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失敗しても、もう1回チャレンジできる組織づくりを。/土屋一登さん

4月より、「より良い組織づくりの実践者インタビュー」を個人の活動として始めることにしました。私がこのインタビューで目指したいことは大きく3つあります。

①活き活きと働いている人が多い組織にはどんな要素が必要なのか解明すること
②組織実践者の学びを吸収し、自分の身の回りの組織に活かすこと
③インタビューのnoteを読んでくれた方の組織にまつわる悩みや課題の一助となること

このインタビューを通じてより良い組織とは何なのかを探求し、言語化していきたいと思っています。

なぜインタビューを始めようと思ったのかの詳細は、こちらのnoteをご覧ください。

インタビューは一般社団法人眞山舎(さなやまや)代表理事の土屋一登さんにご協力いただきました。土屋さんは、ご自身の経験を経て、社員が働きやすい環境について日頃から考えていらっしゃいます。これまでどんな経験をされ、社員が働きやすい工夫をどのように実現されているのか。
コーヒーや紅茶片手にぜひご覧ください。

※原.....原田
  土.....土屋


自己紹介

一般社団法人眞山舎(さなやまや)というNPOの代表理事をしています。

高校を卒業後に渡米して、南カリフォルニア大学で政治学を学びました。そのときに、日本の市民社会やNPOによる政治や政策へのインパクトなどを研究する、アピチャイ・シッパー助教授のもとでリサーチアシスタントとして活動していました。僕がNPOに興味をもったのは、これがきっかけかな、と思います。

2012年5月に大学を卒業して、日本に帰国したのですが、ちょうどギャップイヤーになったので、あるNPO法人のボランティアとして1ヶ月間、インターンとして4ヶ月間、岩手県大槌町で子どもの居場所づくりや学習支援の活動をしていました。

2013年から名古屋市の繊維専門商社に新卒として入社したのですが、NPOへの思いが捨てきれなくて、9ヶ月で退職しちゃったんです。

その後は、都内のNPOの職員としてファンドレイジングに関わって、法人営業やチャリティイベントの企画運営などをやってました。

また、2018年からは、2012年にインターンをしていたNPOに職員として戻って、デジタルマーケティングを活用したボランティアやインターンの採用募集であったり、マンスリーサポーターという毎月寄付をしてくださる方の募集業務を担当していました。

その後、2021年12月にフリーランスのファンドレイザーとして独立をしたのですが、翌年には仲間と共に一般社団法人眞山舎を設立して、代表理事に就任しました。

一般社団法人眞山舎(さなやまや)について

(原)つっちーさん、今日はよろしくお願いします。久しぶりにお話しできるのを楽しみにしていました。まずは現在つっちーさんが働いている組織の概要について教えてください。

(土)よろしくお願いします。2022年11月に一般社団法人眞山舎(さなやまや)を立ち上げました。どうすれば「『わたし』が幸せを感じられる暮らし」をつくれるか、というテーマで活動をしています。
「わたし」というのは、僕自身もそうですが、眞山舎に関わる人たち、その家族、友人、隣人などの主語としての「わたし」です。現在は、役員3名、相談役1名(事業のメンター)、プロボノ数名で、少し前まではインターンも関わってくれていました。とても小さな組織なので、定期的にお金をもらっているのは、代表の僕だけです。


(原)現在はどんな事業をしていますか?

(土)現在は、2つの事業を行っています。NPO支援事業と協働事業です。NPO支援事業では、NPOの理念づくりや中期計画策定のサポートから、ファンドレイジング計画を立てたり、そのための財源をどう集めていくかなどを一緒に考えたりします。場合によってはウェブサイトやメールマガジンの運用など、実際に手を動かすこともありますし、1on1を通じて役員さんへの伴走もしています。

協働事業については、今年度実施したい取り組みとして、「リカバリーカレッジ」という学びの場をベースにした事業があります。暮らしのなかで生きづらさや困難を感じている方が、同じ生徒として学ぶ場をつくる事業です。しょうがいがある、ない、支援する、されるではない関係で共に学び、何かを共につくりあげていく機会を創ることを目指しています。複数の団体や組織と連携して、協働で進めていく事業になります。

(原)色んな事業をやっていらっしゃるんですね!とても面白そうです。

「仕事って楽しくて良いんだ」という気づき

(原)さまざまな事業を手がけていらっしゃると思うのですが、つっちーさんは社員の皆さんが働きやすくなるために工夫していることなどはありますか?

