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なければつくればいいのよ〜涙なしには語れない、自家製糸唐辛子

…何かが、足りない。


最近、盛り付けの場面でいつも感じていた。
特に和食、中華系の料理において。

それが、糸唐辛子だ。


個人的には、赤たまねぎ、パプリカパウダー、ピンクペッパーなどと肩を並べるこの糸唐辛子。
こんもりのせたり、さっとふるだけでなんだか急にお皿がオシャレな感じになる、優秀プレーヤーのひとりなのである。

私のトーキョー地味生活では、こんな感じで多用していた。

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魚介系を適当にペペロンチーノ風にしたパスタ

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左上の炒め物に使用。お寿司はデパ地下半額


それが、いまのパリの自宅には、ないのだ。
お正月に日本に帰国した際、うっかり買ってくるのを忘れてしまった。

先日、パリ最大級の中華街に行った際、ここならおそらくあるはずなのだけど、最初にむかったお目当てのお店には入ることができず。

この一件ですでに戦意喪失。次のお店ではもうすっかり頭の中から抜け落ちていて、カップラーメンしか買ってこなかった。

このあたりの詳細は、豚のラケの記事をご参照いただけると幸い。


どこにもない、糸唐辛子

でもピリ辛が食べたくなる夏、無性に気になる。
どうしても、ほしい。

中華街までいかずとも、中華街巨大スーパーの支店がまあまあ近所にあるようなので、糸唐辛子探索の旅を試みた。
が、開口一番、売ってないよと冷たくあしらわれる。

困ったなあと最終的に飛び込んだのは、ほしいものがなんでもそろう、近所のアジア食材屋「KANAE」。

KANAE愛についてはすでに、グリーンカレーの記事タイ風つくねの記事で語りすぎているので割愛するが、ここになければあきらめがつく。

最近は店員のお兄さんが私の顔を把握しているようで、私がちょっと何かを探していると、何を探してるの?と親切に話しかけてきてくれるようになった。

糸状の唐辛子を探していると伝えると、数秒考えたのち、

「こんな細いのはないけど、これならあるよ」と。

見せてくれたのは、冷蔵ケースに入っている普通の生唐辛子。

「ああ、これじゃ全然違うよね…残念」とつぶやくと、

「これ、自分で切ったらこうなるんじゃない?」と半ば冗談で提案する店員さん。

・・・いやいや、こんな細くは切れないっしょー、ムリムリ!!!と、その場を切り上げたのだが、その後店内回遊中、「明日から3週間夏季休暇です」とのおしらせを発見してしまった私。

パリのお店は、デパートや大きなチェーン店でもない限り、だいたいが8月に2、3週間の休暇をとる。ご多分にもれず、こちらも3週間休むらしい。だから賞味期限切れのカレールーを半額で売り捌いていたのか!なんてこった!

そうなると、激しく心残りかつ心揺さぶられるのは、あの生唐辛子の存在。

外出禁止中に心得た、「なければつくればいいのよ」の精神を忘れてしまったのか、私!!

あの中華街には他にもトラウマがあるから行きたくないし、これは今買わないと、3週間ずっと糸唐辛子を想いながら枕をぬらすことになる…と、思い切って買ってみることにした。

しない後悔をするよりは、する後悔をしたほうがいい。

店員のお兄さんに、やっぱり自分で作ることにした!ありがとう、よいバカンスを!と告げて、お店をあとにした。


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こちらが購入した生唐辛子


家に帰って、レッツ大人の自由研究

さて、買ってみたはいいものの、本当に自作できるのかな・・・。

おそるおそる「糸唐辛子 自家製」で検索してみたら、あった。

冒頭にさっそく、

「市販と同じクオリティの糸唐辛子」を家庭で自作するのははっきり言って不可能

って書かれてるよ(笑)

でもやると決めたので、やるしかないし、こう言われると逆に気が楽だ。
のほほんと開き直って、キッチンにむかう。


まずは、唐辛子のヘタをとり、慎重に切り込みをいれて身を開いていく。

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中にはワタとタネが詰まっているので、包丁の先やくりぬき器などを駆使して綺麗に取り出す。

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ここからが本番。かぎりなく細くなるように、頑張って切る。

よく切れる包丁がポイントらしいので、釜浅商店で購入したもっともよく切れる庖丁を用意。大・中サイズで名入れもしてもらった宝物のひとつ。

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カッターと定規がいいって書いてあったけど、この庖丁を信じて、ひたすら切る。

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集中して、全部切った。

均一には切れないけど、水分が飛べば細くなるんじゃないか、という期待。
それにしてもめちゃくちゃ肩が凝った。

次に、電子レンジにいれて、水分をとばす。

って、あれっ・・・焦げた・・・。

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電子レンジという文明の利器は強力だ。慎重にやらないとあっという間にこげる。

一度に全部やってしまおうかと思ったけれど、私の性格上、絶対焦がすにちがいない。そう危惧した私は、小分けにして電子レンジにかけることにしていた。

30ウン年も私という人間と付き合っていると、さすが大抵のことはわかってくる。ありがとう、小分けにした2分前の私。


さて、気を取り直して、慎重に残りの唐辛子を乾かしていく。
今度のはうまく行った模様。

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全部できたら、まとめてさらに自然乾燥。

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右下で乾燥させ中なのは、北でとってきたローズマリーとローリエ


そのまま2、3日放置したら、完成!

なかなかいいんじゃないの?なんだかいびつだけど、味のある仕上がり。

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こちらの自家製糸唐辛子は、パリの深酒系飲み友Aちゃんのおうちに持参した、野菜たっぷりイワシの南蛮漬けにてお披露目。
移動中に水分を吸ってしまったので別添で持っていけばよかったと後悔したが、自家製にしてはまあまあの出来ではなかろうか。

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涙なしには語れない、作業後のこと

こうして、全てのことがハッピーに済んだように思えるが、うっかりものの私のことだ。そうは問屋が卸さない。

今回の一連の作業、なんの躊躇もなく素手で全て行ったのだが、私はそれをものすごい勢いで後悔をすることになった。

もうこれだけで、賢い読者のみなさんはすでにお気づきになっているかもしれない。そう、唐辛子って、俗にいう「刺激物」なのだ…。

クリエイション当日、作業中は全く気づかなかったのだけど、作業後少しして、

あれ?なんか熱い

私の手はもともと生傷が絶えないのだが、あちらこちらにしみるうえに、時間が経つにつれてもう意味がわからないくらい、とにかく熱い。

これはまさかのカプサイシンかああああ!
手だけエンドレススーパーサイヤ人状態。


これには本気で泣いた。
Otto氏がうざがるくらい泣いた。

夜になってもカプサイシンは消えることなく、シャワーを浴びてもなにをしてもダメ。むしろシャワー中に他の部位まで熱さを感じて、さらなる危機感を覚えたのでさっさと切り上げた。

結局、寝るときも保冷剤をにぎりしめながらベッドに入らざるをえず。

別の意味で枕をぬらすことになってしまったのは、ここだけのお話。


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刺激物の取り扱いには、気をつけなさいよ

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