国際家具見本市)" (以下ミラノサローネ)が開催されたからだ。

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(会場のフィエラ・ミラノ 公式サイトより)

この"ミラノサローネ"自体は、建築やインテリア業界人向けなのだが、期間中、ミラノ市内では"フオーリ・サローネ(フオーリとはイタリア語で外に、外での意味)"という一般にも開かれたイベントが開催され、街中にアート作品が展示されたり、普段は入りづらい雰囲気のインテリアショールームもかなりオープンで入りやすかったりする。
また、イタリアという土地柄を生かし、歴史ある建造物(美術館や邸宅など)の中に、現代的なデザインの作品展示があったりと、とても興味深く、見どころの多いイベントなのだ。

今回の記事は、ミラノサローネの概要と、フオーリ・サローネについて筆者が実際に訪れたいくつかの展示の写真を交えながら書いていきたいと思う。



1. ミラノサローネ

ミラノサローネは、ミラノ市にとって一年に一度の大規模なイベントである。

(公式インスタグラムより)

ざっくりではあるが、時系列にこのイベントについて書いてみる。

1961年: 第二次世界大戦後の戦災復興で、ヨーロッパで家庭用家具の需要が増大し、"イタリア製の家具の見本市"として、COSMIT(Comitato Organizzatore del Salone del Mobile Italiano, イタリア家具見本市組織委員会)の運営により、始まった。

1967年: この年から"国際家具見本市"となり、イタリア以外の業者も参加するようになった。

1991年: それまで隔年開催だったのを毎年開催に変更。1991年のサローネでは1,959社(うち海外からは258社)の参加社が144,000平方メートルの広大な会場を埋め、147,000人(うち海外からは53,000人)の訪問客が集まった。ミラノサローネは、世界最大の家具・デザイン展示会となった。

2005年: マッシミリアーノ・フクサス設計の新展示会場フィエラ・ミラノに会場を移転。

2010年代: 2,500社230,000平方メートルの会場に集まる。会場には、世界150以上の国から27万人の訪問客が集まる。

2018年: 6日間の会期に世界188か国から434,509人が集まった。参加各社は家具、家電、素材などの商品のほか、将来発売する商品のコンセプトデザインなどを展示する。

また、2005年より、毎年10月にはモスクワで"モスクワ・ミラノサローネ"が開催されている。さらに、2016年からは、毎年11月に上海で"上海ミラノサローネ"が開催されている。

筆者は、ミラノ在住のため、このイベントの情報もよく耳にするのだが、その時期はホテル代が通常の倍以上になり、多くの人がベッドアンドブレックファーストを利用したり(それでも高いのだが…)するそうだ。個人間でホームステイをしたりするケースも聞いたことがある。とにかく、この時期のミラノ市は、活気で溢れている。市を挙げての一大イベントなのだ。

新型コロナの影響で、例年4月に開催される"ミラノサローネ"は、2020年は中止2021年は延期され9月開催となった。


2. フオーリ・サローネ

さて、前にも書いたように、"ミラノサローネ"は、建築やインテリア業界人向けなのだが、期間中ミラノ市内では"フオーリ・サローネ"という一般にも開かれたイベントが開催される。

街中にアート作品が展示されたり、普段は入りづらい雰囲気のインテリアショールームもかなりオープンで入りやすかったりするほか、歴史ある建造物(美術館や邸宅など)の中に、現代的なデザインの作品展示があったりと、とても興味深く、見どころの多いイベントなのだ。

(公式インスタグラムより)


2020年は、新型コロナの影響で、"フオーリサローネ・デジタル"として、オンラインで654のイベントが開催され、389のブランド681名のデザイナーが参加した。

(公式インスタグラムより)


2021年は、満を持して、"ミラノサローネ"と同時期 (9月5日から10日)にリアルでの開催で、ミラノ市内だけで765ものイベントが開催されていた。この規模感が伝わるだろうか。

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(期間中に開催されたイベントの地図 公式サイトより)

文章だけで書くよりも、筆者が実際に足を運んで撮影してきた写真を交えながらの方が、伝わりやすいと思うので、早速書いてみることにする。


2-1. Università degli studi di Milano (ミラノ大学)


