雪屋双喜

書くひと。 好きによんで下さい。

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記事一覧

詩 河

綾羅錦繍を抱えていた ただ一つとして名も知らぬ異国へらいら 委曲をつくせど動かぬ指を 雪に触れさせ紋を切る 最良の瞬間に着飾る不幸 最良の瞬間を着飾る不幸 くすんだ…

雪屋双喜
7日前
2

詩 波

無作為な個を一つ一つ赦していったその先に 私さえもいない透明な感情があって 無音や無風や無色と同じ、何処か寂しく整っている 水銀よりも深くを歩く目的意識の欠片を落…

雪屋双喜
12日前
3

「詩」について 

 「感想」より「詩」について  「詩」に共感しろ、と言うのは土台無理な話であるように思います。詩は手を動かして成るもので、脳で考えて書くものではないですから。詩…

雪屋双喜
2週間前
3

夜風

 十九になった。寂しさの混じったお祝いに家から少し離れたコンビニで買うチューハイで乾杯する。罪悪観のゆらぎと同時に流し込んだ酔いが、腹の奥で、死に向かうだけの身…

雪屋双喜
3週間前
2

サピエンス

 口に出して言うほどでもないが、人よりも楽に生きる自信がないものだから、東京を出た。  昨夜の新幹線代はやはり高く付くのだから、どうせなら鈍行でのんびり行こうと…

雪屋双喜
1か月前
4

駄々

 幼いころ、有名な映画と素晴らしい映画が当たり前にイコールだと信じていた。映画に限らずアニメや小説、物語、詩や人物。無抵抗に受け入れていた順序が、ひっくり返った…

雪屋双喜
1か月前
7

詩的計画の序

裸の切なさを共有するシステムとしての 液晶の価値を金額で比べる普遍人の情動 一匹で群れ始める毛のない獣 指の先には故意が宿る 意識の果てに実る一滴に心を奪われて …

雪屋双喜
1か月前
4

現像

 一人でいるとき、誰かを思い出すのは  熱と色と夏が来る期待感と切なさを  不意に思い出してしまうのは  その大切な友人が  不思議と心を許せる五月の風の  あの不…

雪屋双喜
2か月前
6

天使の翼をレンタルできて 名も知らぬ鳥と似た羽を背負う時代 動かし方を忘れた後で 理論だけで塗り固められた かつての神話上の白い翼は 勇気と自信と教育とで 明日には…

雪屋双喜
2か月前
3

続 これからの話

こんばんは。雪屋双喜です。 三月に「これからの話」として受験期の振り返りと今後の活動方針に触れたわけですが、申し訳ない。 めちゃくちゃ忙しいです。大学生舐めてた…

雪屋双喜
3か月前
5

現代詩でハグして死んで

自分の恋を綺麗だと信じている10代のグロテスクな輝きが手元に無くなる虚しさが憎くて恋は全部が全部酷い俗物だと突き放してそのまま苦しくなる過去の自分を抱きしめてから…

雪屋双喜
3か月前
8

詩 互換性

今まで が違う私に わかる と言ってくれる優しい人に 来ないで と言えずに甘えた私に こんなことを願ってみる 演じるなら きっと何も 生きていないような 心が柔らかいう…

雪屋双喜
3か月前
7

青春

青の色は変わっていった 水性絵の具を絞り出して 小さなキャンパスに 傷をつけながら塗りたくった 幾度も幾度も重ねるうちに 見えなくなりそうな白を探して 青の中に溺れて…

雪屋双喜
3か月前
4

【現代詩】十分な自由

配慮と邪な優しさは裏を返しても十分な人間らしさを持ち合わせている。想えば色が変わるなら心はきっと恋をした。指先の震えが文字になるなら絵描きはきっと心をどこかに奪…

雪屋双喜
3か月前
6

恋を愛して乙女よ歩め

あたしもあなたもあの人も いつかに向かって歩いてく 夜を猶予う春風に 私は心を預けては またかまたかと繰り返す そうかそうかと繰り返す 恋を愛して乙女よ歩め 触れた…

雪屋双喜
3か月前
1

甍を越えた蝶 果てを探る冬蜂 燭台を倒した春風 気紛れに夜を泳ぐ 純粋よりも強かな殺意に 空いた自分を汚す 飛んで飛んで 飛んで飛んで 落ちるようにしながら 空飛ぶ…

