雪屋双喜

書くひと。 好きによんで下さい。

雪屋双喜

書くひと。 好きによんで下さい。

最近の記事

  • 固定された記事

続 これからの話

こんばんは。雪屋双喜です。 三月に「これからの話」として受験期の振り返りと今後の活動方針に触れたわけですが、申し訳ない。 めちゃくちゃ忙しいです。大学生舐めてた。 特に私が学ぶ大学は、私の本来の学力からすると少し背伸びをした位置にあるので(少しですよ?)、これからナンヤカンヤでテンヤワンヤになり忙しくなることが容易に想像されます。そこで自分への精神的な安定剤と、皆様への真摯な説明として、以下の方針を新たに提示させていただきます。 活動方針 2024.4.7 1, 

    • 天使の翼をレンタルできて 名も知らぬ鳥と似た羽を背負う時代 動かし方を忘れた後で 理論だけで塗り固められた かつての神話上の白い翼は 勇気と自信と教育とで 明日には影を点々と孕んでいる なぜそこにあるのかも なぜ動かないのかも なぜそれを忘れたのかも 問われることなく 時代は流れ 歴史を知らぬ反権威主義だけが 過去の絵を捨てた新たな羽に 青を重ねていく いつしか空に近づいて 見えなくなったその頃に 天使の翼も古くなる 詩 雪屋双喜 2024.4.13 現代詩を

      • 現代詩でハグして死んで

        自分の恋を綺麗だと信じている10代のグロテスクな輝きが手元に無くなる虚しさが憎くて恋は全部が全部酷い俗物だと突き放してそのまま苦しくなる過去の自分を抱きしめてから死にたくなるのは詩を描く間だけは息を止めて世界に見つからないようにと願っている姿が鏡に映るときに内側にさえ取り繕っている本音が心に気を使っている聞こえないことにすら気が付かないどこかに向いた自意識の裏側を眺める何かが不意に恥じらいをもって母を見失った幼児のように泣き出したから今日は眠ってしまうその前までに独りハグして

        • 詩 互換性

          今まで が違う私に わかる と言ってくれる優しい人に 来ないで と言えずに甘えた私に こんなことを願ってみる 演じるなら きっと何も 生きていないような 心が柔らかいうちに 遠くまで見えるところで 守りをするパイプの煙を 眺めた美しい夕暮れの中に どこから どこへ なぜ 理由なんて 知る前に知った記憶が子供の頃にはいくつあっただろう 見栄を甘えが許すとき私は死にたくなんてない わかるなんて 言わないで わからないなんて 言わないで ありのままでは痛いのに 心が

        • 固定された記事

        続 これからの話

        マガジン

        • 140本
        • 他愛もない
          10本

        記事

          青春

          青の色は変わっていった 水性絵の具を絞り出して 小さなキャンパスに 傷をつけながら塗りたくった 幾度も幾度も重ねるうちに 見えなくなりそうな白を探して 青の中に溺れていった 遠くから寄せ来る晩夏の波を 座ることもせずただ見ていた 熱から醒めた気温の中で 握りしめた拳の中で 触れた途端に眩しく揺らぐ 血潮を透かした空の色を 飛んで飛んで飛んで 広げられたキャンパスの縁が 他人の青と混じり合いながら 不快な怪物の毛の振動を 苛立ちの声として 吠えた相手の優しい 寂しいあの顔の感情

          【現代詩】十分な自由

          配慮と邪な優しさは裏を返しても十分な人間らしさを持ち合わせている。想えば色が変わるなら心はきっと恋をした。指先の震えが文字になるなら絵描きはきっと心をどこかに奪われて不自由に帆を立て波を切り遠くの蛍を頼りに泳ぐ。溺れるほどに光は滲み幻想の主体が表現を曇らせる。第二の自分を仮定した不確実な世界に分け入る身代わりをここに与えるそれが創造と破壊の同時性を僅かに歪める。 安寧で満ちる欲を持ち 空腹を恐れた我我が 詩をかたる 求めた先は、知らぬ何かの腹の中 飲まれて漸く自分を見知

          【現代詩】十分な自由

          恋を愛して乙女よ歩め

          あたしもあなたもあの人も いつかに向かって歩いてく 夜を猶予う春風に 私は心を預けては またかまたかと繰り返す そうかそうかと繰り返す 恋を愛して乙女よ歩め 触れた花弁の落ちる世に わが身一つの恋をして この世の末まで愛をせよ 空気までもが今宵を謳う あなたのそばへと風を待つ 恋を愛して乙女よ生きよ まだ見ぬ蕾を傘として 散りゆく花に恋をして 恋を愛して乙女よ歩め 雪屋双喜 2024.3.16

