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<ラグビー>2023ラグビーワールドカップ(開幕第3週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 トンガのシピタウ、フィジーのジンビ、サモアのシヴァタウ、オールブラックスのハカという、ラグビーの試合前に行うパフォーマンスを、日本のメディアは、「踊り」とか「舞い」等とよく表現するが、このどこか軽薄さを感じる言い方には、ジャンポール・サルトルが『弁証法的理性批判』で展開した、ヨーロッパ中心主義=植民地差別=白人優越論の匂いがして、とても嫌だ。

 英語では昔、ハカをウォークライ(War Cry、戦いの叫び)と表現していたが、まだこちらの方が許容できる表現だろう。しかし、ハカはハカというしかなく、シピタウ、ジンビ、シヴァタウもハカ同様に別の表現はないのだが、無理やり日本語による説明的な表現をするのであれば、「儀式」という言葉以外に私は思い浮かばない。

 日本の神楽やギリシアの鶴の踊りなど、古代から宗教と歌舞音曲は近接関係にあるが、これは人が神に対して(上位者に)奉納するパフォーマンスなので、舞踊という表現が適切だ。しかし、ラグビーの場合は人対人の関係である以上、パフォーマンスする側が対戦相手に(下位の側として)「奉納」することはありえないので、不適切だ。

  そして、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランスの選手が、ハカなどに対して薄笑いを浮かべる、またはパフォーマンスを阻害するような行為をする背景には、そうした見下した気持ちがあるのだから、こうした行為を「よくやった!」とメディアが評価することには私は同意できない。


1.RWCプールマッチ結果

9月20日

イタリア38-17ウルグアイ(HT7-17)

 イタリアは先発数人を入替及び移動させた。FBにアンジュ・カプオッツォが、12番CTBにパオロ・ガルビシが、SOにトンマゾ・アランが、それぞれ移動した。SHはガルビシの21歳の弟アレッサンドロが先発する。また、NO.8ロレンツォ・カンノネの25歳の兄ニッコロが4番LOに入っている。6番FLセバスティアン・ネグリが50キャップを達成した。

 イタリアは、前半に続くシンビン2枚を出す規律の悪さで苦戦したが、後半に格の違いを見せて一方的に得点して完勝した。ウルグアイは前半だけだが、シックスネーションズのチームに対して善戦して見せた。

 この2チームはこれからオールブラックスと対戦するが、どちらも基本プレーのミスや規律の悪さがあるので、オールブラックスに大敗する可能性が高い。一方、イタリアはフランス相手に、もしプレーがはまれば勝つ可能性があるように見えた。 

9月21日

フランス96-0ナミビア(HT54-0)

 フランスは、苦戦したウルグアイ戦のBチームから、先発11人を交代したAチームで臨んだ。SHはキャプテンのアントワーヌ・デュポン、SOはマチュウ・ジャリベール。1番PRにシリル・バイユが、また12番CTBにジョナサン・ダンティが、それぞれ怪我から復帰している。

 フランスは、14番WTBダミアン・プノーのハットトリックなど14トライを挙げ、RWCのフランスのゲームで歴代最多となる得点で圧勝した。ナミビアは、後半に2枚のシンビンとレッドカードを出す反則の多さで試合にならなかった。

 後半45分、ナミビアの13番CTBヨハン・デイゼルが、フランスSHアントワーヌ・デュポンにタックルする際に、顔面を強打してレッドカードになった一方、デュポンはただちに病院行きとなる大怪我を負ってしまった。

 記録的圧勝をしたナミビア戦の代償として、キャプテンのSHアントワーヌ・デュポンが、顔面を強打し、頬骨の骨折(と脳震盪?)で最低3週間は欠場する可能性がでている。骨折の程度(や脳震盪の症状)によっては、今大会離脱の可能性もあり、その場合は決勝トーナメントに向けて、フランスはチームの大黒柱を失う暗雲が漂うことになってしまうだろう。これは、2011年大会でオールブラックスがSOダニエル・カーターを失った以上に、チームに与えるダメージが大きい。

 フランス監督のファビアン・ガルティエにとっては、勝利が確実な格下のナミビア戦に、チームの大黒柱であるデュポンを温存すべきであったと批判されても仕方ない選手起用となってしまった。また、プールマッチ最終戦となるイタリアとは相性が良くないので、デュポン不在が大きく影響するだろう。

9月22日

アルゼンチン19-10サモア(HT13-3)

 アルゼンチンは、先発3人(PR、LO、CTB)を交代させる少ない変更に止めた。キャプテンは2番HOフリヤン・モントーヤ。

 サモアも先発3人の交代に止めた。11番WTBにハリケーンズでトライゲッターとして大活躍したベン・ラムが入っている。キャプテンは5番LOクリス・ヴイ。

 開始早々にサモアがシンビンになり、そのままの勢いでアルゼンチンが13-0と前半をリードする。後半は膠着状態が続き、サモアが74分にトライを返すが既に勝負は決まっていた。後半、着実に2PGを重ねたアルゼンチンが勝利した。

