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関係性が薄い従業員ほど、リーダーシップ介入の効果がある!?

LMXとは、リーダーシップの交換モデル(LMX; Leader Member Exchange)と呼ばれるアプローチを指します。

「一人のリーダーと複数のメンバー」という関係性ではなく、「一人のリーダーと一人のメンバー」の関係に焦点を当てたのがLMX の特徴です。LMXについてまとめたnoteはこちらをよければご覧ください。

今回はLMXが低い従業員とLMXが高い従業員を比べたときのリーダーシップ介入効果の差について調べた研究についてまとめていきたいと思います。

論文:Scandura, Terri A., and George B. Graen.(1984)”Moderating Effects of Initial Leader–member Exchange Status on the Effects of a Leadership Intervention.”The Journal of Applied Psychology 69 (3): 428–36.


研究目的

リーダーとフォロワーのダイアド間のLMXの状態が、リーダーシップ介入の効果に及ぼす影響を検討すること。
Dyadic Relationship=二項関係

Leadership Theory and Practice (Ninth ed.)2021年より抜粋

仮説

仮説1:LMXの質が低いメンバーは、質の高いメンバーに比べ、リーダーシップの介入により、総合的な職務満足度に対してよりポジティブな効果を示す。

仮説2:当初LMXの質が低かったメンバーは、リーダーシップの介入により、当初質が高かったメンバーより上司満足度に対してよりポジティブな効果を示す。

仮説3:LMXの質が低いメンバーは、質の高いメンバーと比較して、リーダーシップの介入によって生産性により大きな影響を受ける。

研究方法

対象者:コンピュータ処理に従事する従業員83名

1週目(Before)と26 週目(After)で、小グループと直属の上司に質問票を配布する。そして、26週間にわたり週単位で生産性を測定する。参加者は、作業単位によって2つの条件のいずれかに割り当てられた。

◯「実験群」(介入する)に行ったこと


・LMXの実験群のマネージャーは、2時間のセッションを6週間にわたって6回受講。
 
(研修の目的)
マネージャーが部下との関係におけるポジティブな要素とネガティブな要素を徹底的に分析し、それに基づいて行動できるようにすること。

(研修内容)
・アクティブ・リスニングのスキルトレーニング(2時間)
・相互期待交換(2時間)
・リソース交換(2時間)
・マンツーマンセッションの実践(4時間)

(研修後に行ったこと)
・トレーニングに続く実際の介入は、マネージャーとメンバーとの1対1の会話を30分前後かけて実施

会話で行うことは以下
(a)メンバーの仕事、上司の仕事、仕事上の関係について、各人の不満、懸念、期待について話し、議論する時間を持つ
 
(b)”アクティブリスキング”のスキルを使い部下が懸念している課題について注意深くなること
 
(c)マネージャーは、提起された問題に対して、自分の枠組みを押し付けることを控えること
 
(d)マネージャーは、自分自身の仕事、メンバーの仕事、そして彼らの仕事上の関係について、自分自身の仕事への期待をいくつか共有すること

◯「対照群」(何もしない)に行ったこと


・プラセボ対照群では、マネージャーが、職務の充実、業績評価、意思決定、コミュニケーションに関する一般的なインプットを2時間のセッションに3回参加。

◯研究の方法
被説明変数:
・生産量(1人が1週間に完成させた仕事の総数)
・仕事の満足度(給与、安全、社会的側面、上司、成長機会の5つの側面) 
調整変数:
・LMX尺度

結果

・LMXの質がリーダーシップ介入の効果を調整するという仮説が支持された。 (仮説1~3が支持)
・26週間にわたる研究期間中に、介入対象者はより高いパフォーマンスを発揮するようになった。
・特にリーダーシップ介入は、LMXが低いメンバーに対して最も効果的であった。

この論文から、関係性が薄い従業員に対して、リーダーシップを発揮することで関係性の質を高めることができるということがわかりました。

介入方法は、まさに1on1で、マネージャーが部下へ1on1をする際に、部下の不満や懸念点に耳を傾け、期待を伝えるということをしています。
加えて10時間の研修をやっていることを考えると、たった2-3時間の研修では足りないこともわかります。

しっかりとインプットの時間を取って、ただインプットをするだけではなく、実践をするというところまでが介入としては非常に重要です。

関係性が薄い(と感じている)従業員に対して、何も行動を起こさないのではなく、自分から働きかけることを意識していきたいですね。

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