エルメとラデュレの融合〜マイ・ピスタチオマカロン奮闘記
「挫折を知らない人間は、成長しない」とはよく言ったものだが、挫折とつぎはぎだらけの我が人生において、「マカロン」に関してはちょっと出だしから違っていた。
初めてつくったラデュレレシピのマカロン。メレンゲが立たないハプニングはあったものの、スーパーヒーローOtto氏の活躍により見事に挽回。
マカロナージュもしなければ乾燥をきちんとさせたかも覚えていないくらいなのに、最初からそこそこうまくできてしまったのである。今思うと奇跡でしかない。
その後、マイバースデーに作った鏡餅風マカロンもそこそこ上手にできたこともあり、「なに、マカロンってめっちゃ難しいってよくいうけど、全然そんなことないじゃーん!」と舐め腐っていたのだ。
でもこの調子にのった態度が、今回泣きをみることになることを、この時の私はまだ知らない。
新緑のピスタチオ・ペーストで、なにつくろ?
昨日書いたこの記事で作った、ピスタチオペースト。
1kg50ユーロ以上するピスタチオを仕入れてせっかく作ったこのペースト。グリーンなお菓子を作りたくてうずうずしているわけだが、まず何が作りたいってそれはやっぱりマカロンなわけで。
西海岸の大相撲ウォッチャーきこぺんアロハさんに提出する、大相撲春場所マカロン色当て選手権用に用意しようとの目論みもある。
そこで今日は2日間にわたることになったマイ・マカロン活動、勝手に略して「マ活」の様子をお届けしようと思う。長いうえ備忘録的なところもあるので、スイーツオタ的な方以外は適当に読み飛ばしていただけるとこれ幸い。
マ活1日目。まずは、ガナッシュ
ピエール・エルメのレシピをもとに作ったピスタチオペーストなので、ガナッシュもエルメっぽくいきたい。エルメレシピでピスタチオマカロンを作っている人のブログから、ガナッシュだけ参照させていただく。
材料は至ってシンプル。
・生クリーム:200g
・ホワイトチョコレート:100g
・ピスタチオペースト:22.5g
・Amandes amères : 数滴
沸騰させた生クリームにピスタチオペーストを加えて混ぜたものを、刻んで湯煎にかけて溶かしたホワイトチョコレートの中に3回に分けて加え、絶え間なく10分くらい混ぜる。Amandes amèresを数滴加えたらバットなどに流し込み粗熱がとれたらラップをして冷蔵庫へ。楽ちん。
次。コックを、つくろう
マカロンのコックは、いつも通りラデュレの分量比・フレンチメレンゲで行きたい。
・卵白:60g(+5g)
・グラニュー糖:70g
・アーモンドプードル:92g
・粉糖:83g
・着色剤
アーモンドプードルと粉糖を合わせてフープロでガーッとする。
さらにふるって限りなくサラサラ状にする。
メレンゲをつくる。最初に卵白のみで泡立てたら、グラニュー糖を2回に分けていれて、しっかりしたメレンゲを作る。
ここにさきほど粉類を加えて5g卵白を加えつつ、さっくり混ぜる。色をつけて、マカロナージュっぽいことをしてみる。
マカロンパットに絞り出して、乾燥させてみる。
このあとピスタチオを刻んだものを上にのせ、オーブンへ。確か160度くらいで13分くらい焼いた気がする。
1回目のコック、完成
ピエはできているけれども、割れてるし焦げている。
ちなみにこの1回目、桜色もつくってみよーと思って半分はピンクに着色して作ってみたのだけど、見事に焦がして大失敗!
食べられなくはないので、Otto氏のおやつにと空き瓶に入れておいたところ、どうやらヌテラをぬって朝ごはんとかおやつに食べてくれているっぽい。我ながらいい伴侶をもったものだ。
1回目、反省会
あれー、何がだめだったのかなと、ようやくyoutubeなどを見始めた。
今考えると遅すぎる。
これっぽくは作っているんだけど、どうやら原因はマカロナージュとオーブンの焼きだな。なんだか悔しいし、アーモンドプードルもまだあるので、もう一回作ってみることにする。
本当はラデュレ配合にこだわりたいところだけど、味の比較もしてみたいのでちょっと浮気して、上の動画の分量で作ってみることにした。卵白に対してグラニュー糖が71%の配合になる以外は卵白比同量。
今回はA4サイズの紙にサークルを書いて天板にのせ、その上にオーブンシートをのせたものでも絞り出してみる。うちのシルパット、天板からはみ出てしまうんだよなー。小さいサイズが欲しい。
表面が乾燥したら、半分にピスタチオを撒いて焼く。今回は焦がさないように注意。
あれれれれれ!?
