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自分の攻撃的なコミュニケーションスタイルに向き合って、変化するまでのお話。

アサーション、という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

アサーションとは、「自分と他者の人権を侵すことなく、自己表現をすること」といわれています。(アサーションの心,p9)

自分の言いたいことが言えない状態や、自分の言いたいことだけを言って相手の言いたいことを聞かない場合などはアサーションではないです。

自分の気持ちや考えを率直に伝えつつ、相手のことも尊重するコミュニケーション。それは自分も相手も大切にコミュニケーションとも言えます。

私はこのアサーションに出会った時、目から鱗でした。
どちらかというと私は、自分の気持ちや考えを率直に伝えすぎてしまう方で、相手への想像力が欠けてしまうことも多かったです。

このアサーションというコミュニケーションに出会ってからは、随分対人関係でのストレスも軽減しました。もちろん、上手くいくことばかりではないですが、知っているからこそ意識ができているような気がします。

今回は、下記の本を元に、アサーションについてまとめながら、自分がどうやってアサーションを身につけていったかについて記していきたいと思います。


自己表現の3つのスタイル

この本の中では、自己表現には3つのスタイルがあると言われています。

非主張的スタイル

自分を抑え、自分の意見や気持ちを言わない、言えない、言ったとしても相手に伝わらない言い方をする、または相手の言いなりになる、などのスタイルです。

例えばデートで毎回遅刻してくるパートナーに対して、本当は遅刻しないで欲しいと伝えたいけど我慢して言わない、上司から残業を頼まれて、約束があって帰りたいのに飲み込んでしまう、などが挙げられます。

その裏には「嫌われたくない」「気持ちを言って関係性が悪くなることを避けたい」といった気持ちがあるかもしれません。相手の気持ちを傷つけないようにと動いた結果、自分の気持ちは置き去りになってしまうこともあります。

攻撃的スタイル

非主張的スタイルとは逆で、自分の気持ちや考えは伝えるものの、「言い放ち」や「押し付け」によって一方的に自分の言い分を押し通そうとするスタイルです。

例えば、部下の「わかりました」という順応な反応に乗じて依頼すべきことを「あれやれ」「これやれ」と命令している上司や、パートナーと喧嘩した時に、相手の言い分は一切聞かずに、とにかく自分の正しさを主張するなどが挙げられます。

自分の地位を利用して相手に有無を言わさず同意をさせ、反論を封じ込め、自分の思いを通そうとします。また、攻撃的スタイルは、言い放つ、怒鳴るなどの明らかなものだけではなく、とにかく相手を負かせたい、自分が正しいと認めたい、というものも含まれます。

ちなみに、非主張的攻撃というスタイルもあると言われていて、表出はしないけれど、相手を見下し陰で上司の悪口を言うとか、相手の弱みに漬け込んで自分の思い通りに動かす、などが例で挙げられています。

アサーティヴなスタイル

アサーションには、人間が誰もが大切にされるという権利を持っていると言うのが前提としてある、とこの本では述べています。

改めてアサーションとは何かを見てみましょう。

まずは自分の考えや気持ちなどを明確に捉え、それを正直に、相手にわかりやすく伝えてみようとすることです。同時に相手も同様に、自己表現をすることを期待し、受け止めようとすることです。

「アサーションの心」p50,51

自分だけではなく、相手も、というところが大切なポイントですね。アサーティヴなコミュニケーションができている時、私は安心感を持ってその場にいることができます。

20代前半は攻撃的スタイルだった

私自身、昔は、どちらかというと攻撃的スタイルをとっていました。

相手より自分が正しいということをわからせたい、自分が議論や喧嘩で負けることは許せない。

その裏の心理には、自分の自信のなさや、無能だと思われないかの恐れ、自分の小さなプライドがあった気がします。特に20代前半は、それで人とぶつかることが多かった。前職の上司と何度喧嘩したかわかりません。(今では笑い話ですが、当時は苦しかった….)

