幸重忠孝@ソーシャルワーカー

福祉や学校でしんどさを抱える子どもたちと常に現場で関わり続けているソーシャルワーカーで…

幸重忠孝@ソーシャルワーカー

福祉や学校でしんどさを抱える子どもたちと常に現場で関わり続けているソーシャルワーカーです。noteでは個人として社会発信を行っていこうと考えています。NPO法人こどもソーシャルワークセンター理事長/スクールソーシャルワーカー/龍谷大学非常勤講師

最近の記事

東近江市長の子どもの権利無視トンデモ発言から三ヶ月

滋賀県第29回首長会議での東近江市長のトンデモ発言から三ヶ月。昨日行われた第30回首長会議では、前回の会議後に社会を騒がせた滋賀県の不登校対策について新年度を見据えた提案が県から出されました。このnoteで東近江市長のトンデモ発言を扱ったコラムを二回投稿したあとに、あのトンデモ発言で自分が一番言いたかったことを発信していなかったことを思い出して今回の会議資料の解説とともにここに記しておくことにします。 第1回目のコラムでは、東近江市長の発言を起こしたものを紹介しました。実は

    • ちょっと待ってねボランティア

      正月に起こった能登半島地震からもうすぐ一週間、過去の大震災同様に現地から被害状況や避難所の様子が伝わってくるようになってきました。SNSを中心に気になるつぶやきがあったので、前回のコラムでは「救援物資を被災地に送ること(持って行くこと)」について過去のブログ記事(東日本大震災直後にアップした記事)を転載しました。続編で被災地支援ボランティアの話を過去のブログ記事で書いていたので、そちらも読みたいという声やSNSなど「今すぐボランティアに行きたい」という投稿が目についてきたので

      • ニーズにあわない救援物資について

        正月に起こった能登半島地震から三日が過ぎて過去の大震災同様に現地から被害状況や避難所の様子が伝わってくるようになってきました。そしてやっぱり今回もSNSを中心に「救援物資を○○に送ってください」「現地に送る救援物資を集めます」の動きが起こってきています。でもちょっと落ち着いてSNSで発信して拡散をして欲しいと思い、東日本大震災にブログに掲載した記事を、再度このnoteに転載しておきます。これは28年前の1995年の阪神淡路大震災の時に学生ボランティアとして現地に入った経験から

        • ヤングケアラーの若者の声に奮起する

          昨日のヤングケアラーの若者からの電話 昨日、学校での仕事を終えてこどもソーシャルワークセンターに戻ると、中学時代から利用していた十年近いつきあいになるヤングケアラーの若者が、はじめてセンターに電話をかけてきました。ここ二年は病気の家族や家のケアに追われていたこと、自分がセンターを利用する中で最年長になって気まずさもあったのかセンターの活動に来なくなっていたので、突然の電話に驚いて折り返しの電話をすると、先ほどケアしてた家族が息をひきとって、どうすればいいかわからずに電話をし

        東近江市長の子どもの権利無視トンデモ発言から三ヶ月

          東近江市長の子どもの権利無視のトンデモ発言 その2「ソーシャルアクションはじめました」

          当たり前ですが一夜明けたら、さすがに大騒ぎになっていました。発言許すまじで発言の撤回と謝罪を求める声を抗議文として送ろう、署名を集めようというアクションが滋賀県の不登校の子どもを抱える親やフリースクール関係者から起こっています。その一方で、「困った市長やけど、あのような人はどこでもいるな」「かしこい大人は騒がずスルー」という、どこか他人事のソーシャルワーカーや教育関係者の声、そして未だに滋賀県知事や他の市町のトップの声が聞こえてこないことに、かなりの危機感を感じています。まし

          東近江市長の子どもの権利無視のトンデモ発言 その2「ソーシャルアクションはじめました」

          東近江市長の子どもの権利無視のトンデモ発言 その1「市長の発言を全文起こしてみたら」

          昨夜、驚くべきニュースが飛び込んできました。 朝日新聞(2023年10月17日)  フリースクールは「国家の根幹を崩しかねない」 東近江市長が発言 京都新聞(2023年10月17日)  「不登校になる大半の責任は親に」滋賀・東近江市長が不適切発言「フリースクール認めがくぜん」 「なんで子のわがままを認める」「親が嫌がる子を押し付けてでも」滋賀県東近江市長の不登校発言詳報 こどもソーシャルワークセンターには毎日のように不登校のこどもたちがやってきます。また公立学校にほとんど

          東近江市長の子どもの権利無視のトンデモ発言 その1「市長の発言を全文起こしてみたら」

          子どもの貧困率が改善した実感がない

          この十年で劇的に改善した子どもの貧困率 三年ごとに国(厚生労働省)から発表されてきた子どもの貧困率が、発表されました。以下、その件について報道している朝日新聞の記事を転載します。 所得水準などに照らして貧困の状態にある18歳未満の割合を示す子どもの相対的貧困率は、2021年に11・5%となり、3年前(14・0%)に比べて2・5ポイント改善した。ただ、ひとり親世帯でみると44・5%にのぼり、半数近くが困窮にあえぐ状況が続く。厚生労働省が4日公表した国民生活基礎調査でわかった

          子どもの貧困率が改善した実感がない

          サヤの18歳の誕生日

          五月が誕生日の私は今日でついに十八歳になった。 ゴールデンウィークのど真ん中が誕生日なので学校はいつも休み。だから誕生日を友だちに祝ってもらったことは一度もない。そして家で誕生日のお祝いをした記憶もない。うちは今、母子家庭で、離婚して離れて暮らす父はギャンブル依存っていうのかな、特にボートレースにはまっていたので、ゴールデンウィークは毎年びわこボートに行っていた。私の誕生日はなぜかいつも大負けして、小学生の誕生日の思い出は不機嫌な父の顔しか思い出せない。中学生になって母は離