ピスタチオ重すぎた??割れてるのが多数だし、なんだかめっちゃ膨らんでるんですけど。
生焼けも多数。。
マカロンシートは形はそろうんだけど、はがす時に形が崩れたり、火の通りが悪いので生か焦がすかの見極めが非常に難しい気がする。
かろうじて表面の割れがすくないものをかき集めたのがこちら。というかマカロンシートで作ったやつはほぼ全滅だった。
表面がきれいにできたやつでもね、ピエができてないっすよぉ!!
生地がゆるめだったので、マカロナージュしすぎたかな。
1日目のマ活の産物が、こちらです。
この無惨なコックたちの姿を目の前にして、天から聞こえるBGM。
マカロン魂に火を付けろ。
完全にスイッチが入った私は、マカロン狂ユイじょりへと変貌を遂げる。
翌日は徹底的にマ活に取り組むことにした。
その日は夜な夜な、日本とフランスのマカロン記事を読み、youtubeも見て、何がいけなかったのか原因追求をするとともにマカロンについてお勉強。
それまでフレンチメレンゲ・イタリアンメレンゲ・スイスメレンゲの違いも知らなければ、卵白の温度や状態の必須ポイントも、マカロナージュのやり方も、乾燥のさせ方も、オーブンの焼きのポイントも丸ごと何にも知らずに勘だけでやっていた私は、大いに反省することになる。知れば知るほど奥深いマカロンの世界にどっぷりハマってしまった。
そしてマ活の大先輩、府中のスイーツおじさまの記事も最初から見返す。
いつも安定して素晴らしいマカロンを作っているイメージだけど、実はこんな記事もあった。
天才だと思っていたおいたんも、何度も研究されて、苦難を乗り越えていたんだなと知り、思わず感極まるとともに100パーセント勇気。もう頑張るしかない。逃げちゃダメだ、ここ乗り越えないとダメだ、と自らを奮い立たせる。
マ活2日目、スタート
マカロンに取り憑かれた女の朝は早い。
開店間もないスーパーへ赴き、砂糖もまだあるのにあえて買ってきた。IHも調味料もすべて移動させ、マカロンのために作業スペースも確保。今日の私は本気だ。
そして最終的に目指すところは、こう定めた。
「ラデュレの分量比、フレンチメレンゲで美しいマカロンを安定的に作る」。
というのも、前日、Otto氏にラデュレ分量とyoutubeの分量で作ったコックで味の比較をしてもらったら、「ラデュレの方がgoûtがあって美味しい」と言っていたから。アーモンドパウダーの分量比が高いからかな。
今日は、今後安定的に作るために、せめてコツをつかみたい。成功体験がほしい。
3回目のコック、スタート
ノートに分量と使う色素、メレンゲの砂糖を入れるタイミング、時間、オーブンの温度と焼き時間など細かく記録してから、スタート。まるで究極のスープの配合を研究するラーメン屋さんの気分だ。
着色するタイミングも、今まで適当に粉を入れてからやっていたけれど、どうやらメレンゲの段階で色つけしておいたほうがいいとの情報。
ピスタチオペーストでも参考にしたこのサイトに、「着色剤はリキッドではなくパウダーを使ったほうがよい」と書いてあったので、Otto氏所属のパウダーを使う。確かに水分入ると何かが崩れそうな気はする。
ちないにOtto氏所属パウダーの色名、その名も「Vert Pistache(ピスタチオ・グリーン)」。まじでなんでも持っているうちの氏。
ピスタチオグリーンメレンゲに、フープロ→ザル→粉振るいで念入りにサラサラさせた粉類を加える。
マカロナージュをして、オーブンシートをしいた天板に絞る。ちょっと生地が硬い気がする。マカロナージュが足りなかったのかも。そしてなんだか色が若草色だな・・・。
15分くらい放っておいたらきちんと乾燥はした。半分にピスタチオをのせて、途中で向きを変えながら140度でトータル13分。
最初高温でその後下げるやり方もあるけれど、フランスのマカロンyoutuberの方々は一定温度で作っている方が多かった。オーブンはフランス仕様なのでこちらを参考に。
ピエはちゃんとできた。でもやっぱりピスタチオのせると割れるな。粒が大きすぎるのかな。あと色、焼いたら明度が上がったきはするけど、個人的には黄みのつよいグリーンより、ミントグリーンみたいな色にしてみたい。
焼き具合はよさそう!