 しかし、雨中とはいえ、両チームともパスミスなどが多かった上に、特にサモアは不要な反則が多すぎて、トライを取り切れない場面が多くあった。アルゼンチンも効果的なアタックを継続できていたわけではないので、この両チームとこれから対戦する日本としては、勝利の可能性を感じられたゲームとなった。

9月23日

ジョージア18-18ポルトガル(HT13-5)

 ジョージアが前半の入りは良かったものの、その後はイージーミスや反則で前半に突き放せない。後半に入ると、ポルトガル14番WTBラファエル・ストチッティに連続トライを取られ、57分には13-18と逆転される。しかし、78分にジョージアがモールからトライをもぎ取り、18-18の同点。コンバージョンを決めれば勝ち越しだったが、これを外してしまう。そして81分、ポルトガルにRWC初勝利を目指す絶好のPGチャンスが訪れたが、これを外してしまい、結局同点の引き分けとなった。

 得点は競ったものの、内容はティア2チーム同士の対戦にありがちな、お互いのミス合戦という様相となり、ラグビーゲームとしての面白さには欠けた凡戦となった。

イングランド71-0チリ(HT31-0)

 イングランドは格下のチリに対して大幅に先発メンバーを交代させた。出場停止処分が明けたオウウェン・ファレルをSOにし、キャプテンを務める。ゴールキックが好調のジョージ・フォードは、22番のリザーブに下がった。リザーブからのプレーが続いたSOマーカス・スミスをFBで先発させ、フレディー・スチュアートを休養させた。

 チリは、14番WTBにセヴンズで活躍したクリストバル・ゴメを先発させ、その活躍が期待されたが、目立つ結果は残せなかった。

 チリは、日本戦やサモア戦のようなフィジカルバトルに持ち込めない一方、BKのラインディフェンスがザル状態で、イングランドBKにいいようにアタックされ、11トライを献上して惨敗した。イングランド14番WTBヘンリー・アルンデルが、5トライの荒稼ぎをしただけの試合となった。

南アフリカ8-13アイルランド(HT3-7)

 プール1位を決める試合で、RWCでは初めての対戦となる。昨年11月のゲームでは、19-16でホームのアイルランドが勝利している。
 
 南アフリカのセカンドジャージーについては、色盲に対応させることで種々議論があったが、スコットランド戦で使用した緑の発色が強いもののほかに、白を基調にしたセカンドジャージーがあり、これを今回のアイルランド戦で使用した。(その結果、両チームともに安っぽいTシャツのようなジャージになったのは、良い試合だっただけに残念だった。)

 南アフリカは、議論の的となっているリザーブをFW7人+BK1人の体制にした。BKのリザーブはルーマニア戦でハットトリックを記録したSHコブス・ライナッハだけとなっている。また、前戦から先発13人が交代した。SOは追加でスコッド入りしたアンドレ・ポラードが23人に入らず、引き続きマニー・リボックが務める。リボックが怪我した場合は、FBダミアン・ウィルムゼがSOに上がる。

 アイルランドは、キャプテンのSOジョナサン・セクストン、現在4トライでトライ王の12番CTBバンディー・アーキなどベストメンバーを揃えている他、16番HOに怪我のダン・シーハンが戻った。

 アイルランドは、前半にラインアウトが安定せずアタックができない状況が続いた。一方南アフリカは、前半5分頃、SHファフ・デクラークが得意の故意のパスカットをしたが、レフェリーに見逃されて、シンビンから逃れる幸運があった。しかし、その後ラインアウトを修正したアイルランドが、12番CTBバンディー・アーキの活躍から32分にトライを挙げて前半を僅差でリードする。

 後半は、南アフリカがFBダミアン・ウィルムゼの活躍から50分にトライを挙げて、8-7と逆転するが、57分にアイルランドもPGで8-10と再びリードを取り返す。その後63分と64分に、南アフリカがPGを失敗した一方、アイルランドは75分にPGを加えて8-13とリードを拡げ、そのまま逃げ切った。南アフリカは、ゴールキックの精度の低さが敗因に直結した形となり、アンドレ・ポラードの復帰が待望される。

 これでA組1位はアイルランド、2位は南アフリカがほぼ確定し、準々決勝では、南アフリカがB組1位になる可能性が高いフランスと、またB組2位になる可能性が高いオールブラックスがアイルランドと、それぞれ対戦することになる。

 ところで、アイルランドSOジョナサン・セクストンのSEXTONという氏が、『ドラキュラ』の中で度々出てきた単語でもあったので、気になって辞書を調べたら、「寺男」、「墓守り」「墓堀人」という意味だとわかった。たぶん先祖がこうした仕事を専門にしていたのだろう。

9月24日

スコットランド45-17トンガ(HT24-10)

 スコットランドは先発4人を代え、SOにフィン・ラッセルが戻るほぼベストメンバーとなっている。NO.8には、元ワラビーズのジャック・デンプシーが先発する。キャプテンは6番FLジェイミー・リッチー。

 トンガは、FBチャールズ・ピウタウ、13番CTBマラカイ・フェキトア、SHアガスティン・プルー、NO.8ヴァエア・フィフィタらの元オールブラックスが先発する。キャプテンは元チーフス3番PRのベン・タメイフナ。