雪屋双喜
3か月前
5
詩 河

詩 河

綾羅錦繍を抱えていた
ただ一つとして名も知らぬ異国へらいら
委曲をつくせど動かぬ指を
雪に触れさせ紋を切る

最良の瞬間に着飾る不幸
最良の瞬間を着飾る不幸

くすんだ青を引っ搔いた生傷を
今も春と呼ぶ世界と犯し合う一孤独の海で
日焼けの後の皮膚の苛立ちへくいら
死力をつくせど変わらぬ花よ

雪に向かいて紋を切る

最良の瞬間に着飾らぬ不幸
最良の瞬間を着飾らぬ不幸

過去を悩みて尽くせど消えぬ

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詩 波

詩 波

無作為な個を一つ一つ赦していったその先に
私さえもいない透明な感情があって

無音や無風や無色と同じ、何処か寂しく整っている
水銀よりも深くを歩く目的意識の欠片を落とした
日々の中にまだ今日がいて夕暮れ色に滲み出る

昨日の私は息を吸う。昨日の私は息を吐く。私は息を吸う。私は息を吐く。息を吸う。息を吐く。息を。息を。

生きているというただそれだけが
引き算しようのない確かな愛が
眩しくて、眩しく

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「詩」について 

「詩」について 

 「感想」より「詩」について

 「詩」に共感しろ、と言うのは土台無理な話であるように思います。詩は手を動かして成るもので、脳で考えて書くものではないですから。詩は小説とは違い、脳が手に直接に働きかけ、手が脳に直接の感覚を共有するものです。だから、詩は特別な人のみが描くものではありませんし、小説を書く時ほど思想を強く意識せずとも詩は簡単に描けます。詩が詩であるというのは単に、詩が描かれたものである

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夜風

夜風

 十九になった。寂しさの混じったお祝いに家から少し離れたコンビニで買うチューハイで乾杯する。罪悪観のゆらぎと同時に流し込んだ酔いが、腹の奥で、死に向かうだけの身体をぐつぐつとせせら笑う。
 映画で見た将来はもう少しヒロイックで、ニヒルな無衝動を持っていたし、漫画で読んだ未来には俺みたいな奴が変わろうと藻掻いていたりした。缶の底に残った液体を掌に少し出して眺める。水よりも鈍い光の表面を東京が揺蕩う。

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サピエンス

サピエンス

 口に出して言うほどでもないが、人よりも楽に生きる自信がないものだから、東京を出た。
 昨夜の新幹線代はやはり高く付くのだから、どうせなら鈍行でのんびり行こうと思ったが、既に夜も更け、東京を逃げ出し落ちのびるには、在来線の速度では不十分であったのだ。宇宙へ出ようとするのなら、俺は何枚チケットを持てば良いのだろう。
 逃げ出したい衝動は突然湧いたものでもない。一昨日の朝の山手の中で思い出したのだ。幼

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駄々

駄々

 幼いころ、有名な映画と素晴らしい映画が当たり前にイコールだと信じていた。映画に限らずアニメや小説、物語、詩や人物。無抵抗に受け入れていた順序が、ひっくり返ったのは、或いは綴じていた紐に鋏を入れたのは、いつであっただろうか。多分私には好きなキャラクターがいたし、好きな音楽もあった。けれど有名無名にかかわらず、それを主張するような共感を求める感情はなかったし、それがなければ生きていけないと、死んでし

