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米国では多様性をめぐり経営陣を追及する株主、日本とは隔世の感

2022年6月10日にブルームバーグが報じたニュースで、セールスフォース米国本社の経営陣に対し、多様性への取り組みをもっと行うように求めた動きが株主の一部からあったことが伝えられていた。(日本では未訳)

それによると、セールスフォース米国本社の年次株主総会で、株主のうちのアクティビスト投資家のグループから、人種平等に向けた取り組みを強化するよう声が上がり、経営陣と対立する構図となった。アクティビスト株主側は、黒人・ヒスパニック系従業員の割合が少ないことを引き合いに、「人種平等監査の権限を同社従業員や外部市民権利団体、地域コミュニティにも与えて、チェックを働かせるように」と述べた。これに対し、経営側は「同社では現状でインクルーシブ施策を十分にやっている」として、決議案には反対に回っていた。結局はこの決議案へ賛同した株主の数は不足し、決議案は否決されることとなった。

こういうニュースを見ると、日本とは隔世の感がする。

以下、筆者要約

Salesforce Investors Reject Racial Audit in Activist Loss(セールスフォース経営陣への人種平等監査決議案は否決、アクティビスト投資家の敗北)

セールスフォースの株主が人種平等監査の決議案を否決したことは、アクティビスト投資家にとって敗北を喫する形となった。

決議案が同社経営陣に求めたのは、同社の人種平等の影響を独立して監査する権限を、同社従業員、外部市民権利団体、地域コミュニティにも与えることだった。だが年次株主総会で株主がこれを否決したことを、同社が発表した。決議案への具体的な賛同数は明かされていないが、最終的な賛同数は後日公開される。

同社経営陣は、「従業員の多様性比率を既に公開しており、人種正義に向けた取り組みが意義ある変化を起こす結果につながっている」と述べ、決議案への反対に回った。経営陣はまた、米国本社において、女性、性的少数者、退役軍人、障害者、黒人、ラテン系、先住民を含むグループからの従業員を50%とするという目標に達したことを述べた。

決議案の発案者は、「同社の非主流派グループの測定はあまりに大雑把で、また2015年以来において黒人やヒスパニック系の従業員の割合は目立って伸びてはいない」ことを根拠に挙げた。発案者はまた、2021年上旬に同社で有力な元従業員だった黒人女性2人が、「同社の社内文化は、外向けのイメージに対して大きく遅れたものだった」と述べたことが、決議案に向けた動きのはじまりだったことも、引き合いに出した。

2020年のブルームバーグの分析によると、セールスフォース社内で黒人とヒスパニック系が管理職や専門職に占める割合は米国のS&P100種企業のなかでも少数で遅れたグループにある。2021年には、同社で指導的地位にあったのは、人種別では70%が白人、性別では70%が男性だった。同社はまた、ハワイ固有の文化である「オハナカルチャー」をアイデンティティーとしているが、米国本社でハワイ系や太平洋諸島にルーツを持つ従業員は0.2%だった。

※記事に出てきた、2021年上旬に起きた黒人女性の告発は、米国ではニュースとなり、日本でも同年2月10日にTechCrunchから翻訳記事が出ていた。現在はリンク切れになっていたが、こちらに転載(件名:SALESFORCEの元マネジャーが同社内の「自覚なき差別」と不平等を告発)。それによると、セールスフォースでは米国において黒人はわずか3.4%であり、管理職の黒人はわずか2.3%であることを2020年11月のダイバーシティレポートが示している。

この時の告発者のCynthia Perryがリンクトインに投稿した内容も存在する。投稿には、4700を超えるリアクション、励ましのコメントが300近く寄せられ、81回シェアされた。

これらをアクティビスト投資家が問題視したことが、決議案発案の背景にあった。

最新の同社発表(2021年)では、従業員のうち黒人は4.8%、ヒスパニック系は5.3%。管理職になると黒人は3.4%、ヒスパニック系は3.0%。米国の人口における黒人の割合は12%、ヒスパニック系の割合は17%とされているのに対して少なく、社会の人種比率を反映したものになっていない、ということだ。

ちなみに、2021年の米国本社における障害者社員の割合は3.1%だった。米国には障害者の法定雇用率はない。米国では人口における障害者の割合は15%程度とされている。

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