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分離された汚のほうの部分 ◆ 水曜日の湯葉119[3/13-19]

3月13日 水

東京にある小平こだいら市ふれあい下水道館に行った。小学生が社会科見学で行くようなインフラ見学施設だが、ここは実際に使われている下水道管の中に入れるという他に類を見ない特徴があると聞いて西武線で県境をまたいで来た。下水に入るなんて脱獄囚とマリオだけだと思っていたが、人生は予想がつかない。

地下5階に水道管に入れるフロアがある。当たり前だがひどく臭い。公園やキャンプ場にある古めの公衆トイレに近い。微妙に温かいのもなんだか独特の嫌さがある。人間という動物の生活空間が家畜小屋よりも綺麗なのは「汚」の分離技術が発達しているからであり、分離された「汚」がここに流れこんでいる、と考えると納得の臭いである。

広いわりに水量が少ない。台風の雨水も流し切るキャパが要るので、平常時はこのくらいの余裕があって当然だが、「少ない水」という状況がなんだか汚らしさを強調させている気がする。コップの底にちょっと残った牛乳とか、プールサイドにちょっとある水たまりとか、なんであんなに汚く感じるんだろ。

他のフロアでは下水の浄化技術とか江戸時代の下水道解説が展示されており、下水中に含まれるツリガネムシがもっそもっそと細菌を食べている様子を顕微鏡で見せてもらえる。「微生物の繁殖」と言われると清潔なイメージがないが、冷静に考えると生物がいるなら有機物が分解されてCO₂に変わっていくわけだから、どちらかというと清潔寄りの現象が起きていることになる。
(アオコなどの光合成細菌がいる場合はこの例にあたらない)


少し前に『プリニウス』が完結したが、今度はジャンプ+で『テルマエ・ロマエ』の続編がはじまった。驚いたことにずっと同じことをやっている。ルシウスがちょっと日本語を覚えて平たい顔族とのコミュニケーションが円滑になった以外はだいたい一緒である。もともと1巻読むごとに「まだ面白いけど次巻でネタ切れるだろ」と思いながら最後まで面白かった漫画だが、間をあけて再開されるとあらためて「まだこの枠組みでやる気なのか!?」と思う。

考えてみると『テルマエ・ロマエ』って「現代日本の文化や習慣に外国人が驚く」といういかにも僕が嫌いそうな形式なのに、妙にすんなりと受け入れられる。作中で古代ローマ人にウケているのが「日本人ならではの心配り」みたいなやつではなく「珍しい外来文化の面白さ」である点と、現代日本で見たものを上手くローカライズするルシウスの技量が伝わるところが大きい。現代日本から古代ローマに転生した人がなんかする話だったら、もうちょっと拒否感を持っていたと思う。


3月14日 木

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