見出し画像

【#1-1】 遺伝 遺伝子、 DNAとは。

出だしからいきなり難しいことを書いてもアレなので、ちょっとした歴史も交えて話していこうと思います。

まず、なんで一発目の記事をこのテーマにしたかというと、ヒトの体および生き物の体は全て細胞という単位でできていて、その司令塔となるのが遺伝情報だからです。

ややこしいところもありますが、読み飛ばしてもいいでしょうし、ちょっとずつでも読んでもらえると幸いです。

では生き物の不思議な世界にご案内します!🐋

ヒトの体はあらゆるタイプの細胞からできています。例えば、筋肉は筋細胞、脳では脳細胞、神経も神経細胞と呼ばれる細胞です。

細胞は1655年、ロバート フック Robert Hookeにより発見され命名されました。ワイン瓶の先っぽについてるアレです。コルクを観察し、「おおおお!めっちゃ小部屋なってるやん!」って言って (←多分言ってないw)、「小部屋」という意味のcellと名付けたらしいです。
*ちなみにこのフックめっちゃすごい人で、呼吸とは肺に空気が出入りすること、動脈と静脈が違うこと、そして物理法則「フックの法則」を示した人です。すげええええええ!

細胞は生命を構成する単位として最小で、細胞の中での生体反応が、個体としての我々の活動を支えています。つまり、細胞の中で何が起きているのかを理解することで、日常に起こりうる体の変化や病気を理解することができるようになります。

細胞は動物の細胞と植物の細胞でやや構造が異なります。ヒトの話を進めたいので、ここでは動物細胞について説明をしていきます。

動物細胞は、細胞膜に囲まれた包です。この中には、と呼ばれる小さな粒が入っており、主に核と核以外の部分に分けられます。今回は核の中身についてのお話です。そして遺伝の話から、血液型の話まで話を広げていきたいと思います。細かいところは飛ばしても、雑学をフーンと読む感覚で進んでいきましょう!

1.DNA/染色体

厳密には、細胞膜も核を構成する膜(核膜)が二重膜だ、とかありますが、その辺は、はしょります。
核の中にはDNA(Deoxyribonucleic acid ; デオキシリボ核酸)と呼ばれる紐状の物質が入っています。
このDNAは、アデニン: A 、チミン: T、グアニン: G、シトシン: C というたった4つの分子がいろいろな順番で、たくさんつながっただけの物質です。
(この並びを「DNAの配列」と言います。)

DNAは紐が2本、らせん状にくっついて存在しています(二重螺旋構造)。この紐はダラダラと伸びきっていると小さな核の中に収まらないので、延長コードをまとめるように、ぎゅっと小さくまとめられて、核の中に納められています。このぎゅっとまとまった状態のDNAのことを、染色体と言います。

画像3
Fig.1 DNA

染色体はいくつかの種類に分けられていて、ヒトでは24種類の染色体が存在します。1〜22番目までは常染色体と呼ばれます。23、24番目は性染色体(それぞれX染色体、Y染色体)と呼ばれ、生物学的な雌雄を決める染色体です。

2.遺伝子

少しややこしい部分ではありますが、染色体はざっくり言えば24種類のUSBです。そして24種類のUSBはパパとママから1つずつもらうことになります。

まず常染色体は22番までパパとママから1つずつもらいます。性染色体はXが2つだとメス、XとYの組だとオス、という風になっていますので、ママ(XX)からはXしか受け取れません。パパ(XY)からはXかYどちらか一方を受け取ります。なので染色体の種類としては24種類ありますが、1人の人が持つ染色体の数としては46個あることになります。ヒトを構成するほぼすべての細胞はこの46個の染色体を核内に納めて持っています。

なぜ、USBで例えたかというと染色体の場合、USBのデータにあたるものはATGCの並び方で情報を書いていることになります。まさに、このデータのことを遺伝子と呼んでいます。

したがって、USBに該当するのが染色体やDNAと呼ばれるモノで、データが遺伝子ということになります。

画像4
Fig.2 染色体はUSBに例えられる

生き物の体は、このデータ(遺伝子)を設計図として動いているので、当然USBが破損するとデータに異常が起きます。一例を挙げると、UV(Ultra violet ; 紫外線)は非常に強力な光で、DNAの配列にダメージを与えます。
このように、UVなどによる遺伝子情報へのダメージは、設計図が狂うこととなりガンなどを引き起こします。発癌性のある物質も同様に、DNAの配列に入り込み異常をきたします。

ヒトの皮膚はある程度バリア機能を持っているので、すぐに癌になるということはないですが、やはり日焼け止めなどあるに越したことはないですよね!何より焼けるし、痛いし!笑

