柞刈湯葉
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柞刈湯葉(いすかり・ゆば)の自己紹介
柞刈湯葉は小説家です。SF小説を書くことで生計を立てている、現代ではわりと珍しい人間です。
「とりあえず著書を1冊読みたい」という方はこちらをどうぞ。SF短編集です。
お仕事のご依頼については別記事にまとめています。あわせてご覧ください。
略歴
福島県郡山市生まれ
大学で分子生物学を研究
2016年、『横浜駅SF』がカクヨムWeb小説コンテストSF部門大賞を受賞。カドカワBOOKSより
「今年は季節がおかしい」ってみんな毎年言ってる ◆ 水曜日の湯葉94[9/20-25]
秋である。夏アンチ過激派たる自分にとって秋は「夏でない」という点で最高の季節だ。これから地球の夏はもっと最悪になっていくから、相対的に秋の最高度が高まっていくに違いない。
彼岸花を見るのが好きで、毎年この時期になるとどこかしらに見に行く。「これが咲いたらもう暑くない」という勝利確定演出として好感度が持てるし、毒性にもかかわらず救荒作物として植えられた、という物語性にも惹かれるところがある。
川
タケノコが伸びるよりも、亀が歩むほうが速い ◆ 水曜日の湯葉93
「すべての道はローマに通ず」という言葉がある。僕はこれを古代ローマ帝国の繁栄を表す言葉だと思っていた。「イスファハーンは世界の半分」とか「ナポリを見てから死ね」とかそういうやつ。
ところが辞書を見たら、この言葉は「あらゆる物事はひとつの真理から発している」という格言として使われるらしい。帝国が滅びても文としての格好良さは残っているので、ローマと無関係な意味があと付されたんだろう。
となると「ナ
健康を濁らせると原稿になる ◆ 水曜日の湯葉92[9/6-12]
連載中の『幽霊』を読み返し、1話ごとの要約と書籍化時の改稿方針を書いていく。前々からやろうと思っていたのだがようやくチャージがたまった。改稿方針がまとまると「このとおりに改稿できればかなり面白い小説になりそうだ」と思えた。うむ。
連載はすでに1年にわたっており、その中には調子がいい時期と悪い時期がある。僕はもともと「原稿が書ける時間帯」というのがあって、しかもそれが定期的に変動する。戦闘中に弱点
やめろーっ、科学はバトルの道具じゃない ◆ 水曜日の湯葉91[8/30-9/5]
8月30日 水
夏休みが終わるので「反物質の小惑星が地球に飛来する」というSFを考える。字面だけでヤバさが伝わるのがいい。
単純にエネルギーを計算すると、1kgの反物質が地球大気に触れるだけでツァーリ・ボンバなみの大爆発になる。しかも通常の小惑星衝突と違って小さすぎるので、実際に落ちるまで観測できない。最初の一発がまったく予告なしで北極圏の無人地帯に落ちる。人的被害はないものの、さらに2発目が

※試聴版です。オリジナル版(15:42)はメンバーシップに加入すると視聴できます。
メンバーシップ向け音声コンテンツ。おもに福島県の名所紹介。
子供のリアリティ、大人のファンタジー ◆ 水曜日の湯葉90[8/23-29]
人生が敗北した。具体的にはリングフィットアドベンチャーを買った。つまり「自分はゲームなんざに頼らずとも、日頃の移動趣味でカロリーを消費できる」という幼少期より積み上げてきた自意識が、体重計の示す現実のまえに無惨に敗れ去ったのである。
まず感心したのは安いこと。コントローラーとソフト合わせて7500円。普通のゲームソフト並だ。そのせいで「これはゲームだ」という認識になって敗北感が緩和される。もっと
【小説】 紙飛行機のパイロット
「かみひこうきのパイロットになりたい」
クレヨンで画用紙に書き残したまま弟は死んだ。弟は7歳で僕は16歳だった。病院から持ち帰った遺品を確認し、輪ゴムで巻かれた絵を開いた瞬間、
「弟の夢を叶えてやる」
と、僕は決めた。
問題は「かみひこうきのパイロット」とは何なのか、ということだった。
弟はその人生の半分を、小児病棟のベッドで過ごした。飛行機なんて乗ったことがない。だから人が乗る飛行機を
インドは遠い、商売はもっと遠い ◆ 水曜日の湯葉89[8/16-22]
【新作おしらせ】
日経サイエンス10月号(8月25日発売)にて、新作短編「エンケラドゥス・プローブの憂鬱」を寄稿しました。地球外生命を探査しにきた無人探査機に搭載されたAIの一人称小説です。
8月16日 水
髪を切った。そしてスマホを見たら「バスの運賃箱にはインド人の毛が使われている」という記事がサジェストされていた。整理券と硬貨を仕分けるのにちょうどいい硬度の素材を求めたら人毛に至ったらし
小説家もベストアルバムを出したい ◆ 水曜日の湯葉88[8/9-15]
8月9日 水
商業短編が1本完成。無人の宇宙探査機に搭載されたAIの一人称小説である。人間以外の一人称はたいへん書きやすい。人間は全体的に何を考えているかわからないが、人間以外はおおむね想像がつく。実際に合っているかは確かめようがないが、「自分はそういうのが想像できる」という妙な確信がある。
もう少し分析すると、「なんの目的で作られたか」がわかる物体は「なにを考えているか」がおのずと想像できる
美味しい二番煎じの淹れ方 ◆ 水曜日の湯葉87[8/2-8]
「花火大会に行きたい」と思ったことがない。花火はわりと好きだが、あれは「演出」であって「目的」ではない、という位置づけが自分の中で固まっている。舞台で使われるスモークと同じである。「誰もいない舞台でスモークを2時間見続ける大会」があると聞いたら「世の中にはすごいマニアがいるんだな」と思う。それが僕の花火大会に対する印象である。
季節の風物詩を見に行く、という感覚がそもそも肌に合わない。季節なんて
善悪が存在すると仮定すると ◆ 水曜日の湯葉86[7/26-8/1]
【新作おしらせ】
『紙魚の手帖 Vol. 12』にて、新作短編「記憶人シィーの最後の記憶」を寄稿した。
この小説について言いたいことは、主人公「記憶人シィー」が僕の作ったキャラで一番気に入ってる、ということだ。他には特にない。
7月26日 水
月例の打合せ(別名:映画を語る会)。『君たちはどう生きるか』の感想とか、「米国では『バービー』が満席だから『オッペンハイマー』を見る人が多くて興行収入

※試聴版です。オリジナル版(14:51)はメンバーシップに加入すると視聴できます。
レモン市場:商品の売り手と買い手に情報格差が存在するため、安くて品質の悪い商品(レモン)ばかりが流通し、高くて品質の良い商品(ピーチ)が出回りにくくなる現象のこと。(野村證券・証券用語解説集より)
月1更新(目標)のメンゲンタンペンが今月は更新できません。ごめんなさい。
あと風邪っぽいので COVID-19 の抗原検査を受けました。陰性でした。「マイコプラズマとかも一応調べましたが普通の風邪っぽいですね」と言われて「普通の風邪って今もあるんだ!」と思いました。