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【映画評】『INTERVIEW WITH THE VAMPIRE』アン・ライスの耽美的世界

先頃、物故されたアメリカの女流作家のアン・ライス

彼女の残した”ヴァンパイア・クロニクル”の初期の作品がー『INTERVIEW WITH THE VAMPIRE』(夜明けのヴァンパイア)

昨今の、ヴァンパイア映画といえばゾンビのように大量発生し、大げさな牙を剥き出しにして、主人公になまず斬りにされ燃え、灰になるそれとは異なり

アン・ライスの生み出したいわば”正統派ヴァンパイア”は、その物語と同様に耽美的で美しく、そしてみな悩んでいる・・・

永遠の時の中で・・・

17世紀の終わり

ニューオリンズの広大な土地を所有する農場主のルイは、自暴自棄の最果てにいた

愛する妻をお産で亡くし、その悲しみが癒えることなく、毎晩酒を飲み、娼婦を侍らせて、賭博場で相手にわかるイカサマを仕掛け、見破られ、相手に”殺せ”と迫るも、それでも死は訪れない

痛切に死を望むが、しかし自分で死ぬ勇気が持てない

そんなある夜―

ヴァンパイアのレスタトが現れ、彼の喉に噛みつきー

2人を中心としたヴァンパイアの200年に渡る壮大なクロニクルが幕を開ける

アン・ライスは、この作品の映画化が決まり、そのキャスティングが発表されると、激怒した

ー”わたしが生み出し、愛しているレスタトがトム・クルーズですって?

冗談じゃないわ”

トム・クルーズの演技評はともかくとして、確かにこの映画のキャスティングは、1994年当時としてもかなり派手な布陣であるのは間違いない

トム・クルーズにブラッド・ピット

アントニオ・バンデラスに、幼いころのキルティン・ダンスト

アンの耽美的な暗闇の世界に、若かりし頃の華やかなスターたち・・・

しかし、映画完成後にラッシュを試写したアンは、最終的に全米の新聞に自費を使って全面広告を出して、トム・クルーズに「謝罪」をする事態を巻き起こす

彼女は絶賛したのだ

トム・クルーズ=レスタトの、それこそ魔術と退廃を合わせ持つヴァンパイアに

もちろんその行為の裏には、ひょっとしたらアメリカ映画界の戦略的な意図があったのかも知れない

そして、この『INTER VIEW WITH THE VAMPIRE』

おそらくは最終的な勝利を決めたのは監督を務めたニール・ジョーダンの力量なのだろうが、冒頭からラストまで決して飽きることなくこのヴァンパイアたちの苦悩の歴史を観させてくれる

衣装はもちろん、照明、当時を忠実に再現したと思われる豪華なセットもアンの世界観を完璧に現しているに違いない・・・

今では世界的な大スター達の、古い時代の美しき競演

元来のスターたちが、この映画をきっかけに大スターの階段を駆け上がっていったのかも知れない

ー『INTERVIEW WITH THE VAMPIRE』

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