なぜ自分がこのようなコミュニケーションスタイルをとってしまうかは、自分自身の背景もあるのですが、特に大きな理由は、身の回りにアサーティヴなコミュニケーションを取ってくれる人が少なかったんですよね。

だから、怒るときはこうやって怒るんだ、自分の意見を通すときはこうやって通すんだ、と幼いながらに学習してしまった気もします。もちろん、身の回りの環境のせいだけではないですし、自分の問題もあったと思いますが、環境は大きい要因だったなと振り返ると思います。

「このままではいかん。自分が変わらなければ、自分も相手も傷つけてしまって人と関係性が育っていかない」と危機を感じ、コミュニケーションの勉強をし始めました。

アサーティヴなスタイルをどう身につけていったか?

まずは私は「怒り」の感情を自分でコントロールすることが難しかったので、「怒り」を感じる時どのような行動を取ってしまうのか、ということをループ図にして整理をしました。

整理をした上で、「怒り」の感情が湧いて、「行動」にうつるまでに何をすれば、アサーティヴになるのか、ということを考えて羅列しました。

・「怒り」を感じた時に、深呼吸をする。
・「怒り」を感じて相手に何か言いたいときは、一旦メモ書きをする。それを信頼できる人に送って、どう感じるかをフィードバックしてもらう。
・「怒り」を感じた時に、言葉以外で表現できる方法はないかを考える。
・「怒り」を感じた時に、咄嗟に攻撃的な言葉が出そうになったらその場から離れる。

色々と羅列してみて、全てやってみました。最初はもちろんそんな簡単にうまくいかなくて、うまくいかないことにまた怒りが湧いて、という状態だったのですが、繰り返していくうちに自分にしっくりくる方法が見つかってきました。

私自身は、他者からのフィードバックが効果的でした。

「この部分は、言わなくていいことかもね。ゆかの怒りが滲み出てる」
「これを読んだ時、怖いって思うかな」
「この書き方だと、こういう受け止め方をする可能性があると思うよ」

そんなことを何度も何度もフィードバックしてもらい、これまでは「怒り」の感情が湧いた時に一番最初に思い浮かぶのが「相手にこの怒りをぶつけたい」ということだったのが、「なぜ私は怒りが湧いて、相手にどうして欲しいのか」という意識に少しずつ変わっていきました。

具体的なコミュニケーションの変化とすればこんな感じです。

(昔の私)「そんな言い方をしなくても良いんじゃないですか?」
(今の私)「言いたいことは伝わったのですが、今の伝え方だと、私としてはこう受け止めてしまいました」

今までは思ったことをそのままストレートに伝えていたのですが、その場合だと自分の感情がそのまま乗っかっているので、相手も受け止めきれない、びっくりしてしまう、衝突してしまう、ということが何度も起こりました。

そこから内省し、「どうすれば相手が受け止めやすくなるか」そして「我慢をするのではなく、自分も思っていることを伝えられるか」ということに意識が向くようになってからは随分コミュニケーションが楽になりました。

そして、一人で向き合うのではなく、信頼できる他者と一緒に、というのが私にとっては心が折れずに取り組み続けられた大きな理由だと思います。

自分の本当のニーズに気づくこと

アサーティヴなコミュニケーションに変化してきたからといって、いつでもできる訳ではありません。自分の調子によっては、攻撃的になることも、非主張的になることもあります。

そんな時に、自分自身が大切にしているのが「今、私が求めていることは何なのか?」ということにちゃんと目を向ける、ということ。

承認の言葉が欲しいのか
寂しさを感じているのか
とにかく怒りを発散させたいのか
疲れているから休みたいのか
共感をして欲しいのか
傷ついている自分を癒すことなのか

自分の本当のニーズを無視している時、特に私はアサーティヴでいることが難しくなります。

「今、ちょっとトゲトゲしている自分がいるな」
「過大解釈になっているな」
「不安を感じてソワソワしているな」

そう感じた時は、無理せず立ち止まって自分が欲していることに耳を傾けます。そうすることで、少しずつ安心に繋がり、コミュニケーションがアサーティヴになっていきます。

私の中では、アサーティヴなコミュニケーションとは、自分の本当のニーズに気づくことなのではないかと思っています。


アサーションと言っても、知っていることとできることは違います。知ったからと言ってすぐにできるようにはならないかもしれません。(私は時間がかかりました)でも、まずは知ってみることから。

「アサーションというコミュニケーションがある」ということを知っているだけでも、選択肢の一つになるのではないかな、と思います。




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