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民報サロン(福島民報掲載)

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リスクを追え

リスクを追え

私が県内最大級の鮮魚店「おのざき」を事業承継する中で意識していることの一つが、「半歩先」の経営だ。加速度的に変化する世の中において、現状維持は衰退につながる。だからこそ、事業継続の前提に立つと、少しでも日々前進しなければならないのである。かといって、アクセル全開で大きな一歩を進もうと急激な変化をもたらすようなことがあると、今度は社内外の人たちがついてこられなくなる。あらゆる価値観や世代の人たちが手

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危機感はあるか?

危機感はあるか?

脂をたんまりと含んだ肉厚な食感。濃厚で甘じょっぱいタレと、夏の暑さを吹き飛ぶす、さわやかな山椒(さんしょう)の香りの組み合わせ…。白米と一緒にかきこむと、夏の到来に気づかされる。きょう30日は「土用の丑の日」だ。町なかの至る所にウナギが並んでいることだろう。

なぜ、夏にウナギを食べるのか。土用の丑の日の由来には諸説あるが、江戸時代、暑さで売り上げが下がる夏の時期に何とかウナギを売りたいと、店側が

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ウニ貝焼から考える「価値」

ウニ貝焼から考える「価値」

初夏になると、まるで宝石のような神々しさをまとったいわき産ウニ貝焼きが、市場に一列に整列する。列を乱すものはない。そこには神聖な空気が漂っているようにさえ感じる。

毎年5月になると、いわき産のムラサキウニの水揚げが解禁され、それをふんだんに使用したウニ貝焼きが初競りにかけられる。いわき発祥の名産品で、今年3月に文化庁の100年フードにも認定された。生では日持ちしないウニを保存するため、明治時代に

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魚屋視点の仕事の本質

魚屋視点の仕事の本質

店の売り上げは、お客さまが喜んだ結果だと社内で話している。お客さまが喜ぶということは、何かしらお客さまの役に立っているということ。仕事の本質は人に喜んでいただくことだと常々思う。

魚を目の前でさばいてお客さまに渡すと、「ありがとう」と言ってもらえる。漢字では有ることが難しいと書く。お客さまは魚をさばくのが難しいため、僕ら魚屋が代わりに魚をさばくことで「有り難う」と喜ばれるのだ。人に感謝されると、

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なぜ魚屋を継いだのか

なぜ魚屋を継いだのか

私は東京からUターンし、2020年1月、家業の「株式会社おのざき」を承継すべく入社しました。1923年、小さな鮮魚店としていわき市平鎌田町にて創業し、おかげさまで今年100周年を迎えました。現在、県内最大級の魚屋として、鮮魚店4店舗と飲食店2店舗に加え、卸売業とEC事業を展開しています。

入社して3年間、経営理念の策定や不採算事業からの撤退、店舗の業務改革、労働環境の整備、全般的なデジタル化、セ

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県民の誇り「常磐もの」

県民の誇り「常磐もの」

「築地市場の水産関係者の99%がおいしいと認めた」。電通が2015(平成27)年に行った水産関係者調査で、福島県沖で水揚げされる高品質の魚「常磐もの」についてそんな結果が出ました。ブランド魚として魚のプロたちから圧倒的な評価を受けたのです。

10年ほど食品業界に身を置く私からみても、食に関するアンケート調査で99%の人が「おいしい」と回答するのは、よっぽどのことです。おいしいか、おいしくないかの

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