【note創作大賞2024応募作品】Monument(第15話)
第五章(1/3)馨
用心に、と持参したロープは使わずに済んだ。
護岸には足場があって、水路への入り口までは、容易に降りて来られたからだ。
入り口は、想像以上に大きい。
大人が立って歩いても、まだまだ十分、余裕がある。
見えない水路の底へ向かって、そろりそろりと、踵を延ばした。
かちり、と固いコンクリートの感触が、滑り止めの鋲に伝わる。
水深は、さほどでもなさそうだ。
意を固めて、水路へ入る。
僕の後ろに、麦が続いた。
水路の壁面に手をついて、長靴