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〝知らないうちに決まっている〟政策!?ー臨時国会に向けてー

秋の臨時国会が10月20日に召集する方針が固められた。
冒頭解散説も出る中、各事務所は選挙体制をどうするかとやきもきしていると察するところ、休会中は内閣改造だけでなく、政治家の質が問われる事案が散見された。
臨時国会に向け、大きな各種法案審議はないものの、先の通常国会の審議も踏まえ、原子力関連政策等について頭の整理を以下メモする。


GX脱炭素電源法と運転期間について

先の通常国会では、原発の運転期間40年(+20年=60年)ルールが撤廃された「GX脱炭素電源法」が5月31日に可決された。
〝40年ルール〟が決定された背景を考えれば、老朽化・経年劣化なんてお構いなし、転開始30年から10年を超えない期間ごとに、事業者が原子炉. 施設の経年劣化などを管理するための長期施設管理計画を策定するので、よろしくと言ったところ…こう書いてしまうと非常に雑ではあるが、自動車の車検を例に取ってはあれだが、原子炉の部品は比較にならないほど膨大なもの…
国内で現在〝最年長〟の原発は、関西電力高浜原発1号機だ。1974年の営業運転開始から48年が経過している。
今後、こうした年をとった原発が増えていくことになるが、果たして安全性が担保されるのか。継続的な課題である。

出典;資源エネルギー庁

参考;世界の運転中原子力発電所の運転期間別基数

1Fのこと、ALPS処理水のこと

東京電力福島第一原発の廃炉作業は、一向に見通しが立っていない。もちろんそこで大変にご尽力されておられる方がいることも忘れてはならない。
とはいえ、燃料デブリの完全取り出しはいつになるのか、ということころだ。

「ALPS処理水」の海洋放出が8月24日13時3分に開始された。
1回目は9月11日までの19日間に渡って、約7800トンが海へ放出。
10月5日からは、2回目の放出を始めることを決めたとのこと。
この間、核種の測定のあり方、撹拌前後の状況、スラリー(放射性物質の汚泥)についてさまざまな指摘がなされてきた。
特に、海洋放出をめぐっては、太平洋諸国、韓国、中国などからも声が上がっていた。海産物の輸出入の状況や風評被害をどうするかといった〝外交レベル〟での対話が継続して求められていくべきである。

ミランダ・シュラーズさんのご指摘

筆者も関わっている、超党派「原発ゼロ・再エネ100の会」は、9月18日にドイツの脱原発を決めた「脱原発倫理委員会」委員でもあったミランダ・シュラーズ氏(ミュンヘン工科大教授)をお招きして、福島第一原発「ALPS処理水」の海洋放出について、ドイツの受け止めや論点などについてご講演いただいた。
ミランダさんは、(ドイツでは、)「法的に許されず、希釈海洋処分では不適切だ」と指摘。
地球上で生きるものの〝共有財産〟である海を守るために継続したモニタリングは必須であることが再確認された。

ご参考)ミランダさんの資料はこちら
SUPPORTING THE DEVELOPMENT AND PRESERVATION OF TRUST IN THE SEARCH FOR A HIGH-LEVEL RADIOACTIVE WASTE DISPOSAL SITE IN GERMANY -- LESSONS FOR JAPAN IN THE WAKE OF FUKUSHIMA

ATENA(原子力エネルギー協議会)と原子力規制のあり方は?

9月8日、参議院議員会館で、岸田首相宛の「山中伸介・原子力規制委員長の罷免を求める緊急署名」が、「ふぇみん婦人民主クラブ」、「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」、「原子力規制を監視する市民の会」、「原子力規制委員会毎水曜昼休み抗議行動」によりに提出された。内閣府と規制庁担当者が受け取った。

手交に先立ち、まさのあつこさんから、この間の原子力規制委員会(庁)の会見にに基づく「規制委員会の独立性や公開、透明性」等についてご講演があった。
詳報は、まさのさんのnoteをご参照いただきたい。