(土)意識していることは、3つあります。「楽しいことをやる」「頑張らない」「我慢しない」。本人の好みとして頑張りたい人であれば基本はそれでOKというスタンスですが、そうではなくて、「我慢しないといけない」「頑張らないといけない」という「〜しないといけない」という縛りを本人が感じないような環境を作りたいと思っています。

それは自分の原体験が大きくて、僕は27歳の時に双極性障害(気分が高まったり落ち込んだり、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気のこと)になりました。
自分が望んだ仕事であっても、しんどくなって潰れてしまうことがあるんですよね。それから3年くらいは、「自分はもう仕事ができない」「どう生きていけば良いのかわからない」と思って悩んでいました。ですが、大学卒業後にインターンをしていたNPOと再会してから、「仕事ってこんなに楽しくて良いんだ」という感覚を取り戻します。
その時に自分が思っていた「社会や仕事に対する苦しさ」は感じなくても良いんだと思えたんです。
「仕事ってもっと楽しくできるんじゃないか」。
ヒントを得たと思いましたね。
ただ、寄付の収入が何億円かあるNPOということもあって、ぼくにも業務上のミッションはありました。
そのNPOと比べると、いまの僕の考え方は少し極端かもしれませんが(笑)
それからは眞山舎に関わる人たちに対して、自分と同じような思いを持って欲しいと願い、心がけていました。


2018年NPOに入職した時の写真

「もう1回チャレンジしたい」と思える組織をつくりたい

(原)ご自身の原体験が大きなきっかけだったんですね。つっちーさんの「願い」についてもう少し詳しく聞いても良いですか?「仕事を楽しく感じてもらう」以外の願いもあるんでしょうか?

(土)そうですね。眞山舎を「もう1回チャレンジできるかもしれない」と思える場所にしたいというのもあります。

(原)もう1回チャレンジできる?

(土)はい。仕事の中で、「できないことがあってもここにいて良い」と思えるかどうかって大事だと思うんです。例えば、僕みたいに仕事で心の調子を崩してしまった人が、もう1回チャレンジできたのは、失敗しても良いと受け入れてくれる環境があったからです。眞山舎に関わることで、心が軽くなって、やりたいことや興味が湧くことに繋がれば良いなと思うんです。
例えつまづいたって、失敗したって、「もう1回チャレンジできるかもしれない」と思ってもらえたら良いと思うし、それがもう一つの願いでもありますね。

実際に眞山舎でインターンしてくれた20代前半の方は、過去に仕事でつまずいてしまい、「私はどこに行っても働けないんじゃないか…」と悩んでいる状態のときに眞山舎に来てくれて。僕も、本人にとってのリカバリーになれば良いなと思って、関わり方を意識しました。具体的には、インターンの方と一緒に、興味のあること、やりたいことに重なる仕事を見つける作業をしました。
「なんでそれに興味あるの?」「いつから興味あるの?」と深掘りして聞いていったり、「こんな業務があるけどやってみる?」と提案してみたり。
やりたくない業務があったらやらなくて良いよ、無理してやらなくて良いよ、投げ出しても良いよという声かけを大切にしていました。
最終的にそのインターンの方はゆっくり回復していき、「就職活動の道筋が見えてきたので、就職活動にもう一度チャレンジしたい」というポジティブな理由で卒業していきました。

先日、そのインターンの方と話す機会があったのですが、眞山舎で関わった業務が良かったというよりは、インターン中に得た対話の機会や、関わっている人の仕事の進め方に触れたことで「社会には私でもやっていける場所があるかもしれない」と感じるようになったと教えてくれました。

「あなたの日常の充実感が大事」と言ってくれた上司

(原)そういう声かけを、自然にできる人ってなかなかいないと思います。仕事だったら、投げ出さずにやりなさい、と言われることの方が多いですよね。なぜそのような声かけができるんでしょうか?

