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ニュースにならないこと

3週間前に「後日、改めて加筆したい」と書いた件がそのままになっていた。岸田内閣総理大臣宛に「原子力規制委員会 山中伸介委員長の罷免を求める緊急署名」4382筆が提出された時の話だ。提出団体らは、事前に原子力規制委員会と内閣府に質問を送り、9月8日に口頭で受け取った回答を受け取った。


「肩代わり」の意味 罷免を求めた団体が規制委に尋ねたこと

質問の一つは、7月19日の原子力規制委員会で山中委員長が「規制当局としては、バックフィットするような課題については」「ATENAが肩代わりをして」と述べたことの真意について。

結論から言うと、原子力規制庁総務課が「規制をするのは原子力規制委員会である」という当たり前の回答を行った。「ATENAが肩代わり」するという表現を山中委員長は使ったが、文字通りのことを意味するものではない旨を答えた。

これに「原子力規制を監視する市民の会」の坂上武さんが、「しかし、山中委員長は会見で、『我々が仮に事業者にその基準を設けて審査をして対策を講じるということになれば、この案件ですと例えば2年、3年』『自主的に事業者が行うとなれば、半年、1年程度でその対策が講じられる』とまで言っている」と追及。

これに総務課は、「事業者独自の安全向上の取り組みはあって然るべきもの。規制をATENAにさせることにはならない」と返した。当たり前の回答だが、間違っても、原発事業者と原発メーカーの事業者集団(ATENA)が、規制を「肩代わり」するという発想を持つ原子力「寄生」委員会に化けないように、面倒だが、監視を続けていくしかない。

本人は罷免署名を知らなかった

その翌週の会見で、罷免を望まれていることをどう受け止めているのか聞こうとしたら、山中委員長は、そんな署名が提出されていたことを知らなかった。

確かに署名の宛先は任命権者である内閣総理大臣。だが、そこには原子力規制庁職員もいた。なのに4382人の気持ちが伝わっていないのか。知らされない方も気の毒だな・・・と思いながら、4382人の気持ちをくみ、原発の運転期間を巡ってのことだと、罷免が望まれている理由を告げ、どう思うかを尋ねた。

山中委員長の回答は次の通り。

「少なくとも公開の場で議論をさせていただきましたし、それぞれの委員が独立した意見を持って得た結論であるというふうに思っておりますので、特段何か外部の機関から影響を受けた結論であるとは思っておりませんし、原子力規制委員会の独立性に何か問題があったというふうにも思っておりません」と、以前と変わらないスタンスだった。

まぁ、そんなもんだよね、と思ってしまう自分にうんざりした。

なお、署名提出と上記の問答については、ふぇみん最新号(9月25日)が「原子力規制委員会の独立性・中立性はどこへ」とレポートしている。

なお、ここしばらくこの「地味な取材ノート」がお休み状態だった理由の一つは、JBpressで連載中の「川から考える日本」の瀬戸石ダムに関する原稿書き。明日9月30日の掲載予定。多くの人に読んでもらえたら嬉しい。

【タイトル写真】

原子力規制委員会が入っている六本木の高層ビル(9月6日筆者撮影)

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