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【福岡】金欠高校生が行く、アイソレーション船旅〈1/4〉

旅行において、交通費というものは、旅行のメインディッシュじゃないくせにかなりの予算をかっぱらっていく。
しかも、旅行先が遠くなればなるほどその影響は顕著に現れる。
僕はお金持ちのお嬢様などではなく一般家庭の男子高校生だから、交通費にそんなにお金はかけられない。

けれども、だからといって「JALに乗れないなら、LCCに乗ればいいやん」などと考えるのは、いささか早計であると言わざるを得ない。
LCCを使う理由はただ一つで、それは料金が安いからだ。質が良いからではない。金銭的に余裕があるならば、JALに乗ったほうがいいに決まっている。
妥協してLCCに乗ると、その安さと引き換えに、せっかくの旅行なのに心底満足したことにはならないのだ。

わがままを言うと、せっかくの旅行なのだから僕はできる限りすべてに満足のいくようにしたい。
ではお金のない僕はどうすればいいのかというと、手段を目的にすり替えるのである。移動するために乗り物に乗るのではなく、その乗り物に乗りたいがために乗り物に乗る
こうすれば、たとえ快適さでは上位種に負けていたとしても、満足度では上位種をも上回ることができると思う。

例えば、ライトフライヤー号(世界初の飛行機)とボーイング737(現代の一般的な飛行機)のどちらかにのみ乗れるとしたら、僕はライトフライヤー号を選ぶ。
快適さでは無論ボーイングのほうが圧倒的に勝っているだろうが、ライトフライヤー号に乗るという行為はそれ自体が魅力的であり、単なる移動手段に留まらず目的となり得るのだ。

ただ、当然ながら実際にライトフライヤー号に乗ることはできない(乗れたとしても、極端な例なので移動手段としては使いものにならない)。
値段が安くかつそれに乗ることが目的となるような特別な体験ができる、そんな夢のような移動手段はあるのだろうか。
もちろんあるとも。だ。

中でも、夜行フェリーはこの条件にぴったりだ。
安価なのに遠くまで行くことができ、さらには宿泊も兼ねている。
また、海には言葉では言い表せないロマンがあり、船――特に夜行フェリーなんてそうそう乗る機会のあるものではないから、特別な体験となるに違いない。
見事にさっきの条件を満たしている。
夜行フェリーは、「明日の海へ、日本のヒレ」なのだ。




ということで、冒頭から妄言をふにゃふにゃとほざいて申し訳ないが、今回は夜行フェリーを使って福岡へ旅行をしてきた
noteでこのレポートを書くことによって、ほんの少しでも観光業の振興に繋がれば嬉しい。



準備

僕は旅行をしようと決めたら、まずは「福岡観光のおすすめ○選!」みたいなWebサイトを片っ端から見て、行きたい場所を片っ端からGoogleMapに登録していく。
そこから大体の行程を決め、完成版として5分単位の超細かいタイムテーブルを作り上げる。これは僕の性分で、ガチガチに旅程を組まないと落ち着かない。

旅程が固まったら、旅行当日までにそれに沿ったインプットをしまくる。
各スポットのWikipediaや公式サイト、YouTubeの旅行記などを見まくる。場合によっては本も読む(今回は森鴎外と松本清張の小説を読んだ(詳細は後述))。
歴史などの背景を知ってから旅行に行くと、当日の楽しさが数倍になること請け合いだ。
あとはイメトレで予習も欠かさない。失敗が怖いから。

……こういう準備が何気に一番楽しかったりもする。



ここから先の文章はだいたい旅行中に書いている。
少し乱雑になっている部分もあるかもしれないが、その分旅の興奮や臨場感を余すところなく書き残していきたいと思う。



1日目

さあ、ついに今日から旅が始まる。
狩猟採集時代から続く旅という文化にこの身を浸す4日間が始まる。

今日はその1日目なのだが、気分的にはまだ0日目だ。
なぜなら、夜行フェリーが出港するのは19時50分で、それまでは家でせっせと旅行の準備をしているからだ。
特に早起きをするでもなく普通に起きて、いつも通り昼食を食べる。そして準備をする。
完全に旅行0日目のムーブである。

