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【幕間】南相馬市探訪記

 いつも『モンゴル周遊記』を読んでくださっている方々、ありがとうございます!
 初めてこの記事を見てくださった方、はじめまして!

 現在は地元の北陸を転々と暮らしていますが、12月から北海道へ引っ越そうとしている…まさに"人生迷子"なユイです。

 モンゴルで馬との暮らしに興味を持ち、馬事文化が根付いているという福島県南相馬市で11月に移住体験をしてきました。
 冒険譚の完結も自己紹介もまだなくせに、諸事情により今回は急な近況報告とさせてください…
 現地で見て聞いて、感じた事をいつもの如く淡々と綴ります。


静けさと暖かさを感じた1日目

 『よりみち』に到着し、オリエンテーションや自己紹介タイム。

大学生とテーブルを囲む


 相馬野馬追の公式Xを運営しているという方から、早速神事としての野馬追や裏話を聞く事ができた。
 実際に携わる人からの話や勇壮な映像に、ますます興味を惹かれた。
 


 その後暗くなる前に、道の駅『セデッテかしま』へ。

迫力ある像がお出迎え
見た事ないサイズのキノコ。こういう物あるから、道の駅って楽しいよね!



 さらに『みそ漬け処 香の蔵』へ移動。

奥には立派な展示スペースが

 帰り道東京でもう1泊する事を考えると荷物を増やせなかったが、どの味噌漬けもお酒やごはんが進む事間違いない美味しさで、買って帰りたかった!



 移動する車中からの景色には、正直驚いた。

初めて見る標識

 さすがに震災から10年以上が経過しているだけあって、地元の能登みたいな生々しい傷跡はない。
 けど、道の両脇に広がる土地には建物も農作の様子も多いとは言えず、広く立派な道路には信号機もない。
 風力発電の大きな風車や、太陽光パネルを敷き詰めた土地が所々で目立った。

 そんな"何もない"人のいない景色が、震災の影響を感じさせた

 北陸も同じく地方だし田舎仲間だという感覚で訪れたけど、地元では感じない、何か言葉にできないもの寂しさがあった。
 何もない景色は、モンゴルでも地元でも見慣れているはずなのに…
 自然豊かなただの田舎ではなく、自然の生命力さえも津波に奪われたような静けさ。不思議な感覚だった。



 夕食は定食屋『はなぞの』さんへ。
 魅力的なメニューが多くて迷ったけど、鯖の味噌煮にして大正解。

魚どころの北陸でも見た事ない大きさ!魚体の1/3はある

 美味しい!さすが、予約の取れない人気店というのは本当みたい。
 老若男女が集まっていて賑やかで、道中で感じた寂しい心が人の多さにホッとする。



 夕食を済ませ、このプログラム期間に滞在させていただく『お試しハウス』まで送ってもらって解散となった。

 お試しハウスは一般的な一軒家2棟。
 男女別に別れたから、2人では広すぎるくらい。

 宿泊者が自由に書き残す、交換ノートが置いてあった。

 到着後のオリエンテーションとかこのノートとか、来訪者が"町"をハブに繋がりを深める工夫が随所に見られて心が暖かくなる。
 みんなこの町が好きで、魅力を共有したいんだなって感じられた。


郷土への愛と誇りを感じた2日目

 電車で、スタッフが待つ駅まで移動。

町中に馬のシンボルがある
駅にあったメッセージ。エモい

 今日も昨日と同じスタッフの方2名が車で案内してくれるらしい。


 まずは、長年にわたって野馬追に携わっていらっしゃる方と面談させていただいた。

 祭りでは文化財級の甲冑を着用するが、維持管理する費用は個人負担なのだとか。
 それでも不平の一言もなく、当然の事として祭りに参加し、代々受け継ぐ甲冑が傷付けば修繕して使っているという。
 「自分にとって"相馬野馬追とは何か"なんて、自分でもわからないから質問しないでね」っておどけて笑う。

 この方もう侍じゃないか!
 由緒正しき武士の末裔!!

 今まで出会う外国人に「日本にはもう忍者も侍もいないんだよ」って言ってきたのは誤りでした、ごめんなさい。
 福島県にたくさんいらっしゃいました。
 みなさんぜひ会いに来てください!



