マガジンのカバー画像

詩 短編

41
心情を詩に表わしました。 辛い気持ちを抱える方に。 勇気と笑いを持ちたい方に。
運営しているクリエイター

#詩

朝を望まない痩せ犬

朝を望まない痩せ犬

暖かい部屋を眺めながら、
凍える外のコンクリートの上。

部屋の中にはふかふかのクッション。
それぞれに与えられた楽しいおもちゃがいっぱいの部屋。

わがままいっぱいの愛らしい猫たちに
愛情いっぱいの優しい言葉と優しい愛撫。

震える手の先が凍る。
辛くて自分で舐めてみる。

さらに凍えて固まる手。

知らずに流す涙が頬をつたう。
そのまま頬で凍りつく。

一匹の猫が逃げ出した。
飼い主は「捕まえ

もっとみる
星の数だけ愛がふる。

星の数だけ愛がふる。

夜空が見えるこの場所から

あおぎみた空の暗闇

どこかに光を見つけたら

明日だけは生きていける。

私だけの恒星を、

やっと見つけることができたから。きっと

暗闇を切り裂いて

無数の星が降り注ぐ。

あなたの愛を信じたから、

私は愛に包まれる。

冷たく暖かく体を貫くこの光で

流した涙のぬくもりが喜びに変わる。

今までの世界が闇で覆われていても、

降りしきる星で光に変わる。

もっとみる
桃

桃を食べている。

皮を少しずつ指ではいで

はがれにくい所は歯ではいで。

ゆっくり白い果肉、薄いピンクの果肉

かぶりついて、舌で丸めて飲み込んで

したたる汁をじゅるっと音を立てて吸い込んで、

「甘い」と満足そうにつぶやいて、

また柔らかい果肉に歯を立てる。

音を立てて口に含んで堪能しながら、

「お前も食うか?」と一つ差し出した。

食べるより、私が桃になりたいって

思った。

雨が降っている。降るたびに梅が咲いて、降らなくなる頃、桜が咲く。

Stars and Satellites 2

Stars and Satellites 2

Satellites obey their muster planet.

they cannot go somewhere ,and only go around the planet .

but they are shining and lightning up their own planet ,

with reflecting the energy from the sun .

sa

もっとみる
銀の雨

銀の雨

これはむかし、むかしのお話です。

あるところに背徳者がおりました。

たった一つの禁忌を二人で犯してしまいました。

それから彼らはかつての友人や師に追われ始めます。

窓の外は銀の雨

魔物にとっては致命傷

夜があければ狩人たちが、

押し寄せて来る山小屋のなか、

私たちは抱き合って眠っておりました

窓の外は銀の雨

魔物と化した私たちには致命傷

彼は何度も目を覚まし、

夢でなかった

もっとみる
紅蓮

紅蓮

美しく白い鳥が遊ぶのを見ました。

鳥は白い羽を大きく広げ
天女のように舞い踊り、美しい声でさえずります。

皆が喜び、その姿と声を称えて外に出ます。

私の背中に生えるのは

紅蓮であって羽ではない

焔の如く身体に絡みついても、

凍てつく心は焼かれずに

弾け飛んで引き裂かれる

窓辺に別の鳥が来ました。
寒そうに身体を震わせています。
茶色く小さな羽は
空を飛べないようでした。
ご飯粒を少

もっとみる
千夜一夜 とんまでおバカなシェエラザード

千夜一夜 とんまでおバカなシェエラザード

私の名前はシェエラザード

クモの巣にかかって、水路に落ちて

電気の網で引き揚げられました

そのまま王宮で王様の前に

「・・・泥臭いナマズも一興か・・」

その一言で後室暮らし

毎晩お呼びがかかるものの、

何か一芸と歌ってみれば

耳をふさいで王様が、

逆に美しい声で子守唄

いびきをかいて先に眠る

王様は翌日寝ぼけ眼で執務にあたる

今宵は物語を話しましょう

まちがいだらけの寝物

もっとみる
真鍮の鎧

真鍮の鎧

似合わないと

はぎ取られた私の鎧

褥の向こうに置き去りにされ、

私はあなたの視線を纏う。

あなたの指は私の中に、

私の両手を束ねる左手には、

懇願するたび力を込める。

空は臙脂に、群青に、そして漆黒に。

鎧と鋼の刃を探し求めていた両手は、

やがて、あなたを探り始める。

漆黒の夜はまだ長く、

暁の茜まではまだ遠い。