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毎日超短話2024

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超短い話を毎日1話ずつ。2024年版
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記事一覧

毎日超短話784「号砲」

毎日超短話784「号砲」

どこかで号砲が鳴る音で目覚めた。きっと運動会とかの。と思ってる横で、妻が「ありがとう、わたしのために」と寝言を言った。ああそうか、妻が生まれた日を祝福しているのか、おめでとう。

妻のエッセイ(2021)↓

一年前の超短話↓

さすがほぼ雨の降らない妻の誕生日。今年も晴天です、おめでとう!

毎日超短話783「真夜中のギター」

毎日超短話783「真夜中のギター」

信号機が青に変わるとき、目が見えない人のための音楽が流れる。それを弾いているのは、青信号の人。ギターを抱えてぽろぽろ鳴らす。赤信号の人は、実はハーモニカを吹いている。秋だなと思う、真夜中。

妻の詩(2018)↓

一年前の超短話↓

毎日超短話782「残り2枚」

毎日超短話782「残り2枚」

残り2枚になったカレンダーの、12月が寒そうにしている。とりあえず破ったばかりの10月を、11月の下に重ねておくことにする。

一年前の超短期話↓

毎日超短話781「ダイジェスト」

毎日超短話781「ダイジェスト」

テレビを付けたら、今日の人生のダイジェストが流れていた。告白してフラれる場面がスロー再生されている。ここでリズムが狂いましたねー、と解説に言われる。わかってるわ! と思わず口にしたとき、スマホにメッセージが届く。まだ今日は終わってねえぞ!

一年前の超短話↓

毎日超短話780「時計屋」

毎日超短話780「時計屋」

時計屋さんの壁時計が一つ一つ、違う時間を示していて、今が何時なのかわからない。もしかしたら何時でもなくて、何時でもあるのかも。なんて思っていると、お腹が鳴った。そういう時間みたい。

一年前の超短話↓

毎日超短話779「感謝」

毎日超短話779「感謝」

「ありがとう」という言葉がまだなめらかに発音できない息子が、「かんしゃ」という言葉を覚えた。「かんしゃ」は、なめらかに言える。感謝、感謝。息子の言葉がソファーに転がっている。それを集めて、ベランダから飛ばす。曇り空から、光が差し込む。「かんしゃ、かんしゃ」と息子は、瞳をキラキラとさせている。

妻のエッセイ(2017)↓

一年前の超短話↓

毎日超短話778「予定日」

毎日超短話778「予定日」

産まれてくる予定日が、ぼくより一週間も早いはずだった妻が、「ちょっと様子を見てきて」と言うので、ぼくは妻より先に産まれることにした。それから6日間、地球を過ごしていると、妻は「大丈夫そう?」と天から聞いてきた。面白いことしかなかったので、「大丈夫だよ」とぼくは笑った。そういうわけで、妻は6日だけ、年下になったのだ。

一年前の超短話↓

今年も妻より先に、誕生日を迎えました。
6日だけ年上です。

毎日超短話777「友だち」

毎日超短話777「友だち」

友だちだからって、分かり合えないことがあってもいいと思う。友だちとケンカした日に、そう言ってくれた人とは、その日、友だちになった。投票所にその彼の名前がある。別の人の名前を書いたけれど、彼とはずっと友だちだ。

一年前の超短話↓

毎日超短話776「2秒の恋」

毎日超短話776「2秒の恋」

いま、2秒だけ、隣の席の子と入れ替わった。隣の席の子はその2秒の間、誰かに恋をしていた。僕じゃない誰かに。

*

いま、2秒だけ、隣の席の子と入れ替わった。隣の席の子はその2秒の間、私に恋をしていた。せつないくらいの、恋を。

一年前の超短話↓

毎日超短話775「鬱」

毎日超短話775「鬱」

草むらに転がっていったボールが見つからない。代わりに落ちてた「鬱」を拾って投げる。誰かが鬱を高く打ち上げると、落ちてこないで、どこかへ消えた。みんな、ずっと、空を見ていた。

一年前の超短話↓

毎日超短話774「龍とペガサス」

毎日超短話774「龍とペガサス」

友だちの飼っていた龍が空にいる。暴れ出す前に、ぼくの飼っているペガサスと、話を聞きに行くことにする。

一年前の超短話↓

毎日超短話773「神さまの結婚式」

毎日超短話773「神さまの結婚式」

将来は神さまになりたい、と言っていたタナカくんの結婚式に呼ばれている。タナカくんのとなりには、同級生だった神さんがいる。

「神さまになれて嬉しいです」と、タナカくんは涙を流した。神さんのこと、大好きだったもんね。

一年前の超短話↓

毎日超短話772「出世」

毎日超短話772「出世」

にいちゃん、おれ、スズキになったっぽい。と弟が言った。なにそれ? なんかカッコいいけど。と、まだブリのぼくは言う。

「出世したんだって、なんか知らんけど」
「そりゃ、おめでとう」
「でも、もう一回出世すると、ボラっていうのになるらしいよ」
「かっこ悪ぅ!」
「だよね、おれ、出世しなくていいや」
「そうだね」

ぼくはブリのまま、 弟を見守ろうと思ってる。

一年前の超短話↓

毎日超短話771「スモーク」

毎日超短話771「スモーク」

カフェのスモークのかかったガラス窓の向こうに、別れた人がいる。こちらは喫煙室で、あちらはオープンテラス。今ならスモークがかかっても見えるのに、なんであのときは見えなくなったんだろう。そう思いながら消したタバコの向こうで、別れた人は目配せをして、頷いた。

一年前の超短話↓