とは言いつつも、不安や緊張がまったくないわけではない。
やはり初めての宿泊を伴う一人旅ということで、発表会の前日のような不安と緊張が心の中で渦巻いている。
旅行は今日から始まるというのに。


あれこれしていると17時。
準備は整った。機も熟した。意気揚々と出かけよう。前途洋々のはずだ。さすがに余裕綽々とまではいかなくとも。
さあ、ドアを開けよう――。

と、かっこつけてはみたものの、残念ながら現実はそう甘くなく、開始早々焦るハメになった。
勇んで玄関のドアを開けようとしたその瞬間、外は寒いのにそんな薄着でいいのかと母に言われ、それを説得していたら電車に乗り遅れそうになったのである。心配してくれているだけに非難できないのがなんかズルい。

なんとか予定通りの電車に乗り込めはしたが、今更ながら、僕みたいな一人旅ビギナーが3泊4日フェリー旅とかいう中難易度旅行をして大丈夫なのかと思ってしまう。
もっと低難易度のものから始めたほうがよかったのではないか。麗しき春風が誘う古都京都1泊2日ツアー(クラブツーリズム主催)に申し込むべきではなかったか……。
まあ、そんなことをウジウジゲジゲジ考えるよりこれからに心を向けよう。まだ失敗だと決まったわけではない。

そんなことを考えながら僕は電車に揺られている。
奈良とは違い、大阪の電車は全然分からない。
乗り換えの時なんか、常に構内図を見ていないと本当に迷子になりそうだ。奈良だったら近くの階段を上って下りるだけなのに、大阪だとくねくね歩いたり駅ナカの飲食店に目を奪われたりしないといけない。ややこしいことこの上ない。

特に地下鉄、コイツは曲者だ。窓の外が暗いし、終末へ向かっている感じがして好きになれない。世紀末のヒャッハー列車だ。
車窓から外が見えるというのは素晴らしいことなんだと気づかされた。

途中で乗り換え、初めてニュートラムに乗ることに。ニュートラムって何だ?
正式名称は「Osaka Metro 南港ポートタウン線」というらしいが、それを聞いたところで分からないものは分からない。どうやらモノレールとは違うそうだが(AGTというらしい。これも分からない)。
とにかく初めて乗るタイプの電車だ。

乗る前にこれだけ困惑していたから、いざ車内に入って驚いた。ニュートラム、かわいい。
白い壁、パステルピンクの手すり、ターコイズブルーのミニ椅子。さっきの地下鉄とはまるで正反対だ。
ガタンゴトンという音はせず、そこそこスピードは出ているように感じる。遊園地にある子供用のジェットコースターみたいだ。


ニュートラムを愛でていると、とうとう大阪南港フェリーターミナルに着いた。
駅とターミナルは歩道橋のような道で直接繋がっている。

ピッカピ・カー カーチス

受付は結構混んでいる。平日だからもっと空いているのかと思っていたが、全国旅行支援が効いているのかもしれない。
ツアー客や女性グループが特に多い印象で、他にもトラック運転手や家族連れ、一人旅っぽい人など様々な人がいる。
本来ならQRコード一つで済むはずだが、旅行支援の手続きもあり、かなり並んだ。

今日僕が乗るのは、名門大洋フェリーの「フェリーきょうと」だ。
ちなみに「名門」というのは名古屋と門司のことで、決して自画自賛ではないのでご注意を。


やっと手続きが終わり、近くのローソンで夕食を調達して19時に入船。

船への専用通路
フェリーきょうと。カモメのノリーナちゃんがお出迎え(右下)

船に入ると、修学旅行っぽい学生グループがいる。羨ましい。僕は未だバスでの修学旅行しか経験したことがなく、バスは酔うから嫌なのだ。


では、さっそくだがローソンディナー(サパー?)を食べよう。
船の窓際に設置されている見晴らしカウンター席でいただくことにする。
なお、真っ暗で海はまったく見えない。

