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“選抜方式の実験場”となったAO入試。一般選抜とは境界を超え相互に影響

百花繚乱の様相を呈してきた総合型選抜。
あたかも、“選抜方式の実験場”のごとく、大胆で斬新な選抜方法が次々に生み出されています。
 
そのような中、試験日程や、一般選抜や特別選抜の枠組みそのものを超えた、新たな動きも現れてきました。

2月、3月にも総合型選抜が実施される!?

文部科学省が示している現在のルールでは、総合型選抜は9月1日以降、学校推薦型選抜は11月1日以降に、募集・選考を行うこと、とされています。

そのため、総合型選抜や学校推薦型選抜は秋に行われ、そのあと、一般選抜が年明けの大学入学共通テストを皮切りにスタートする、というイメージをお持ちの方が多いのかもしれません。
ところが、実は、年明けの2月、3月にも総合型選抜を実施する大学が増えているのです。

つまり、その時期は一般選抜が真っ盛り。
一般選抜と総合型選抜が並行して行われる、というわけです。

たとえば、
立正大学(東京都)では、仏教学部、データサイエンス学部、地球環境科学部(環境システム学科)を募集対象とする総合評価型(後期)を2月下旬に出願期間を設け、3月に入ってから試験日を設定しています。


成蹊大学(東京都)の経済学部では、共通テストでの5科目の成績と、独自試験としてグループ討論を課す総合型選抜のM方式を3月に実施しています。
国公立大を志望する受験生にも併願しやすい設定となっています。

 

いずれも、一般選抜が本格化する共通テストがおわった後で出願ができるスケジュールになっています。

このほかにも、私立大学を中心に、この時期に総合型選抜を実施する大学が増えているようです。

ということは・・・
2月から3月にかけて、学科試験を中心とする一般選抜と、多面的評価の総合型選抜が並行して行われる、ということですので、受験生は、大学選択の最終段階で、自分自身の適性や好みで、一般選抜か総合型選抜か、より望ましい選択肢を選ぶことができるようになってきた、ということになります。
時期的な意味だけでなく、選抜枠の種別においても、受験機会がより広がった、というわけです。

こうなると、いよいよ、総合型選抜は、単に一般選抜を補完する選抜方式ではなく、実質的に、一般選抜と並び立つ主要な選抜枠になってきたと言っても過言ではないでしょう。


問われているのは、未来型の学ぶ力

一方、一般選抜と総合型選抜をクロスオーバーした取り組みも現れてきました。

産業能率大学(東京都)は、令和5年度経営学部マーケティング学科の総合型選抜においてMI(マーケティング・イニシアティブ)方式を導入。

この方式のユニークなところは、試験本番のレポート作成で、スマートフォン等の活用が可能なところです!
もちろん使える機能は検索機能のみで、外部の人とメール等の送受信等はできませんが、画期的な方式と言えます。

実は、この方式は、産業能率大学が一般選抜で実施した「未来構想方式」で採用したスマホ持ち込みを活用した入試方法なのです。

同方式で測る力は知識そのものではなく、知識や経験を「活用・応用する思考力」。社会の問題に対し、自身の知識や経験を活かして課題を発見・解決する力を測る、新時代の大学入試です。また、大学(学部)の入学選抜試験では全国初となる、スマートフォンやタブレットの試験会場持ち込みが可能な試験形態を採用。受験生自身の知識・経験に加え、インターネットで得られる多くの情報を選択・活用しながら、社会課題の解決策を考案する選抜方式となります。

産業能率大学ホームページ 2020年12月14日プレスリリースより抜粋

一般選抜の未来構想方式では、共通テストの結果も加味されて合否が決まりますが、総合型選抜のMI方式では、面接とこのレポート作成で合否が決まります。

検索機能だけでない

注目したいのは、スマホの使われ方です。
もっと言えば、受験生が、スマホを普段からどのように、“有効に”、“有意義に”、活用しているか、です。

もちろん、大学が提示する課題に対して、いかに的確にかつ迅速に必要な情報などを検索できるか、この能力は欠かせないものです。

しかし、スマホは単に検索をするためだけのツールではありません。
受験生が、普段からスマホを使って、興味・関心や問題意識をもって、いろいろなことを調べたり、情報を収集したり、大事なことや自分の考えを記録したりしておく。
そうした蓄積や履歴は、スマホの中にメモやブックマークとして残っていくことでしょう。

もちろん、大学から提示されたテーマやアドミッション・ポリシーについて、受験生がスマホで調べたり、研究したりしたことも、スマホのなかにストックされていくことになります。
そして、試験当日は、そうした日々の努力が、成果を発揮することになるわけです。


不正行為事件で脚光

産業能率大学では念願かなって、この新方式が導入された、とのことです。
ところが、たまたま、今年度の共通テストで電子機器類を使った不正行為が起きたこともあって、この未来構想方式はメディアでも大いに注目されることになってしまいました。

しかし、考えてみると、試験当日、辞書などの持ち込みを認める試験方式は、フランスの大学入学資格試験のバカロレアなどを想起させます。 

その意味で、産業能率大学が編み出したこの新しい手法は、一般選抜や特別選抜という枠組みを超えて、これからの社会で求められる新しいリテラシーを測る新時代のバカロレアなのかもしれません。

いずれにせよ、日本の大学入試のあり方に一石を投じたことは間違いなさそうです。

特別選抜探訪は次回がいよいよ最終回。
最後は国立大学の状況と取り組みを見てみたいと思います。

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