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令和5年度 神奈川県の児童相談所虐待相談受付件数が過去最多に

神奈川県は2024年6月、令和5年度(2023年度)の児童相談所虐待相談受付件数を公表しました。

その件数はなんと・・・過去最多
本記事では発表された数値とその背景について、神奈川県及び横浜市の公開資料を元に解説していきます。


① 令和5年度の相談件数

1.児童相談所6カ所で集計

2023年度に神奈川県が所管する6カ所の児童相談所(※1)で受け付けた虐待の相談件数を集計しました。

2023年4月から2024年3月までの1年間に、神奈川県所管の児童相談所で受けた虐待相談受付件数は7,449件で、前年度比は159件(2.2%)の増加
この件数は過去最多となりました。

参考:神奈川県 令和5年度児童相談所虐待相談受付件数の内訳

2.10年連続で最多「心理的虐待」

最も多いのは大声で怒鳴ったり、子どもの目の前で夫婦喧嘩をするなどの「心理的虐待」。これは10年以上連続で最多の項目となっています。

今回の統計では1年間に4,627件の心理的虐待の通告があり、全体の約6割超
そのほか、ネグレクトなどの「保護の怠慢・拒否」は1,503件、「身体的虐待」は1,253件、「性的虐待」は66件の通告があり、身体的虐待を除き前年度比で増加しています。

参考:神奈川県 令和5年度児童相談所虐待相談受付件数の内訳

3.対象年齢別の通告件数

また対象年齢別件数を見ると、幼児(1歳~7歳未満)が最も多く2,402件で全体の32.2%。次いで多いのは小学生で2,418件で全体の33.2%。幼児とほぼ同じ数値です。

参考:神奈川県 令和5年度児童相談所虐待相談受付件数の内訳

また、乳児(0歳児)と幼児を合わせると42.8%で全体の約半数を占めることも分かりました。

② 増加の背景

次に、児童虐待の通告経路について見て行きます。

1.本人より施設や学校等からの通告増

経路別のデータを見ると、警察からの通告が最も多く2,990件。前年度比で127件減少していますが、全体の4割を占めています。

また、学校等からの通告は916件で前年度比193件(26.7%)増加しました。
反対に、子ども本人からの通告は146件で前年度比23件(18.7%)増となっていますが、全体の約2%となっています。

2.横浜市の見解

また今回の神奈川県の統計に含まれなかった横浜市独自の統計データを見ると、こちらも13,140件と過去最多で前年度比1,660件(約14.5%)増となっています。

参考:令和6年6月19日 横浜市記者発表資料(令和5年度 横浜市における児童虐待の対応状況)

このことについて横浜市こども青少年局は「地域の中で児童虐待防止や体罰禁止等への意識が高まり、市民に身近な関係機関等からの相談や通告の増加につながっていると考えられます」と発表しています。

③ おわりに

1.虐待児は増加の一途

なぜ児童相談所への虐待相談受付数が増加の一途をたどっているのでしょうか。

横浜市の発表にもあった通り、地域の虐待防止意識の高まりから、通告件数が増えていると言う側面も考えられますね。

一方で、通告経路を見ても分かる通り、虐待を受けている本人から声を上げる事例は本当に僅かであるのが現状です。

2.本人よりも周囲の気付きが大切

本人たちの小さなSOSを拾い上げ、しかるべき機関に連絡・相談できる大人が増えることが、今も苦しみの中にいる子どもたちを救い上げる1つの方法なのではないか…と感じます。

そのためにもまずは私たち自身が社会的養護について少しでも理解しておくこと、また他人事として終わらせるのではなく、あと一歩だけ自分の周囲に意識を払って考えるのはどうでしょうか。

夢の宝箱では、社会的養護を知る機会を増やすためのnote更新をこれからも継続的に実施していきますので、今後の支援・アクションの参考にしていただけたら幸いです。


※1…政令指定都市(横浜市・川崎市・相模原市)と児童相談所設置市(横須賀市)を除く


◆取材・編集
中村愛 - Ai Nakamura
青山学院大学経済学部卒業。新卒で医療福祉施設のM&A担当として新規施設の開所に携わる。その後児童福祉施設の支援員、タウンニュース編集記者を経て福祉業界に特化したフリーライターに。NPO法人夢の宝箱の広報担当。
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