ミラノ大学の校舎内での展示。大きな大学なので、市内にいくつも校舎があるのだが、その中でも一番素敵な建物である。元々は、病院だったところが現在は大学として使用されている。

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日本人の建築家・隈研吾氏と音楽家のプロジェクト作品も展示されていた。

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によってつくられたなめらかな曲線の大きいRING(円)が連なったものを、ヴァイオリンの音によって振動させるというもの。

イタリアでは、日本文化に対する関心が年々高くなっていることに加え、有名な隈氏の作品ということもあり、注目されていた。

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📍 Università degli studi di Milano (ミラノ大学)

Via Festa del Perdono 7


2-2. Orto Botanico di Brera (ブレラ植物園)

ブレラ地区は、フオーリ・サローネの多くのイベントが開催される地区なのだが、その中でもこの"ブレラ植物園"の展示はとても興味深かった。

植物園内にある植物が年間にどのくらいの二酸化炭素を吸収できるかというのを数字にして、それを球体状の展示に。筆者が訪れたのは、夜だったので、ライトアップがとても綺麗だった。

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📍Orto Botanico di Brera (ブレラ植物園)
Via Fiori Oscuri 4/Via Fratelli Gabba 10






2-3. Pratone (プラトーネ)

イタリアの詩人・作家であるアレッサンドロ・マンゾーニの銅像があるサン・フェデーレ広場には、大きなサボテンのモニュメント。イタリア語では、"Pratone(大きな植物の意味)"と名付けられていた。

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ちなみに、この広場にはサン・フェデーレ教会があるのだが、マンゾーニはこの教会を出る際に転倒して頭を強打し、5カ月後に脳髄膜炎を併発して亡くなった。かの有名なジュゼッペ・ヴェルディの「レクイエム」は、彼の追悼のために作曲されたのである。

📍Pratone (プラトーネ)
Piazza San Fedele



2-4. Moooi (モーイ)

Moooiというブランドの、可愛らしい花の椅子の展示が、地下鉄のLanza駅を出てすぐのところにあった。

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スタッフの方が写真を撮ってくれ、純白の紫陽花も配っていた。道の真ん中にポツンとある展示だったのだが、目を引く鮮やかな色合いの椅子である。

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このブランドは、2001年にマルセル・ワンダースとキャスパー・フィッサスにより設立され、オランダ語のmooi(美しいの意)に1つ"o"を加えることで、さらなる美しさやオリジナリティのあるデザインをめざす意味で名付けられたそう。

📍Moooi 
(モーイ)
Via Rivoli 2


2-5. Palazzo Turati (パラッツォ・トゥラーティ)

建物を入るとすぐに一面に広がる、胡蝶蘭の展示。

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こんなにたくさんの胡蝶蘭を一度に見たのは、初めてかもしれない。息を飲む美しさである。

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胡蝶蘭の近くには、人が近づくと花の開花のようにランプシェード(電灯の笠部分)が開く照明があった。このように実際に体験できるのもフオーリ・サローネの醍醐味である。

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📍Palazzo Turati (パラッツォ・トゥラーティ)

Via Meravigli 7



2-6. Villa Litta (ヴィッラ・リッタ)

これといって特徴的ではない外観からは予想がつかないほど、中に入ると豪華なこのヴィッラ・リッタ。


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入ってすぐのところには、赤いストライプが印象的な小さな家のオブジェの隣に、イタリアらしくジェラート店が出店していた。

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エレガントなヴィッラ内には、モダンな布生地の展示や

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ミラノの歴史的な建物がモチーフに描かれたお皿など。

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伝統的なヴィッラと、モダンなアート・展示のコントラストが面白かった。

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おわりに

今月の記事は、ミラノサローネとフオーリサローネについて紹介した。

街を挙げての大きなデザインに関するイベントに、関係者だけでなく一般の人々も関わることができるのはとても素晴らしいことだと感じる。

イタリアに住んでいると、イタリア人のセンスの良さを日常生活の中の様々な場面で感じることがあるのだが、幼い頃からデザイン・アートなどに触れることによって、感性が磨かれていくのかもしれない。

来年は、コロナ前のように4月に開催予定。今から待ち遠しい。海外からの来場者数も戻ることを願う。

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