反省点を生かして、いざ4回目
前回の反省。マカロナージュもそうだけどメレンゲにもあるのかもと思い、そういえば最初に奇跡の成功を遂げたときのことを思い出した。
あのときは最初ちがうアタッチメントで泡立てたあと、Otto氏がこのメレンゲ用のアタッチメントでごおおっとメレンゲにしたら成功したのだ。
さらに、色々なサイトで、最初はハンドミキサーを低速で泡立てていくと言っていた。先ほどのこのレシピでも、Robotの泡立て機能で最初は7分ほどかけてじっくり泡立てている。
ということで今回は、最初アタッチメントを変えてちゃんととグラニュー糖を溶かし、最後にアタッチメントを変えて高速で泡立ててみることにしたところ、時間はかかったけれど、一応ちゃんとメレンゲは立った。
また、調色に関しては、前回の黄みよりグリーンよりも青みに寄せたいので、青と黄色の着色パウダーを調合してグリーンを作ってみる。理想の色味ができた!
このあと粉類を加えてマカロナージュをしてみたものの・・・色がアーモンドプードルの黄色に引っ張られてしまう。かつメレンゲの状態が粉をふるっているうちにへたってきてしまって、マカロナージュを何度くりかえしやっても全然リボン状にならない(涙)
卵白を少し追加してさらにマカロナージュしてみる。が、すこしゆるくなったもののyoutubeでみるような理想的なリボンにはほど遠く。泣きそうになりながら絞りだす。
ピスタチオはさらに細かく砕いた。
はい、案の定失敗〜!
ピエもできていなければ、膨らんでもいなければ、表面はしわしわ。原因は明らかにメレンゲだな。変な欲を出さなければよかった。
執念の5回目
なみだーの〜、リクエースト〜、最後の〜、リクエーースト〜
今度こそ・・・!
最初からメレンゲ用のアタッチメントを使い、グラニュー糖は1分ごとに3回に分けて加え、5分ほどで綺麗に角が立つ。
その後、粉類を混ぜ合わせてから、青のみで調色したら、綺麗なミントグリーンっぽくなった。マカロナージュも、今回はイイ感じにリボン状。これだこれ!この感じ。
つ、ついに・・・!
140度で13分、ちょっと焼き色がついてしまっているけど、ようやくピエが出て、ちゃんとふくらんで、表面が割れていない綺麗なコックができた。涙のリクエストしてよかった。
なお、半量はマカロンシートで作って同じく140度で13分でやったら、もれなく下が生焼け。下火だけでもう一度焼いたら若干焦げた。やはりシートを使う場合は更なる研究が必要なことはわかった。
2日間にわたる、コックの進化をご覧ください。
優等生のみを並べてみた模様がこちら。
4回目がちょっとあれだけど、左から右に一応改善している。
そうこうしているうちに、アメリカ西海岸より、冒頭に述べた大相撲春場所マカロン色当て選手権のたよりが届いた。どうやらグリーンは正解だったようだ!
優勝ハッピー。
狂った甲斐があったというものだ。
ようやく、ガナッシュのお目見え
コックだけだとピスタチオの味のかけらもしないので、ガナッシュをしぼりだしていく。
やっぱりOtto氏所属の「ピスタチオグリーン」は本当にピスタチオの色なんだなあと思う。
並べてみたら、いろんなグリーンがあってどのグリーンにも対応できそうだ。
2日間で、コックは多分100枚以上焼いたけど、あれば食べるスイーツ狂がいるうえに、今回は私も朝ごはん、昼晩デザートと食べているのあっという間になくなりそうだ。
5回目にしてようやく壁を超えてコツはつかめたような気がするので、忘れないうちにもう一度作りたいなと思いつつ、さすがにOtto氏から「来月中旬以降にしてくれ」と釘をさされた。ま、作れば食べるんだろうから気にしなーい。
…ということで、これが、マカロンに取り憑かれたマカロン狂・ユイじょりによるピスタチオ・マカロン奮闘記だ。5千字こえちゃったYo!!
俺にもちょうだいYeah!あげないYo!
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