画像1
Fig.3 日焼け止めを有効に使おう

少し話は戻りますが、ママからはX染色体のみが、パパからはXかYの染色体がこどもに引き継がれます。これはもちろんコントロールできるモノではないですが、ヒトの場合、パパがどっちを渡すかによって子どもの性別が決まります。XXとなれば女の子、XYとなれば男の子です。

画像2
Fig.4 性別は性染色体によって決まる

この性染色体に異常もしくは親から子への分配に異変があるとさまざまな病気につながります。

例えば、オスの三毛猫はほとんど存在しないと言われていますが、何らかの原因で性染色体の分配に異変があり、通常のオス猫(XY)ではなく、XXYというXを余分に持った (トリソミーと言います) オス猫が生まれることでオスの三毛猫になる場合があります。
また常染色体の分配の変化で有名なのはダウン症です。21番目の染色体が1本多くなることがあり(トリソミー)、引き起こされる病気です。

ここまで遺伝子とは何か、DNAとは何かについてみてきました。
この後では遺伝において重要な考え方をお伝えします。

3.遺伝

「遺伝」を考える上でとても重要な考え方があります。それは獲得形質は遺伝しない。ということです。
簡単にいうと、遺伝子にデータとしてないものは遺伝しない、後から獲得したものは遺伝しないということです。

例えば、事故で腕を失っても、それが生まれてくる子どもに引き継がれることはないし、ある人がサッカーうまいからといって、生まれてくる子どもがサッカー上手いとは限らないということ。なぜなら努力によって後天的に獲得したものは遺伝子の情報としては載っていないからです。

筋トレや柔軟性に関しても、「センスあるなー」というのはあると思います。例えば筋肉の合成や柔軟性に関わるタンパク質がより多いとか少ないとか、遺伝的に決まっている可能性はあります。

ただ、努力をしてムキムキになったパパとの間に生まれた子どもが、何もせずにパパと同じくらいムキムキになることはまずあり得ません。

画像5
Fig.5 筋トレは個人の努力だ!

最後にもう一つ大事なこととして、体細胞ではなく、生殖細胞の情報が遺伝する。ということです。

体細胞とは皮膚の細胞や筋肉、内臓の細胞などのことを指します。生殖細胞とはヒトで言うと精子と卵(らん)のことを言います (配偶子とも言います)。これらもれっきとした細胞です。精子や卵にはパパママからの46本の染色体ではなく、次の世代に送る用の23本のみ入っています
この時に入っている性染色体(X or Y)によって、子どもの性別が決まります。受精後、受精卵としてトータル46個の染色体を持ち、胎児へと発達 (生物学的に正式には「発生」と言います)していきます。

つまり遺伝はこの生殖細胞(精子や卵)の中の染色体が司っていることになります。したがって、体細胞、いくら皮膚にガツンとUV当たってガンになっても、それだけでは子どもが皮膚癌を発症すると言うことにはなりませんが、生殖細胞に変異が生じると、変異が遺伝される可能性が大きくなります。

4.血液型の遺伝

ここまで、遺伝子の本体や、遺伝の仕方についてみてきました。ここで有名な血液型の遺伝について少しみてみましょう。

血液型は遺伝することで有名です。染色体の中に血液型を決める配列があって、パパ、ママがどんなタイプかによって、子どもの血液型が決まります。
血液型の遺伝にはABO式血液型Rh血液型があります。

まずはABO式血液型からみてみましょう!

ABO式血液型


A型(AAとAO)、B型(BBとBO)、AB型(ABのみ)、O型(OOのみ)
のように決まります。
AAやBOの意味について例を通してお話しします。

染色体は、パパとママから一つずつもらうといいました。
例えば
パパ:AAタイプのA型(パパのパパからA、パパのママからもAをもらった人)
ママ:BBタイプのB型(ママのパパからB、ママのママからもBをもらった人)

の場合、その子どもはどんな血液型になるでしょうか。

Fig.6 AAとBBから生まれる子どもの血液型は?



パパからAAのうちのどちらかのAをもらい、ママからはBBのうちのどちらかのBをもらうことになるので、どちらをもらってもパパからはA 、ママからはBをもらうことになり(AB)、子どもは必ずAB型になります。

では
パパ:AOタイプのA型
ママ:BOタイプのB型

ではどうでしょう。

Fig.7 AOとBOから生まれる子どもの血液型は?