(土)NPO時代の直属の上司の1on1が忘れられないんです。彼は、部下と話す時間なんて取るのも難しいのではというくらい超多忙な人でした。そんな人が僕のために、平気で3時間くらい話を聴いてくれたんです。

なんでそんなに時間を割いてくれるのか聞いたら、「つっちーの業務以外のメンタルヘルス、日常の充実感が大事だよ」と。

(原)なんて素敵な回答....!!

(土)僕もすごく嬉しかったです。だからこそ、この組織に関わっていることで個人が幸せを感じられる組織にしたいです。
僕の人生のテーマは、【「わたし」が幸せを感じられる暮らし】なんです。
「わたし」を中心に考える。
そうすると、自分自身の幸せに、身近な人が入ってくるわけです。子どもとか、パートナーとか、親とか。
そうやって、自分の幸せを中心に考えると、そこには必ず他者の存在があります。それを広げていくと、自分が住んでいる国立市のことにも繋がってきます。今、国立市で色々な活動をしていますが、それは、自分の暮らしと直結しているからです。つまり、眞山舎の周りにいる人が幸せを感じられないと、自分が幸せを感じる瞬間も減ってしまうんです。

変わり続けることで見える世界

(原)ここまで聴いてきて、つっちーさんの大切にしていることがひしひし伝わってきました。「個」がどう感じるかをとても大切にされているんだなと。最後に、経営する上で特に大切にしていることはありますか。

(土)そうだなぁ〜.....。眞山舎が必要なくなった時は、解散しても良いかなと。
一方でそう思いつつ、変化をし続けながら新しい、自分たちができることを見つけていくことも大事にしたいです。バランスなのかな。
変わり続けることでできることはあるんじゃないかなと。

(原)変わり続けること、ですか。

(土)そう。僕にとって、幸せは変化することが前提なんです。20歳の時に姉を亡くしたり、父が23歳の時に脳梗塞で寝たきりになったり。自分自身も双極性障害になりました。
自分の暮らしに変化が起こったときは、これまで感じてきた幸せが突然失われることもあります。
だから、変わらないことを前提にすると、過去の幸せにとらわれてしまって、自分が生きている「いま」に幸せを感じられる瞬間が減ってしまうんです。

僕の人生には多くの変化が沢山起きました。その変化によって僕自身が選択したことが、人の迷惑になってしまったり、信頼を失ったり、嫌われたり、ということも多くあったと思います。
それは自覚しています。
ただ同時に、そんな僕でも受け入れてくれる人や助けてくれる人、おもしろがってくれる人がいることにも気づいたんです。
メンタルを安定させるために自分でできることはするということは当然ですが、このままの自分で行こうって思えています。

これからも、変化は起こります。人が変化に適応していくことは、暮らしの中で幸せを感じる瞬間が増えるということにつながります。
だから、誰かの変化を拒むこと、変化を止めちゃう行為も嫌なんです。
人の変化を応援できる自分でいたいと思っています。


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つっちーさんのお話を聴くなかで、今回出てきたキーワードは「組織と個人の幸せ」と「失敗しても良い環境」。

人が活き活きと働くためには、組織の中で個人が幸せを感じられているか、そして失敗しても良い環境があるかどうかは大きいのかなと思いました。

失敗しても、うまく行かなくても「もう1回ここでチャレンジしたい」と思える組織づくりを。
大切なことをつっちーさんから教わった気がしました。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
今後もインタビューは継続していくので、最新情報をキャッチしたいと思ってくださった方はよろしければ、下記のアカウントのフォローをお願いします◎

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次回のインタビューnoteは、認定NPO法人底上げ代表理事の矢部寛明さんです!

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