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記憶の街へ

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50歳過ぎると、記憶の街から、出会った人たちが遊びに来ます。 彼らとの思い出話を書き留めてみました。
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#中学生

【記憶の街へ#5】母親の愛と祈り

【記憶の街へ#5】母親の愛と祈り

彼はゴーグルと呼ばれていた。
なぜそう呼ばれていたのかは覚えていない。
ボクの通っていた中学校には知的障害児の複式学級があり、ゴーグルはその教室の生徒だった。
人懐っこく、休み時間の廊下でボクたちの顔を見ると、手を振りながら駆け寄ってきた。
その度に「ゴーグルが来たぞ〜」などと言って笑いながら逃げてからかったりしていた。

ボクたちのクラスは、遠足などのイベントがあると、複式学級の生徒が一緒に行動

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【記憶の街へ#4】恋か憧れか

【記憶の街へ#4】恋か憧れか

お盆で帰省し、父が眠る墓を掃除していた。
ボクは上から下まで墓石を磨き、妻はすっかり枯れた花と汚れた水を捨て、新しい花を生ける。
高校生の娘は、ゆっくりと歩く母の手を引いてこちらに向かってきている。
我が家の墓は墓地の外れにあり、ボクの背丈より高いブロック塀の向こうには民家が並んでいる。
その民家から女性の声が聞こえた。
「ホラ!何やってんの?早く準備しなさい!」
そのちょっと揺れるような高く特徴

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【記憶の街へ #1】Kの後ろ姿

【記憶の街へ #1】Kの後ろ姿

ボクが中学生の頃は、まだ女子のセーラー服のスカートは長かった。
Kは二歳上の三年生。ボクは一年生だった。
Kはくるぶしが被るくらいの長さのスカートをはいていた。
いつもそのスカートのポケットに手を突っ込み、ぺったんこの学生鞄を抱えていた。
お世辞にも美人とは言えず、体型もずんぐりしていたように思う。

彼女とはどこで知り合ったのかは全く覚えていない。
しかしなぜか、歳も性別も違うボクたちは、学校か

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