          カヨのトワイライトデビュー

          カヨは四月から小学生。小学生になったら「トワイライト」に行くことが出来るってお兄ちゃんに教えてもらっていたからずっと楽しみにしていたよ。中学校に行ってないお兄ちゃんが「トワイライト」に行くようになって、おうちでトワイライトの話ばかりしていたから、カヨもずっとうらやましかったけど、小学生にならないと行けないって聞いてずっとがまんしていたよ。トワイライトから帰ってくるお兄ちゃんが、よくお菓子やバナナを持って帰るのがうらやましかったわけじゃないからね。 今日、小学校からおうちに帰

          カヨのトワイライトデビュー

          ヒデのネットアウトリーチ

          「リスカしてること先生に話したら、親にバレてもう最悪!」 深夜23時、スマホの画面に小学生六年の子のSNSでのつぶやきが目に入る。今日はセンターで深夜のアルバイトの日だ。中学時代からこのセンターの夜の居場所に通いはじめて気がつけばもう五年がすぎた。うちは母子家庭で自分と母の二人暮らし。母親が病気がちで家に一人にしておけず学校もよく休んでいた。そういうのは今、ヤングケアラーって言うらしいけど。結局、高校を中退してから行くところもなく、センターにずっとお世話になっている。あ、先月

          ヒデのネットアウトリーチ

          ヒデノート

          「正直、毎日センターへ来たいって思っています」 チラシを封筒に入れている自分の横で、高校生のサヤが新聞記者からインタビューを受けている。サヤはファーストフードでバイトもしているって言っていたし、この前も小学生の子どもたちを連れて行くお泊まりイベントでもボランティアで活躍してたって話していた。自分も十代の時にはセンターのことについて、センターに来たお客さんからインタビュー受けるのを手伝っていて、そういえば同じようなことを答えていたな。 こどもソーシャルワークセンターは毎年、二

          カヨはお宿に泊まったよ

          カヨは今、五歳。ひまわり組で保育園のブランコで遊ぶのが大好き。お正月は保育園がないからおもしろくない。お父さんとお母さんは「お正月はお祝いでお酒を飲む」って言って、朝からずっとお酒飲んでたけど、お正月でなくてもいつもお酒のんでるのに変なの。お兄ちゃんは中学生。怒ったらすっごくこわい。でも「とあいらいと」ってとこに行く日はやさしいので、毎日「とあいらいと」に行ったらいいのになぁって思っている。お兄ちゃんのお父さんは死んだから、カヨのお父さんとお兄ちゃんは仲が悪くて、よくケンカし

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          高校内居場所カフェに足を運んだサヤ

          今、通っている高校には週に一回、「ほっとるーむ」という居場所カフェが、学校内にオープンしている。夏までは別の高校に通っていたけど、入学してすぐに仲良くなった友だちが、去年の夏休み明けに学校を中退しちゃって、なんかそこから学校で自分の居場所がなくなってしまった。休み時間も移動教室も弁当もいつも一人。別に無視や仲間はずれにされていたわけではないんだけどね。気がついたら自分も学校を休みがちになって、結局いくつかの授業を落として留年することに。でも新入生と一緒にもう一度やり直すのは精

          高校内居場所カフェに足を運んだサヤ

          スマホが使えなくなるミカ

          【ミカのつぶやき】 また妹のマホが私のスマホを勝手に使ったので、思わずひっぱたいたら涙目になって外へ出て行った。妹のマホは中学に入ってから私のスマホを黙って勝手に使う。あいつにはこのスマホを使う権利はない。 このスマホは、年に数回会うお父さんに去年買ってもらったものだ。スマホが欲しいと言ったら、「マホが、ちゃんと大人になっているか確認したら買ってやる」と言われて、車の中で胸を触られ買ってもらったスマホだ。もちろんマホも他の五人の妹や弟もそしてお母さんも、なんでお父さんが私に

          スマホが使えなくなるミカ

          家に逃げ場のないマホ

          「ちょっと散歩してくる」 今日もミカねぇとケンカになった。あいつホンマむかつく。うちの家は、部屋が二つしかないのにきょうだい六人とお母さんの七人で暮らしているから、ケンカになったら最悪だ。なるだけあいつの顔を見たくないから、私は完全不登校のミカねぇと違って、学校には行くようにしている。と言っても私も教室に入れないからオアシスルームにいるけどね。あと毎日学校に行くのには、給食があるからというのは秘密だよ。 三十分ほど歩くと目の前に琵琶湖。イライラすると私は、琵琶湖のほとりで

          学校へ行けなくなったナオ

          「なんで友だちのことを殴ったの! 暴力は犯罪なのよ。わかってるの?」  お母さんが朝から怒鳴っている。この後、大量にお酒を飲んで泣きながら寝るんだろう。なんであいつを殴ったのか? 自分でも何でそんなことをしたのかよくわからない。何であの時、聞き流さなかったのだろう。酒飲みのお母さんのことは大嫌いのはずなのに。  三日前に暴力事件を起こしたあの日の朝も、いつもと同じ家の風景。「いってきます」と声をかけてもお母さんの返事はなく、代わりに空き缶が床に落ちる音。  昼休み。朝か

          学校へ行けなくなったナオ