パパからはAかO、ママからはBかOをもらう可能性があります。
この場合、子どもがもらう組み合わせは、AB(AB型)かAO(A型)かBO(B型)かOO(O型)の4種類のどれかになります。つまり何型の子どもが産まれるかわからない、ということになります。

ちなみにAOやBOのように違う2文字を持っている時、AやBのように性質として現れている方を顕性、Oのように遺伝子として持っているけれど性質として出ていない方を潜性と呼びます。
少し前までは優性、劣性と呼んでいましたが、特に身体的特徴が遺伝的に決まることが多く、この言い方は差別的であると言うことで廃止になりました。

O型は誰にでも血液をあげられる??

A型やB型の人はそれぞれの血液型以外を攻撃する抗体を体内に持っています。例えば、A型の人はB型血液を、B型の人はA型血液を外敵とみなします。この外敵認定には、A型血液がもつA型の旗、B型血液がもつB型の旗を目印に攻撃をします。(つまり血液型が不一致の際の拒絶反応です。)一方、O型血液は、旗を持っていないことを示す、数字の0という意味からO型と名付けられたように、敵認定できる旗を持っていません。そのため、A型やB型の人は「O型を持つことが許される血液型」として見ることができます。同様にAB型もO型血液の保有が許容される可能性があります。一方でO型の人はO型以外を敵とみなすので、A型やB型の血液を許容できないと考えることができます。これが緊急輸血の際、O型の血液型は誰にでも輸血できるが、誰からももらえない、と言われる所以です。

Rh血液型

Rh血液型は、ABO式の血液型とは異なる血液型として発見されました。
アカゲザル(Rhesus monkey)の血液の研究から見つかったことが名前の由来です。
Rh血液型では、とある因子を持っているタイプをRh+、持っていないタイプをRh-と表現します。ご存知の方も多いかもしれませんが、Rh-の方は割合的に少なく、日本人では200人に1人と言われています。そのため、Rh-の血液は輸血において特に貴重な血液となります。

Rh式血液型不適合妊娠

Rh-の母親がRh+の子どもを妊娠することを指します。
まずこの血液型不適合が及ぼす影響を説明しましょう。
Rh-のお母さんがRh+の第二子を妊娠した時、その第二子が重度の貧血を起こす可能性があります。

わかりやすくするため、Rh+は旗🚩を持っている、Rh-は旗を持っていないタイプ、と考えてください。Rh+の血液型の人は、自分の血液を攻撃するような抗体⚔️は持っていません。
この抗体は旗を目印にすると考えてください。
一方、Rh-の血液型の人もそもそも旗を持っていないので、攻撃するような抗体は持っていません。

問題は、Rh-の血液型の人の中に、Rh+の血液が入ってきた時です。この時、普段は抗体を作っていませんが、自分とは違う、旗を持ったタイプが入ってきたら、旗を目印にした抗体を作って攻撃します。

それを踏まえて、どういったことが起こるか考えてみましょう。

まず
母親:Rh-
第一子:Rh+

の場合、出産時に、血液を通して母親の中にRh+(🚩持ってる)が入ってしまいます。(出産時はどうしても出血を伴うため)

Fig.8 第一子出産時

この時、母親の体内では、Rh+(🚩)に対する抗体⚔️が作られます。それにより、母親の体内からはRh+(🚩)は排除されます。
しかし、敵(🚩)は排除できても、武器(⚔️)は、母親の血液中に残ったままになっています
これが最大の問題点です。
次に、Rh-の母親がRh+の第二子を妊娠した場合、どうなるでしょう?
胎盤を通して母親の血液中に残ったRh+に対する抗体(⚔️)がRh+(🚩)を持った第二子を攻撃してしまいます。
これにより、第二子は命に関わるほどの重度の貧血を起こしてしまうことがあります。

Fig.9 第二子出産時

この対症療法としては、母親に抗体を作らせないで済むような注射をするなどの方法があります。

血液型を把握しておくことは非常に重要なことだと感じる例です。

その他の遺伝

ここまで血液型の遺伝を見ましたが、ほかの遺伝も簡単に見てみましょう。
遺伝には様々な種類があって、X, Y 染色体(性染色体)による遺伝(一方の性にのみ引き起こされる遺伝)のことを限性遺伝と言います。特にX染色体に依存した遺伝のことは伴性遺伝と言います。

女性はXX, 男性はXYなので、一つのX染色体にダメージがあった時を考えると、女性の場合はもう一つのXでカバーできますが男性はできません。
性染色体の異常により引き起こされるものとしては赤緑色覚多様性血友病、筋ジストロフィーなどがあります。

他の遺伝様式としては、遅滞遺伝といって、祖父祖母世代の形質が孫世代を決めるものなんかもあります。

つらつら書いてきましたが、DNAはさまざまな生体反応の設計図であり、遺伝の本体です。#1-3では設計図をもとに作られるタンパク質の話をします。あらゆる生体反応がタンパク質により行われているので非常に重要なお話です。

ではでは。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?