まさのさんのお話でわかったことは、この間の「GX脱炭素電源法」審議過程でたびたび山中委員長が言及していた〝R2見解〟「運転期間延長認可の審査と長期停止期間中の発電用原子炉施設の 経年劣化との関係に関する見解 」で出てきたATENA(原子力エネルギー協議会)と規制委員会の関係性がおかしくなりかけている?ということ。ちなみに、山中委員長はこの箇所をよく引用していた(何度聞いたことか…)

発電用原子炉施設の利用をどのくらいの期間認めることとするかは、原子力の利用の在り方に関する政策 判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べるべき事柄ではない。

原子力規制庁HP;「運転期間延長認可の審査と長期停止期間中の発電用原子炉施設の 経年劣化との関係に関する見解 」

そもそも原子力規制委員会は、3条委員会。「国家意思を決定し、外部に表示する行政機関であり、具体的には、紛争にかかる裁定やあっせん、民間団体に対する規制を行う権限等を付与されている。(同様の権限を持つ内閣府設置法に基づき設置さ れた委員会を含む。 )」であるはずだ。
まさのさん曰く、『「ATENA」なる原子力ムラが規制を肩代わりすること』がこの間の会見で見えてきたとのこと。

ATENAの活動方針には、下記の通り。
規制当局との対話の積極的な実施ATENA
原子力産業界を代表して規制当局と対話を行う

これを読んだ時みなさんは我が国の原子力規制のあり方をどう考えるか。
ATENA側がやることなのか…?
独立性が指摘されたGX審議では、経産省・内閣府との癒着も問題視された。その反省はどこへいったのか。

安全性向上に向けた ATENAの取り組みについて

知らないうちに進め、決められる政策ごと

〝頭の体操〟ということで、原子力(規制)政策について書いてみた。
他にも山積する課題はあるが、それはご指摘いただけると幸いだ。

筆者の関心事として、他には
・神宮外苑再開発計画
・PFAS(有機フッ素化合物)汚染…別途まとめます

神宮外苑再開発計画関連では、9月15日に日本記者クラブで有識者や関係国会議員による会見が行われた。
同20日には、超党派「神宮外苑の自然と歴史・文化をも守る国会議員連盟」総会も開催。

会見の様子


外苑の再開発をめぐっては、事業者の不十分な説明と環境アセスを蔑ろにしている点などが度々問題視されてきまたが、7日にイコモスから文化的資産が危機に直面しているとして、「ヘリテージ・アラート」が発出された。

総会では、低木を含む3000本以上の樹木を伐採することや歴史ある銀杏並木の景観が失われる恐れなど、本来あるべき、〝都市公園〟の姿を維持する重要性が再確認された。地元住民の方からは、「計画を見直し、未来を担う子どもたちに今の外苑の良さを伝えるべきでないか」という声も。
この際、「明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会」代表の加藤なぎさ氏からの発言にぜひご注目いただきたい。ご本人記事を参照いただきたいが、私たちがこれからの世代に何を残していくか、それは、本件に限らず今を生きる全ての人が投げかけられていることであるはずだ。

明治神宮外苑を子どもたちの未来につなぐ有志の会HP

また、某国内有名ミュージシャンも歌詞に乗せて計画の見直しを訴えられ、話題に。

今必要なのは開発なのか?緑・自然と共生する空間の保持ではないか。計画見直しの輪が広がりつつある中、昨日29日「9月以降に行われる予定だった樹木の伐採は、2024年1月以降にずれ込む見通し」という報道が飛び込んだ。
市民による行動がここまでカタチになったことは大変驚き、嬉しさが込み上げた。

超党派「神宮外苑の自然と歴史・文化をも守る国会議員連盟」総会

最後に
先送りできない課題はまだまだある。災害、防衛、外交etc…
立法府に関わる以上、できる形で模索していきたいと思う
来る臨時国会、〝知らないうちに決まっている〟論戦とならないよう、開かれた民主主義であることを祈るばかりだ。

少し宣伝ですが、開かれた行政・審議のあり方をテーマに、「原子力基本法」について拙稿を出しています。
よろしければご笑覧ください。
「原子力基本法も改正した原発回帰策の暴挙 3・11を忘却した経産省・原子力規制庁・内閣府の再癒着」


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