 トンガが、前半34分にシンビン、後半77分にレッドカードと規律が悪かった上に、スコットランドにFW・BKともにいいようにプレーされて、完敗した。ミスタックルが48もあった上に、タックル成功率70%では勝負にならなかった。

ウェールズ40-6オーストラリア(HT16-6)

 オーストラリアは、ここで負けると史上初の予選プール敗退がほぼ決まる。昨年の対戦では、アウェイのオーストラリアが39-34で勝利している。オーストラリアは、前戦で不調だったSOカーター・ゴードンを22番のリザーブに下げ、SOにはFBからベン・ドナルドソンを移動させた。空いたFBには、WTBが専門のアンドリュウ・ケラウェイが入る。脳震盪が心配されたSHテイト・マクダーモットは、症状が確認されなかったため9番で先発する。キャプテンは、HOデイヴィット・ポレキ。

 ウェールズは、FBリアム・ウィリアムス、SOダン・ビガー、SHガレス・デイヴィス、NO.8タウルペ・ファレタウとベストメンバーを揃えている。キャプテンは好調の7番FLジャック・モーガン。5番LOアダム・ベアードが50キャップを達成した。

 ウェールズが、開始2分にSHガレス・デイヴィスがトライしてから、77分のキャプテンのジャック・モーガンのトライまで、完全に試合を支配した。11分に、SOダン・ビガーが肩の怪我で退場したが、交代で入ったNZ人の22番SOガレス・アンスコムが、ゴールキックの他ドロップゴールも決める安定したプレーを見せた他、47分には、ゴール前のチップキックで、12番CTBニック・トンプキンのトライをアシストするなど、優れたプレー振りでチームを勝利に導いてみせた。

 負けたオーストラリアは、エディー・ジョーンズ監督が抜擢したSOカーター・ゴードンの不調により、FBからSOに移動させたベン・ドナルドソンが、経験値の少なさから拙いプレーが目立つなど、結果的に監督采配がチームの足を引っ張ることとなった。また、チーム全体として意図あるプレーがまるでみられず、経験値の低さのみならず、誰が見てもコーチング不足が露見したプレー振りのため、これまで優れたコーチと評価されてきたジョーンズ監督の手腕が、大きく批判される結果となった。

2.その他のニュースなど

(1)女子日本代表がフィジーに接戦で連勝

日本41-36フィジー

 女子日本代表は、10月に始まるWXVの二部リーグへ向けて弾みをつける、フィジー相手の連勝となった。WXV二部リーグで女子日本代表は、10月13日のイタリア戦が初戦となる。この二部リーグには、日本の他、イタリア、スコットランド、南アフリカ、アメリカ、サモアが参加している。

 一方フィジーは、三部リーグに、アイルランド、コロンビア、カザフスタン、スペイン、ケニアとともに参加する。

 最上位となる一部リーグは、10月20日のイングランド対オーストラリアで開幕する。この2チームの他、カナダ、ウェールズ、NZ、フランスが参加している。

(2)エディ―・ジョーンズが、次期日本代表監督候補として、日本協会と接触


 元日本代表及び前イングランド代表監督で、現在不振のワラビーズ監督を務めているエディー・ジョーンズは、次期日本代表監督として日本協会から接触を受けているとの報道がオーストラリアで流れ、身辺が騒がしくなっている。

(私見)この報道に対して、ジョーンズ自身が明確な否定をしていないことや、オーストラリアのメディアやラグビー関係者も、この報道を前提にしたコメントをしていることから、信憑性は高いものと思われる。

 一方、自分たちのチームがRWCで真剣勝負をする直前に、指導者が自分の次の就職先候補と連絡を取っているというのは、チームが不振な中で「沈む船から船長が一番先に逃げ出す」ものとなり、監督と選手との信頼関係が崩れてしまうことになる。

 そして、こうした自チームへの裏切り行為を隠れて行なうリーダーを、日本協会が次期代表監督に招聘するというのは、いくら2015年の実績があるとはいえ、一部の熱烈なジョーンズ崇拝者を除いて、多くの選手やファンから歓迎されないものになるだろう。

(3)関東大学ラグビー対抗戦Aグループ(余談)

筑波35-38早稲田
 筑波が、スクラムやラインアウトでボロボロになり、アタックチャンスにノッコンしまくっていても、この点差に留まった。一方の早稲田は、セットプレー、ブレイクダウン、個人技で上回っていたが、この点差にしかならなかった。これはまさに大学ラグビーの不思議さだと感じる。

 ところで、大人気の早稲田のゲームでさえも、秩父宮のスタンドは閑散として、熱心に観戦しているのは中高年男性ばかりになってしまっている光景は、かつての大学ラグビー全盛時代を知る者としては、かなり寂しいものがある。時代は、リーグワンや代表のゲームに確実に移っているのだろう。

明治93-12成蹊
 スコアはこんなものだろうが、廣瀬雄也(前半のみで交代)のゴールキックが、成功率3/9という低さは、いったいどうしたのだろう?昨年は100%近い成功率だっただけに、少し心配になっている。


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