 訪問は『よりみち』としても初めてだそうで緊張が伝わってきたが、「こんなに話してて大丈夫なのかな?」って言いながら野馬追の経験や道具についていっぱい話してくれたり、お茶目な所も見せてくれたりして、私はすっかりファンになってしまった。

 移住や祭りへの参加に歓迎する話ぶりが意外なところだった。
 よく聞くIターン話や地方の風土は「移住者は他所者」という印象が強かったから、このお方のオープンさといい移住者が短期間で中枢とも言えるX担当のポジションに就いてる事といい、良い意味で驚かされる事ばかり。


 厩舎の見学もさせていただいた。

5頭を飼育しているとの事

 初日の町紹介で「祭事中の環境に慣れさせるため、馬房に旗を吊るすお宅がある」と聞いていたが、本当に旗があった。

シュールで面白い

 「飼い方はプロじゃないし、昔から居るだけだから自己流だよ」とおっしゃるけど、どの馬にも悪癖は見られずリラックスした様子で、プロじゃないなら達人だと思った。


 昼食は『道の駅 南相馬』で。

名物の『野馬追カレー』

 震災前、とある食堂で出されていた物を復活させ提供しているらしい。

 


 東京からの移住者が事業を興したという『horse value』も訪問。

馬の力を借りて企業のチームワーク研修などしてるとの事

 Jpopが流れる厩舎は初めてで、新鮮だった。


 海にも行った。

サーフィンの聖地らしい

 たしかに聖地と呼ばれるだけあって良い波が来ていて、馬のモザイク画もあった。



 MYSH畑と農家民宿いちばん星を見学させてもらった後、買い出しへ。

いつ見ても珍妙な動物アルパカ


ストレートなネーミング好き

 『よりみち』スタッフのみなさんが、手作りの料理でホームパーティを開いてくれた。

辛い物NGのリクエストは棄却されていた笑

 企画の運営側と、こんなに身近な交流が持てるプログラムは初めてで楽しかった!
 何より、そんなプログラムを考えてくれたスタッフのみなさんの暖かさが嬉しかった。



最高のおもてなしを感じた3日目

 気づけば最終日。みんなで名残惜しく散歩してから、楽しみの1つだった乗馬体験。

まさかの外乗

 『坂本ふれあい牧場』がとんでもないホスピタリティでもてなしてくれた!

甲冑まで着せて、小道具も持たせて撮ってくれた

 馬も良い子!
 坂本さんご一家も親切で気さくで「来年は祭りの手伝い来てきて!」って笑顔で誘ってくれた。

 ここで過ごす時間を重ねる間にどんどん南相馬を好きになっていたけど、この一家にお邪魔して、もういよいよ大好きになった!!

 南相馬最高!!!



再訪を誓って

 あっという間に解散の時間になった。

最後に町歩きと昼食へ
駅への道中で

 『よりみち』のみなさんは時間に余裕が持てるギリギリまで、町を案内してくれた。

 運営スタッフの方々はじめ、町で出会った方はみんなにこやかで親切だった。

 すれ違って挨拶すれば返してくれるし、運転マナーも良い。
 みんな顔がキラキラしていたのが印象的だった。


 震災で一度は離れねばならなかったふるさと。そこへわざわざもう一度帰って来た人や魅力を感じて移り住んで来た人達が住んでいるわけだから、みんな"南相馬愛"で繋がっているのかな?


 昔からありそうなお店も改装したり新築したりしたようなお店も、年配の方も若い人もみんな足を引っ張り合ったりせず、それぞれの生き方でイキイキして見えた。

 どこの地域もこんな風だったら素敵だろうなぁ。

 地域への愛や伝統への誇りが無意識に心にあって、次の祭りを楽しみに馬との日常を楽しむ。
 そういう風に暮らすのも良いなぁ。



特急『ひたち』が迎えに来た
最後までご当地を味わおうと粘る

 今回の名目は"移住"だったけど、交換ノートの中身や『よりみち』スタッフさん達を見ていて、"定住"じゃない住み方もあるのかなって思えた。

 各々生きる道があるから常に同じ場所に居るのは難しくても「この町が好き」とか「来れば迎えてくれる人がいる」って気持ちで、離れても町を通して繋がっていられるような…
 定期的に帰って来たいという想いを馳せる、心寄せる土地が増えるって、なんか良い。

 南相馬市は私にとって、既にそんな町になった。だからまたきっと来る!

 雪が溶けたら北海道を出て、野馬追の時期に戻って来る。
 次はMYSHハウスに泊めてもらう。
 そして坂本家でおにぎりを握って、野馬追でみんなの勇姿を応援する!

 まだ別れたばかり、半年も先なのに、もう帰って来るのを楽しみにしている。

ご縁に感謝!

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