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詩的計画の序

詩的計画の序

裸の切なさを共有するシステムとしての
液晶の価値を金額で比べる普遍人の情動

一匹で群れ始める毛のない獣
指の先には故意が宿る

意識の果てに実る一滴に心を奪われて
水面に映る可能性の世界に転落する

見て聞いて食べた世界を
崩していく一瞬を眺める横顔が
美しさ以外で語れるはずが無かった

さあここに
恐れることなく
手を伸ばす

暗闇で触れる何かを
知らずとも

知らなくとも

詩的計画の序

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現像

現像

 一人でいるとき、誰かを思い出すのは
 熱と色と夏が来る期待感と切なさを
 不意に思い出してしまうのは

 その大切な友人が
 不思議と心を許せる五月の風の
 あの不器用さを以て遠くへ行ってしまったあと

 残された私はこと果てた春の短命に
 同情の傲慢さを向けないように
 必死にあったことだけを思い出す

 感情は作り出されてしまうから
 頬の色は塗り重ねられてしまうから
 君の言葉は記号となっ

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詩

天使の翼をレンタルできて
名も知らぬ鳥と似た羽を背負う時代

動かし方を忘れた後で
理論だけで塗り固められた

かつての神話上の白い翼は
勇気と自信と教育とで
明日には影を点々と孕んでいる

なぜそこにあるのかも
なぜ動かないのかも
なぜそれを忘れたのかも

問われることなく
時代は流れ

歴史を知らぬ反権威主義だけが
過去の絵を捨てた新たな羽に
青を重ねていく

いつしか空に近づいて
見えなくな

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続 これからの話

こんばんは。雪屋双喜です。

三月に「これからの話」として受験期の振り返りと今後の活動方針に触れたわけですが、申し訳ない。

めちゃくちゃ忙しいです。大学生舐めてた。

特に私が学ぶ大学は、私の本来の学力からすると少し背伸びをした位置にあるので(少しですよ?)、これからナンヤカンヤでテンヤワンヤになり忙しくなることが容易に想像されます。そこで自分への精神的な安定剤と、皆様への真摯な説明として、以下

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現代詩でハグして死んで

現代詩でハグして死んで

自分の恋を綺麗だと信じている10代のグロテスクな輝きが手元に無くなる虚しさが憎くて恋は全部が全部酷い俗物だと突き放してそのまま苦しくなる過去の自分を抱きしめてから死にたくなるのは詩を描く間だけは息を止めて世界に見つからないようにと願っている姿が鏡に映るときに内側にさえ取り繕っている本音が心に気を使っている聞こえないことにすら気が付かないどこかに向いた自意識の裏側を眺める何かが不意に恥じらいをもって

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詩 互換性

詩 互換性

今まで
が違う私に
わかる
と言ってくれる優しい人に
来ないで
と言えずに甘えた私に
こんなことを願ってみる

演じるなら
きっと何も
生きていないような

心が柔らかいうちに
遠くまで見えるところで
守りをするパイプの煙を
眺めた美しい夕暮れの中に

どこから
どこへ

なぜ
理由なんて

知る前に知った記憶が子供の頃にはいくつあっただろう
見栄を甘えが許すとき私は死にたくなんてない

わかるな

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青春

青春

青の色は変わっていった
水性絵の具を絞り出して
小さなキャンパスに
傷をつけながら塗りたくった
幾度も幾度も重ねるうちに
見えなくなりそうな白を探して
青の中に溺れていった
遠くから寄せ来る晩夏の波を
座ることもせずただ見ていた
熱から醒めた気温の中で
握りしめた拳の中で
触れた途端に眩しく揺らぐ
血潮を透かした空の色を
飛んで飛んで飛んで
広げられたキャンパスの縁が
他人の青と混じり合いながら

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【現代詩】十分な自由

【現代詩】十分な自由

配慮と邪な優しさは裏を返しても十分な人間らしさを持ち合わせている。想えば色が変わるなら心はきっと恋をした。指先の震えが文字になるなら絵描きはきっと心をどこかに奪われて不自由に帆を立て波を切り遠くの蛍を頼りに泳ぐ。溺れるほどに光は滲み幻想の主体が表現を曇らせる。第二の自分を仮定した不確実な世界に分け入る身代わりをここに与えるそれが創造と破壊の同時性を僅かに歪める。

安寧で満ちる欲を持ち
空腹を恐れ

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恋を愛して乙女よ歩め

恋を愛して乙女よ歩め

あたしもあなたもあの人も
いつかに向かって歩いてく

夜を猶予う春風に
私は心を預けては

またかまたかと繰り返す
そうかそうかと繰り返す

恋を愛して乙女よ歩め
触れた花弁の落ちる世に

わが身一つの恋をして
この世の末まで愛をせよ

空気までもが今宵を謳う
あなたのそばへと風を待つ

恋を愛して乙女よ生きよ
まだ見ぬ蕾を傘として

散りゆく花に恋をして

恋を愛して乙女よ歩め
雪屋双喜 202

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鳥

甍を越えた蝶
果てを探る冬蜂

燭台を倒した春風
気紛れに夜を泳ぐ

純粋よりも強かな殺意に
空いた自分を汚す

飛んで飛んで
飛んで飛んで

落ちるようにしながら
空飛ぶ凡てを下に見る

甍を越えた蝶
ひらひらと

猶予う

鳥 2024.3.13
雪屋双喜

夜鷹。