          恋を愛して乙女よ歩め

          甍を越えた蝶 果てを探る冬蜂 燭台を倒した春風 気紛れに夜を泳ぐ 純粋よりも強かな殺意に 空いた自分を汚す 飛んで飛んで 飛んで飛んで 落ちるようにしながら 空飛ぶ凡てを下に見る 甍を越えた蝶 ひらひらと 猶予う 鳥 2024.3.13 雪屋双喜 夜鷹。

          3月11日の話

           私は18です。当時は5でした。私はあの土地を訪れたことも、あの海を見たこともありません。あの時を振り返ることは、私にはできない。憶えていないだとか、思い出したくないだとか、そんなことではなくて。13年が経った今も、私はあの日を捉えきれていない。あの日、私は体調がすぐれなくて家にいた。あの時、私はテレビを見ていた。揺れた。水槽が可笑しなくらいに波打って、風呂で遊ぶのと同じように思いながら、私はそれをテーブルの下で眺めた。必死に家具を抑える親。訳も分からずに状況を伝え続けるテレ

          3月11日の話

          脱人間

          「動物と違って」 「人間にしか」 白も黒になる「丸」の描き方 その内側に引きこもった現代人 人間なんか やめたいな 進歩も進化もできないままで 反省も後悔も遺跡になって あったことすら否定される 歴史はあなたの為に存在しない 人間のなかに 私の好きな不完全さが 後ろめたい 庇護の対象としてしか 存在できず 人間のなかに あなたの得意な空虚が 自明な 目指すべきものとして 誠実さよりも大事にされるなら どうか私をはじき出して 馬鹿みたいに民族で区別して

          現今

          ずっと誰かの記憶を見た。 白鷺が首を縮めて飛び往く姿。 電線の先の油彩のような月夜。 紫陽花の葉の蝸牛の触覚。 友情と不確かな恋慕。 車窓に並ぶ知らない街。 海の向こうの波と空との白飛び。 雲の影のかくれんぼ。 校舎の階段は今よりも高くて。 自販機はもっと一つの味だった。 ふざけた帰り道は三年前に拡張された。 百日紅は電信柱になった。 雀は角の婆ちゃんを追っかけていった。 夏にしか現れない幽霊。 桜の色。 音のしない夜。 真昼の空。 時間。 ほどけた靴紐。 冬風。 蝉の振動。

          これからの話

           どうも、雪屋双喜です。  お休みする、と宣言しておいて「なんだ毎週のようにいるじゃないか」と思われた方もいたかもしれません。(申し訳はあるのですが)ごめんなさい。  受験期というのは、贅沢なものです。合格の為ただペンを走らせる時間は生産的ではありませんし、芸術的でもないでしょう。実際つまらなかったです。けれど、いやだからこそ、あれは贅沢です。幸福とは全く異なる贅沢です。自分のことだけを考える。自分のことだけを伝えようと書き続ける。住む場所だとか、食べる物だとか、消費する

          これからの話

          残雪

           残雪  搔き集めて大事にしようと交わしても  熱に浮かされ忘れていくんでしょう  ずっとなんて無いから願ってしまうのに  雪屋双喜 2024.2.15

          沈黙

          揺らぎの隙間の同時性を持った緊張 乱視の混じった視線の先には たった今気が付いた他人が見える 零下に抗う指の伸びた先が 声よりも早く 視線には追い抜かれ でも確かに その靄のような形を 廃墟の実存と為して 世界から切り取るのは 言葉のそれのように 暖かで緩やかな不完全性と 冷酷で国境に線をわざと引く諧謔性と 遠くの蛍に似た思考の停止が有りました 答えのない沈黙の後で 口を開くことに言い得ぬ恍惚を感じ 戒めのような愛を科していく ああ やっと 沈黙の中に 自分が

          十五月の指先にあなたがいますように 小声の唇に揺れる吐息が頬を撫で 瞬きの一つが時間をつくり 少しだけ冬を思い出す それぞれの春が巡ってきて 雨の止むように 煙の昇っていくように あなたは自分を知っていく 触れることのない思いが増えて 心を梳かしゆく風の後ろを 寂しいのだろうか あなたの瞳を春が照らした さあ、遠くへ行く君へ。 別れを惜しむよりも些細な約束を 十五月の指先に灯を燈し 晴れた道を一人ゆけ どうか空よ凪げ 雪屋双喜 2024.1.30 数えきれぬ旅立ち

          ファティマ

          あなたは言った。私の頬を左の手で触りながら。 砂漠の光が舞う。あなたは言った。私の頬を左の手で触りながら。 隣人は踊る。あなたは言った。私の頬を左の手で触りながら。 蜃気楼が晴れる。あなたは言った。私の頬を左の手で触りながら。 子らが怯える。あなたは言った。私の頬を左の手で触りながら。 優しくささやく。あなたは言った。私の頬を左の手で触りながら。 いいえ。でもその前に。 手を差し出したあなたは言った。 目を閉じ私は右の頬を差し出す。 ファティマ 2022.12.2

          ファティマ