合計569円

1品目は、「食物繊維が摂れる 枝豆と塩昆布(国産もち麦入り)」。138円。
あるnoteで美味い!と評されていたおにぎりで、塩昆布と枝豆が合う合う。もち麦の食感も楽しい。ただ、「もちっ」というよりかは「ぷちっ」としているので、ぷち麦に改名したほうがいいとは思う。
レジに持っていく時、僕は枝豆と塩昆布が食べたかっただけなのに、食物繊維を摂取したがっている健康志向ボーヤだと思われそうで少し恥ずかしかった。そんな記憶を吹き飛ばすくらい美味しい。

2品目は、「甘めのソースで味付け ハムカツ&焼きそば」。311円。
こちらのサンドイッチを買った理由は、今日3月13日がサンドイッチデーだから。1を3で挟んでいるからだそうだ。価格も313円に近かったからなんとなく運命を感じた。
焼きそばパンはわんぱくボーイが食べる物だと思っていたのに、まさか自分がそれを選ぶことになるとは思ってもみなかった。これも旅の賜だろう。ハムカツ焼きそばサンドと卵焼きそばサンドの2つセットなんて、あまりにもやんちゃがすぎる。
コンビニパンなのでめちゃめちゃに美味しいというわけでもないが、僕は普段あまりコンビニ飯を食べないので新鮮味がある。

最後は、「つぶあんドーナツ」。120円。
あんこは好物だし、費用対カロリーが良さそうなので買った。明日はいっぱい歩く予定だから、エネルギーを貯めておかねばなるまい。
ドーナツというよりかは、単にあんパンを揚げただけな感じがする。これはドーナツ生地ではなさそうだ。ちょっとがっかり。
そんなフライドあんパンを食べながら、健康志向おにぎりと高カロリーあんドーナツを一緒に買う奴はそうそういないだろうと思った。


19時45分、船内アナウンスによるとそろそろ出港するそうなので、甲板に出てみる。
……クッッッソ寒い。びゅるおぉーおぉーと風が吹いている。
でも夜景が綺麗。それだけで寒さも風の強さも不思議と許せるものだ。

煙突に描かれたファンネルマーク。これを描くためにあえて煙突を大きくしているとか

これから12時間半で458kmの航路を行く、そう思うと胸が高鳴ってきた。
いや、寒さのせいかもしれないが。


寒すぎるので、とりあえず自室(自ベッド)に戻って休憩。

ベッド内部。入り口は右側

今回は、最もお手頃なツーリストという半個室のお部屋にした。
旅行支援のおかげで驚異の4840円である。しかも地域クーポン2000円分がいただけるという。かなりの太っ腹だ。
ベッドはカプセルホテルのような作りで、一応相部屋だがベッドのカーテンを閉めればプライバシーは守られる。3方向を壁に囲まれているので結構暖かい。


そうしたらシャワーをする。
大浴場は大の苦手なので、妥協してまだマシなシャワー室で。こればっかりは手段を目的にすることができない。

その後、展望ラウンジで松本清張の『或る「小倉日記」伝』を読む。
実は明日に松本清張記念館へ行く予定なので、その予習である。ミステリの『点と線』も面白かったが、これはこれで沁みるところがある。

ラウンジでは、修学旅行生らしき2人が特段うるさくするわけでもなく仲良さげに喋っていた。青春っぽくてエモい。

インターネットの繋がる窓際にいる隙にラジオをダウンロードしておく。
帰ったらベッドで聞こうっと、となぜか少し楽しくなった。

眠くなってきたところでベッドに戻り、さっき落とした「モンゴルナイトフィーバー」を聞きながら23時30分に就寝。おやすみなさい。






――という感じでやっとこさ1日目が終わったのだが、この時点でもう4700文字を越えてしまっている。
最近の僕は記事が長ければ長いほどかっこいいと思っている節があるから、今回は自制心を発揮してここでいったん区切り、全4回に記事を分けることにする。


続けて第2回もぜひお読みください。



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