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SF作家の地球旅行記

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宇宙に行ったこともないSF作家・柞刈湯葉が地表を這いずり回って書いた旅行記です。 【書籍化しました】 書き下ろし2編を追加して2022年9月14日発売。電子版も同時発売。 ht… もっと読む
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記事一覧

マングローブ的な生存戦略 ― 奄美大島旅行記

2023年11月、格安航空のセールを使って奄美大島に行った。沖縄のちょい北にある島である。 「…

柞刈湯葉
3週間前
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二泊三日の島流し ― 八丈島旅行記

死刑の次に重い罰。現代日本では無期懲役だが、かつては流罪がそれだった。隠岐に流された後鳥…

柞刈湯葉
4か月前
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埼玉を海の徒歩圏にする 川口駅→葛西臨海公園30km歩行記録 

5月のある晴れた朝、埼玉県から海まで歩いてみることにした。 埼玉に引っ越して3年が過ぎ、そ…

柞刈湯葉
10か月前
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GW前に秩父に行った記憶がない

僕は小説家なので、世間的なゴールデンウィークとは縁がない。と言いたいがこれは嘘だ。世の編…

柞刈湯葉
1年前
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千葉県の鋸山が実写版マインクラフトだった

マインクラフトというゲームをご存知だろうか。最近は YouTube 実況者が雑談の肴にマイクラ実…

柞刈湯葉
2年前
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電車に乗ってチバニアンを見に行った

タイトルを見て「いや『チバニアン』は時代であって場所じゃないだろ。タイムスリップでもした…

柞刈湯葉
2年前
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日本国民は筑波山にどのような態度で向き合うべきか

筑波山を紹介するときに毎回言われるキャッチコピーが「西の富士、東の筑波」である。富士山を紹介するときは言わない。 「標高3桁の山が富士さんとタメ張れると思うなよ」という気もするが、江戸時代の浮世絵になんとなく描かれる山というと富士山と筑波山がやたらと多く、また百人一首に詠まれている東日本の山は富士山と筑波山だけなので、あながち並ぶ資格がないともいえない。 田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ(山部赤人) 筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞつもりて淵となりぬ

辛そうで辛くない少しも辛くないボルシチ - SF作家の地球旅行記 ウラジオストク…

(前回のあらすじ:レーニン像は今も立っている。) 極東ロシアの港湾都市・ウラジオストクの…

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柞刈湯葉
2年前
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2時間半で行けるヨーロッパに行けない2年間に捧ぐ - SF作家の地球旅行記 ウラジオスト…

旅行記を更新したいが旅行に行けないので、2018年に行ったロシア・ウラジオストク旅行を、記憶…

柞刈湯葉
2年前
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穏やかな夜に身を任せるな、老いても石油を燃やせ - SF作家の地球旅行記 相良油…

生活上の必要性から静岡県に行く用事が発生したので、ついでに相良油田に寄ることにした。文明…

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柞刈湯葉
3年前
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借りたバイクで走り出す - SF作家の地球旅行記 沖縄編(2)

車を貸し出す「レンタカー」が存在することは、どんなクルマ嫌いの過激派環境活動家でもご存知…

柞刈湯葉
4年前
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琉球の長い午後 - SF作家の地球旅行記 沖縄編(1)

「沖縄行くくらいなら、同じくらいの値段で海外行けるよ」 冬休み前の学食で、隣のテーブルに…

柞刈湯葉
4年前
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2410円払えば無料で電車に乗れる - SF作家の地球旅行記 18きっぷ編(2)

(前回のあらすじ:只見線は乗る人より撮る人が多い) 古来より「男子三日会わざれば刮目して…

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柞刈湯葉
4年前
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青春18きっぷで人生のレールを踏み外す - SF作家の地球旅行記 18きっぷ編(1)

世界は誤解で満ちている。奈良県に行かない奈良線、環状でない愛知環状鉄道線、港区にある品川駅、そして、青春18きっぷ。ネーミングのせいで「年齢制限がある」と勘違いされがちだが、年確もタスポも見せずに購入できる。青春してるかどうかの検査も無い。 この紛らわしい上に恥ずかしい名前は、おそらくJRから我々へのメッセージである。鈍行の旅が許されるのは金なし暇ありの若者だけで、まともな大人は特急券を買って新幹線に乗れ、という。まことにその通りである。だが私はとっくに「まともな大人」に至