酒処ユイじょり、女将の苦悩〜注文の多いお客へのtofu料理
先週土曜日の夜、パリのすみっこでひっそりと開店した、酒処ユイじょり。
このときのテーマは「お豆腐」だったので、「半年ぶりに食べたいtofuを使ったおしながき」を用意した。よって、女将的メインは揚げ出し豆腐だ。
このときのお客(もれなくOtto氏)の反応。詳しくは書かなかったのだけど、揚げ出し豆腐は一口かじった後、しれっと私のお皿によこしてその後目もくれず。
一方で、ひたすら自分が大好きすぎるお好み焼きを、ほんのひとかけら私が食べた以外、2枚分全部ひとりで平らげていた。
事前のヒアリングでは、tofuは好きだっていってたのに・・・。
どうしてイヤなの、tofu?
なにがお気に召しませんの?と尋ねたら、お茶を濁された。
ただ私が推察するに、揚げ豆腐についていた衣の中身を「コレハナンダ?」と尋ねてきていたから、衣が若干gluant(ねばねば)していたのが嫌だったのではないか、と。
フランスの方は、氏に限らず、ねばねばしているものをあまり好まない傾向があると思う。納豆とか、おもちとか。
そうはいいつつも、うちのOtto氏はみたらし団子とか甘味系の餅は好きなのになあ。アナタの線引きがわからないよ。。
そんなことをコメントで嘆いたら、フランス人をよく心得ている、酒処ユイじょりエアVIPの@ケイチェルおいたんから有益なコメントが。
豆腐の衣に餡がかかってるのがよくなかったのかなあ。カリッとした揚げ豆腐にとろみのないタレならどうなんだろう。
なるほど、なるほど。衣に加えて餡も問題か、それは大いにアリ。私あんかけ大好きなんだけどなあ・・・。
こうなってくると、なんとしてもお客のこころをつかむtofu料理を作りたくなる、酒処の女将根性。
揚げがダメなら焼くか煮るか。ないしは他のものと混ぜてみるのはどうだろう?
・・・ああまったく、野菜嫌いの子供にいかにして野菜を食べさせるか考えてるみたいじゃないか!!ぶつぶつ(心の声)
土曜日に開封して半分余っている、ハウス食品製かたさミディアムのtofu。早く使わないと悪くなってしまうので、今宵も酒処ユイじょり、開店といきますか。
tofuを食べてもらうための、本日のおしながき
・つきだしとして、豆腐ステーキ
・豆腐ハンバーグ、えのきの餡掛けとともに
・だし巻きたまご、だし90ccバージョン
・カブとにんじん、きゅうりの浅漬け
・定番、チーズ香るお好み焼き
いやはやなんとも、土曜日と代わり映えしないメニュー。
もし豆腐料理がまたお気に召さなかった場合、また私が全部食べることになってしまう。それはそれで別に構わないのだけど、今日の目的はお客のOtto氏に豆腐料理を食べてもらうことなので、2品作ってリスクを分散することに。
まずは、ケイチェルおいたんのアドバイスを受けて、カリッと豆腐を揚げ焼きにし、伝家の宝刀てりやきソースを絡めた豆腐ステーキを、つきだしとして小皿で提供。
もう1品は、某韓国系スーパーに夕方立ち寄ったところ、鶏のひき肉が珍しく挽きたてだったので思いついた、豆腐ハンバーグ。これなら豆腐臭はそんなにしないし形も変わるので、受け入れられるにちがいない。
そしてこの豆腐ハンバーグ。ただ焼いてこれまた照り焼き風味のソースをからめるでもいいのだけど、それだとステーキとかぶる。ハンバーグに衣はないし、これにあんかけなら受け入れられるのでは??というポジティブ予想で、私は賭けにでることにした。Otto氏の好物Enokiをいれておけば、なおのこと魅力アップだ。
一方で、もし両方ともお気に召さずとも、氏の最愛ジャパニーズフード、お好み焼き(我が家の通称Oko)さえあればお腹が満たされるはずだ。第一、今日もOkoを作るよって言ったらめちゃくちゃ喜んでたし。
さあ、クッキング、スタート
戦略的なお献立が仕上がったところで、今日もお料理開始といきますか。
ちなみに浅漬けは、火曜日の買い出しに備えて野菜消費のため、前日から漬けてあった。にんじん、きゅうり、カブを適当な大きさに切って、軽く塩もみして、塩昆布と塩とともにジップロックに入れておくだけ。
0、まずは豆腐の水切り。200gちょっと残っているので、6等分にし、2切れはステーキ、残り4切れは豆腐ハンバーグに使おう。キッチンペーパーなどでくるんで上から重石をのせて水切りをする。
今日こそ重石をのせた写真を、と思って撮ったはずが、どうしてこうもブレているのか、もはやブレの達人の域に達しつつある。その都度写真を確認すればいい話なのだけど。。
1、今日もまず、お好み焼きから。大きな1枚にするとこちらに集中されがちなので、今日は翌日のお弁当に入れることも考えて、お好み焼き粉100g(通常サイズ2枚分)で、小さめに5枚ほど焼く。
均等に丸くするのが苦手なので、セルクル型に登場してもらうことにした。スプーン3杯くらいずつ生地をいれて、形をととのえる。
豚の薄切りとチーズをのせて、焼く。
はい、あっという間に完成。焼き上がったら、例のごとく、オーブンにいれて保温しておく。
2、豆腐ハンバーグのタネをつくる。本当は食感出しでれんこんを入れたいのだけど、入手できなかった。材料は適当に、こんな感じ。
