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詩 河

綾羅錦繍を抱えていた
ただ一つとして名も知らぬ異国へらいら
委曲をつくせど動かぬ指を
雪に触れさせ紋を切る

最良の瞬間に着飾る不幸
最良の瞬間を着飾る不幸

くすんだ青を引っ搔いた生傷を
今も春と呼ぶ世界と犯し合う一孤独の海で
日焼けの後の皮膚の苛立ちへくいら
死力をつくせど変わらぬ花よ

雪に向かいて紋を切る

最良の瞬間に着飾らぬ不幸
最良の瞬間を着飾らぬ不幸

過去を悩みて尽くせど消えぬ
痛みにも似た静かな安堵
空似と願いと届けとよ。



河 雪屋双喜
2024.7.3


 


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