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こだま、ひかり、のぞみ、明太子

新幹線のネーミングが好きだ。こだま、ひかり、のぞみ。音速より、光速。そこまでは何となくわかるが、それよりも速い新幹線をのぞみと名付けた方がいるという事実があるだけでこの世界を愛せる。望みは、希望は、想いは光よりも速い。それ自体がもはや希望的で、私はすごく好きだ。

速度を表す単語はさまざまあるが、きっと少しずつ増えて行ったものなような気がしている。生き物としてずっと移動をし続けていても自分の足しかなかった時代に比べたら速度の概念は相当拡張されたのではなかろうか。人類で初めて馬に乗った人は、一体どんな気持ちを持ったんだろうと思う。結局わからないのだが、風に溶けたような感覚だったんだろうかなんて思いを馳せてみる。

この世界で最も速いものを私は知らない。
けど、私の世界で最も速くなくなるものは知っている。明太子を乗せた炊き立て白ごはんである。

今日は明太子を食べますよという日は気合を入れてお米を炊く。蛇足だが我が家には炊飯器がないのでお米は無水鍋でガス火炊きなのだが、炊き立てのそれは最高。主役ではないにしても、舞台としては一流。パリ・オペラ座。

そんな炊き立てご飯を明太子と共に一口…あまりの美味しさに夢中で食べて、毎回気づいたら無くなってる。えっ…?と思わず口走ってしまう。自分でわからなくなるくらい、速い。
一口ごとに多幸感に酔いしれ、美味しい………と打ち震えるくらい感動している。その次もそのまた次も同じように味わっている、はず、なのだが、気がついたらお茶碗には何もないのだ。不思議だ。速すぎる。ネオ・楽しい時間はあっという間。

艶っ艶ぷりっぷりの薄紅色のハツハツの皮に包まれた粒々の写真を見るだけで気分が高まる。なぜこんなにもうつくしく、美味しい?わからない…明太子が美味しいというそれだけの出来事がこの世界にある。本当にうれしいと思う。

叡智の塊だとも思う。先日所用があって福岡に行ってたのだが、博多といえば明太子ということで帰りの空港で買って帰ったのだった。その時レジで店員さんに告げられたことは、「12時間以内に冷蔵庫に入れてください」以上。以上!ねえ、こんなに美味しくて繊細で、けど生々しくもあるものが、12時間以内に冷蔵庫に入れれば大丈夫なように作ってもらえてるのすごくない!?というか12時間以内には国内なら大抵何らかの冷蔵庫にアクセスできることもすごくない!?明太子のおいしさを発明されてからの技術改革の速さ、移動速度の速さ、冷蔵の速さ!あらゆる作り手の皆さん本当にありがとう!この世界の加速度が凄まじい!

速度の向上によって生まれた時間を使って、ああ、明太子を味わおうじゃないの。でも…やっぱり思いより速く食べ終わってしまう。明太子に追いつける日なんて、だけど来なくていい。不思議な速度でこれからも、魅了してほしい。


明太子(with炊き立てご飯)、大好き。

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