見出し画像

失われた時を求めて ~アンチエイジング、あるいは「若返り」としての筋力トレーニングを考える~

今日のテーマはちょっと「即物的」というか、普段の話題と比べるとあまり「硬派ではない」内容かもしれません。

筋力トレーニングが、「皮膚の老化」に及ぼす影響

について調べた論文を見つけたので、紹介しましょう。

2023年の研究で、「Nature」系列の「Scientific Reports」に掲載されました。

「Nature」というと世界的に有名な科学雑誌ですが、これはその「姉妹編」にあたるようです。

ぜんぜん知りませんでしたが、ひとくちに「Nature」といっても、どうやら膨大な数の「姉妹雑誌」が存在するようで……
その中でもこの「Scientific Reports」というのは、かなり「末っ子」的なポジションのようです。

また、この「Scientific Reports」は「オンラインオープンアクセス」だそうです。
つまり、「ネット上で誰でも見れる」研究誌だということです。

一般に研究誌には「IF」、つまり「インパクトファクター」というものがあり、いわゆる「格付け」がなされています。

要は、刊行の歴史があって、たくさん参照され、引用されやすい雑誌ほど、その格付けが高いのです。

そのため、科学研究者はより高い「IF」を持つ雑誌に成果を投稿すべく、日夜しのぎを削っているといいます。

ちなみに、近年における「Scientific Reports」のIFは、「4.996」だそうです。
そして「Nature」本誌は64.8!だとか。

これらの数字が高いのか低いのか、残念ながら自分には判断ができません。

また、掲載された論文そのものも「被引用回数」、つまり他の研究によって参照・引用された頻度の高さで評価されます。

(どうやら、同じ仲間内で互いに論文を引用し合って、被引用回数を高めるなんていう悪しき「裏技」もあるようですが……)

そしてこのような営為のはるか「頂き」に、たとえば「ノーベル賞」などといった科学賞が存在するわけですね。

ということで、あくまでも超有名な「Nature」の系列の中では、おそらく「それほどではない」のだろうとも思われます。
ただ、それでもその辺の雑誌よりははるかに権威があるのは間違いないでしょう。

この辺は、きっと研究分野によっても感覚の違いがあるのだと思います。

今回紹介する論文の研究グループは日本人で、立命館大学ポーラ化成工業(有名なポーラ化粧品はここから独立した会社だとか)の名前がありました。

61名の、中年の日本人女性を被験者に、16週間にわたって実験が行われました。
年齢幅は41~59歳。

そのうちの、56名分のデータが分析に用いられたようです。
(5名が途中で脱落したようです)

実験では被験者をランダム(無作為)に、

AT(エアロビックトレーニング)グループ 26人
RT(レジスタンストレーニング)グループ 30人

に振り分けました。

論文より引用

ATグループはエアロバイクによる有酸素運動を
RTグループはマシンによる筋力トレーニングを

それぞれ
週2回
行ったようです。

➀ATグループは、3分間のウォームアップの後で、30分間エアロバイクを漕ぎました。
負荷は、最大心拍数の65~70%に設定されています。
その後で、3分間のクールダウンを行いました。

②RTグループは

チェストプレス
ショルダープレス
アームカール
ローイング
レッグカール
レッグエクステンション

の6種目を行ったようです。
なんとなく、レッグプレス辺りが欲しい気もしますが……まあどれも定番の種目ですね。

1セット(5回)のウォームアップの後で、
負荷設定は最大筋力の75~80%を使用し、10回×3セット行いました。

ただし、セッション1~2は50%、
    セッション3~6は60%
    セッション7~10は70%

に負荷が抑えられています。
また、セッション11以降(16週×週2回なので合計32セッションあります)で10回×3セットを完遂した被験者は、次回のセッションでは+5%、負荷を増やしています。

セット間のインターバルは2~3分とのこと。

さて、それでは実験の結果はどうなったでしょうか。

気になる結果は?


まず、

ATグループでは、体重と体組成(BMI)が著しく改善

し、また

最高酸素摂取量(VO2peak)も著しく改善

しました。

有酸素運動をしていたのですから、これはある意味では当たり前でしょう。
ちなみに、ATグループの体重は

実験前      実験後
54.2±1.3㎏    53.5±1.3㎏ 

となりました。
平均値で-0.7㎏、1㎏にも満たないですが、統計的には有意差(p値が0.05未満で、「偶然に差がついた」とは考えにくい結果)が出ています。

また「VO2peak」というのは聞きなれない用語ですが、いわゆる最大酸素摂取量、「VO2max」と類似の尺度です。

厳密には、VO2peakは「レベリングオフ(酸素摂取量がそれ以上増えなくなる、頭打ちないしプラトーの現象)を観察もしくは計測しない」という違いがあるらしいのですが、まああまり気にする必要はないでしょう。

いっぽうで、

RTグループは、筋肉量(論文では「除脂肪軟組織量」)が著しく増加

し、また

1RM(最大筋力)も著しく増加

しました。

これもまた、筋トレをしていたのですから当たり前の結果といえます。

総除脂肪軟組織量(Total lean soft tissue mass)≒総筋肉量が、
実験前      実験後
36.4±0.6㎏    36.8±0.6㎏ 

で、チェストプレスの1RMが、
実験前      実験後
11.8±0.6㎏    17.7±0.7㎏

となりました。

これも筋肉量が+0.4㎏というとあまり大したことないように感じるかも知れませんが、中年の女性が週2回の筋トレをして、しかもたった16週間≒4ヵ月で、筋肉が400g増量したというのはけっこうすごいことだと思います。

一般にテストステロン値の制約などから、女性は筋肉を増やしづらいと言われているので。

また、チェストプレスも絶対的な値こそ20㎏にも届いていませんが、割合で比較すれば150%アップ!というなかなかの成果です。

あらためて本題に

さて、そろそろ改めて本題に入りましょう。
それでは、肝心の「肌の老化」についてはどうなったか?

まず結論からいうと、

ここから先は

1,982字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?