見出し画像

それからの委員会

利用推進と規制を分離するとした仕組みが歪んだ」として、9月8日、規制側の最高責任者である「山中伸介・原子力規制委員長の罷免を求める」署名4382筆が岸田首相宛に提出された。


罷免を求める署名が提出されたわけ

原発の運転期間は、福島第一原発事故後に、原子炉等規制法で40年(最大20年延長1回のみ)と限定された。にもかかわらず、業界と経産省の水面化の働きかけで、停止期間を「運転期間」から外す改悪法案を、いわば先頭に立って推進したからだ。

多くの批判を押し退け、国会がそれを成立させて約3ヶ月。呼びかけは「ふぇみん婦人民主クラブ」。「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」、「原子力規制を監視する市民の会」、「原子力規制委員会毎水曜昼休み抗議行動」が賛同し、4団体共同で、岸田首相に提出された。内閣府と規制庁担当者が参議院議員会館で受け取った(冒頭写真)。

それからの委員会

提出前の時間を使って、委員会の独立性や透明性が疑われることについて、その後、取材を通して見えた実態を話して欲しいと依頼されたので、「それからの委員会」と題してお話をしてきた。

冒頭、「山中委員長を罷免できたとしても、第二、第三の山中委員長が現れるから、私としては、構造全体を変えていかないといけないと思うが、罷免すべきだという声を届ける行動に敬意を表します」旨をコメントし、話を始めた。

使った資料は上記の通り。要点は、以下の通り。

1. 「独立性、中立性、透明性」は原子力規制委員会が掲げる「政策目標」の1丁目1番地(施策目標1)であること

独立性、中立性、透明性があってこそ、施策目標2「原子力規制の厳正かつ適正な実施」その他が可能であること。(P3)

2.それからの委員会で独立性が心配される事案の数々

適合性審査、核燃料サイクル、排出者負担の原則(PPP)破壊、老朽原発、ATENA依存、個人線量計を持ち歩く(実際には持ち歩かない)こと前提の復興と帰還など、さまざまあること。(P4,5)

特に、適合性審査について(P.6)

  • ボーリングデータ書き換えて(改ざん)しまう日本原電に敦賀原発2号を運転する能力はあるか?

  • 着工から30年してもできない日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)の申請書に3100ページの誤りがあって、運転する技術的能力はあるのか?

  • 高浜3、4号機(37歳)の各4200機器を点検し「問題のないことを確認」後に、核燃料の制御棒につながるケーブル接続部に不具合があったのに、ケーブル接続部の調査もしない関西電力に能力あるか?

また、核燃料サイクルについて(P.7)

  • 「試験研究用等原子炉」は、実験炉→原型炉→実証炉と進んでから実用化へ向かうが、

  • 核燃料サイクルの要・高速原型炉「もんじゅ」は冷却材のナトリウム火災が起きて先に廃炉が決定。

  • 高速実験炉「常陽」は臨界から46年超。2007年に燃料交換機が破損・変形、以来16年間、原子炉内に外れた固定ピンが未回収で入ったまま。

  • にもかかわらず、2023年7月26日、原子力規制委員会は新規制基準に適合したと判断、設置変更を許可。

  • 政府は2023年2月閣議決定「GX実現に向けた基本方針」で高速炉は「次世代革新炉」とした。

  • 政府から独立して、基準に基づいて判断ができるのか?

3. ATENA依存について

今年5月、原子力エネルギー協議会(ATENA)は事業者の活動に関して「自律的対応」に関与したいと、規制委との意見交換を要望。しかし、実際には、やってみようとして、川内原発でも柏崎刈羽原発でも事業者の活動を把握できていなかったことがわかった。

だから、本来なら無かったことになるはずの話だが、7月に意見交換が実現。

その結果、山中委員長は、「ATENAが肩代わりをして事業者の自主的な取組として取り組んでいくという決意表明をされて、その取組を原子力規制委員会としては認めたわけでございます。」(2023年7月19日原子力規制委員会議事録)と発言。その日午後の会見の模様をお話しした。(原子力ムラが原子力規制委員会を肩代わりする足がかりを作った日 で既報)

4. 独立性、中立性、透明性についてどう自己評価しているか?

8月23日、原子力規制委員会は、総務省所管の政策評価法に基づいて行う政策評価について発表。令和4年(2022年)に起きたことの評価と2023年度の取り組みについてだ。その自己評価について、9月6日の会見で疑問点をぶつけた。

その結果、「運転期間を電気事業法に移す事前相談が7月から10月まで、規制委員会に相談なく、経産省との間で行われていたということについて」は、「独立性には問題なかった」「もっと透明性を高めるべきである」という評価に留まっていることがわかった。

5. まとめ(実態を見ながらこんなことを考えています)

以上のことから、

  • 法令解釈に長け、前任者のやったことを覆さない官僚(規制庁・経産省)から独立して判断ができるのか?

  • 行政機関でありながら、政府・国策から独立して、国策(例えば核燃料サイクル)に歯止めをかける判断が法令に基づいてできるのか?

  • バックフィットをATENAに肩代わり(★)させようとしている原子力規制委員会は、「規制の虜」(規制当局が国民の利益を守るために行う規制が、逆に企業など規制される側のものに転換されてしまう現象)から独立できるのか?

  • 国策そのものを変えるしかないのか?

ということを考えている、と結んだ。

2023年9月8日、岸田首相宛の「山中伸介・原子力規制委員長の罷免を求める緊急署名」が、「ふぇみん婦人民主クラブ」、「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」、「原子力規制を監視する市民の会」、「原子力規制委員会毎水曜昼休み抗議行動」によりに提出された。内閣府と規制庁担当者が参議院議員会館で受け取った。

署名を提出した4団体は、その後、内閣府と原子力規制庁からヒアリングを行ったが、山中委員長が規制をATENAに「肩代わり」させる★とした表現については、後日、改めて加筆したいと思う。

(なお、この日は、衆議院参議院ではALPS処理水をテーマに農水委員会と経産委員会の連合審査会(閉会中審査)が行われていた。)

【タイトル写真】

2023年9月8日、筆者撮影。岸田首相宛の「山中伸介・原子力規制委員長の罷免を求める緊急署名」が、「ふぇみん婦人民主クラブ」、「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」、「原子力規制を監視する市民の会」、「原子力規制委員会毎水曜昼休み抗議行動」によりに提出された。内閣府と規制庁担当者が参議院議員会館で受け取った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?