・豆腐:約130gくらい
・鶏ひき肉:150g
・にんじん:小1個をみじん切りに。
・シブレット(あさつき近似):3本くらいを細かく刻む。
・小麦粉:大さじ1
・パン粉:大さじ1
・砂糖:大さじ1/2
・ほんだし:小さじ1/2
・にんにくパウダー:気持ち程度
・オリーブオイル:大さじ1/2
・塩胡椒:パラパラ程度
すべての材料をボウルにいれて、よくまぜるだけ。見た目おからのようだ。
これを、フライパンで両面こんがり焼きあげる。
いい色に焼き上がってきたぞお。こちらも焼き上がったら、バットにいれて保温オーブンへ。
だし巻き、豆腐ステーキに入る前に、ギャンブルに出たえのきあんかけを作っておこう。フランスでは、しいたけは割とメジャーになってきたけれど、えのきやエリンギ、しめじなどはアジア系スーパーでないと見つからない。
Otto氏はなぜか知らないけどえのきが大好きらしいので、たまに買ってくると、喜ぶ。
あんかけは、水150ccくらいに、白だし小さじ2、砂糖、酒、しょうゆを大さじ1程度ずつ入れて、フライパンか鍋にえのきと共にいれ、とろみを出す。
4、だし巻き道を極めるために、今日もだし巻きをつくろう。インスパイアされているのが、こちら。
土曜日はみんな大好き土井先生バージョンで、卵3個、だし75ccに挑戦。自分で言うのもなんだけど、序の口というか楽勝だった(にやり)。
「じゅわーの世界が変わる。byケイチェルおいたん」という、卵3個、だし90ccのだし巻きに本日はチャレンジ。甘めが好きだけど、砂糖をいれると若干色が黒くなるので、今日は控えめに。砂糖大さじ1/2と塩小さじ1/4を加えた。
気合をいれて、巻いていく。確かに75ccより巻きづらいけど、お弁当の卵焼きキャリアが長い私にとって、そこまで難しくない。
なかなかいい感じ。75ccよりよさげじゃないの。
お皿にのせるときに若干崩れかかったけど、だし巻きっぽくなった。
切り口はこんな感じ。ふっくらしてそう。待ちきれず、試しにうすく一切れいただいてみたけど、すごい!本当にじゅわーの世界が変わった!!!
5、喜びもつかのま、すっかり忘れそうになった2切れの豆腐をさくっと豆腐ステーキに。小麦粉をはたいて、きちんと油をひいたフライパンでこんがり焼く。焼き目がついたらてりやきソースをからめて終了。
私用に、大根おろしと生姜をかるくのせる。
6、全ての材料はそろったので、すばやく盛り付けて食卓へ。
お好み焼きはソースとマヨと青のり、鰹節をのせる。
豆腐ハンバーグは、大根おろしとシブレットをのせて、あんかけをまわりに流し込む。
今宵もいらっしゃい、酒処ユイじょり
夜な夜なパリのすみっこで、今日も飲兵衛女将がお出迎え。
まずはつきだし。小皿の豆腐ステーキを。
お客のOtto氏に、「これから召し上がって!!」とお願いしたら、フランス人らしく匂いを嗅いで、ひとくちでパクリ。
まー、ちょっと焦げてるけど、pas mal(not bad)
うちのフランス人の「悪くない」は、ちょーおいしくはないけど、まずまずってとこかな、くらいの斜め上45度からのコメントなので、これはまあ合格点だな。よし。
次、お好み焼きに手を伸ばそうとしたところを、ちょっと待ったー!!
豆腐ハンバーグを取り分けて差し上げると、ひとくちでいったー!
このひと、いつもポテチとかも3枚くらい同時に食べるんだけど、アゴ外れないんだろうか。。
うん、これは、c'est bon
こちらはどうやらお気に召したらしい。
私もいただいたところ、たいへん美味しい。れんこんで食感出しが叶わなかったものの、にんじんが変わりにその役目を果たしてくれた。ちょっとコリコリして、でも生の味はせず。これは定番化したいくらいの出来だ!
肝心のソースも一緒に召し上がれと促すと、おもむろにあんかけにお箸をつけたOtto氏は一言、
これ、卵入ってないよな??
そういって、餡を避けながらえのきをちゅるちゅると召し上がる。
ああ、これか。
なるほど、嫌な理由がわかった。彼は、このあんかけのとろとろに、卵が入っていると思っていたのだ。
私がいつも、生卵をTKG(卵かけごはん)にして食べるところを、まるで獣でもみるかのような蔑む視線でみつめている、半熟でさえ一切受け付けないOtto氏。
たしかに、生卵の白身のとろぉんとした感じが、このあんかけの感じに、似ている。
このトロミは違いますよ。
fécule de pomme de terre(じゃがいものでんぷん、片栗粉) です!
と反論するも、いまいち信じられない様子で、えのきだけちゅるちゅると食べていた。まったく、注文の多いお客ですこと。
一方で、味じゃなくて見た目や食感、ひいては見た目や食感から想像するもので好き嫌いが生まれるのね・・・と、ある意味勉強になった、8月最終日の夜。
まあ、tofuは食べてもらえたので、よかったことにしますか!
パリの朝はすっかり肌寒く、真っ裸から卒業した今朝の愛犬
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