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注目のメタバースが切り拓く新しい大学像を探ります
大学のなかに宇宙が存在する!?
大学を意味するユニバーシティ( university )。
実は、そのもととなる単語が、ユニバース( universe )です。
みなさんご存知の通り、「宇宙」とか「世界」という意味でも
使われますね。
ですので、一見すると、university という単語のなかに universe が含まれている、つまり、大学のなかに宇宙が存在する と、含蓄のある、素敵な解釈が成り立ちますが、実は、語源的には少し違うようです。
universeは、一つを意味するuni- から派生していて、中世のボローニャ大学を発祥とするuniversityは、「教員や学生たちを一つにした共同体」というような意味合いだったのです。
そうした語源から、 university の創成期がどんなだったかを想像すると、
遠く離れたヨーロッパ各地から、教える人、学ぶ人が集い、一つになり、
そこから、大学が誕生した――
universityという単語を眺めていると、そのような原風景が目に浮かぶようですね。
「メタバース」は「ユニバース」と無縁ではない
さて、21世紀になると、ユニバース という言葉には新たな展開が
起こります。
「メタ」が、ユニバースの前に付いて、
「メタ」+「ユニバース」 ⇒ 「メタバース」
という新しい言葉が誕生したのです。
そう、皆さんがよくご存じのあのメタバースです!
★メタバース(metaverse)とは、
英語の「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語。もともとはSF作家ニール・スティーヴンスンが1992年に発表した作品『スノウ・クラッシュ』に登場する、架空の仮想空間サービスに付けられた名前だった。その後、テクノロジーの進化によってさまざまな仮想空間サービスが登場すると、それらの総称としても使われるようになった。
2000年代に一世を風靡したサービス「セカンドライフ」も、あるいは2020年に発売され、瞬く間に人気を博したNintendo Switch用ゲーム「あつまれ どうぶつの森」も、メタバースの一つであるとされている。
いまさら聞けない「メタバース」いま仮想空間サービスが注目される“3つの理由”より
そのメタバースが、あちこちのユニバーシティ=大学に新風を巻き起こしているのです。そこに、キャンパスの新たな可能性が生まれていると言っていいでしょう。
メタバースがキャンパスを超えたキャンパスを切り拓く、
つまり、「メタ・キャンパス」の誕生なのです。
では、メタバースに関する新たな取り組みを垣間見てみようと思います。
東大に「メタバース工学部」、誕生
2022年9月23日、東京大学(東京都)では、「メタバース工学部」の開講式が行われました。
インターネット上の仮想空間=メタバースなどのデジタル技術を駆使して、中高生や社会人向けに、大学の講義をもとにしたオンライン講座などを提供する取り組みを東京大学の工学部が始めることになり、その開講式がメタバース上で行われたのです。
この、メタバース工学部。
決して、法学部や医学部のような正規の学部を新たに設けるというわけではありません。
あくまで、インターネット上の仮想空間・メタバースを活用して、中高生や社会人向けの公開講義やイベントを開くという、いわば“オープン・ユニバーシティ”という仕組みなのです。
東京大学・染谷隆夫工学部長は、「メタバース工学部は、いわば工学部の拡張」と語り、その狙いについて、以下のとおり語っています。
「東大には様々な教育コンテンツがありますが、定員などいろいろな制約がある。性別や年齢、地域に関係なく、広く教育を提供して人材を育成したい。ならばみんなでメタバースという世界に引っ越して、桁違いの数の人々が学べる新しい教育空間を創り出そうとなったわけです。「ダイバーシティ&インクルージョン」がコンセプトです。」
「メタバースは積極的に活用していきますが、技術はあくまで手段です。より多くの人に学びを提供し、社会課題の解決に挑戦する人を増やすことが重要。AIなどが人間に代わる時代だからこそ、人間の幸せや夢をどう実現するか、多様な価値観を持つ人と一緒に学びながら考えてもらえたらうれしいです。」
アバターのもたらす意外な効果
ところで、このメタバース。
バーチャルリアリティ(VR)との違いは何かと考えると、メタバースには
「アバター」の存在があります。
参加者は、本人ではなく、バーチャル上の分身であるアバターになって、参加するのです。
同学部・雨宮智浩准教授は、このアバターがもたらす意外な効果について注目しています。
「アバターを使うことで自分の偏見や先入観を排除してさまざまな人たちとフラットに交流できるのがメタバースの特徴だ。さまざまな人と広く交流しながら、性別、国籍、年齢、立場を超越して、もう一度新しい人間関係を作り直すとか、そこで新しい文化や社会を知る機会になる」
さらに、雨宮准教授は、
「例えば歴史を教えるときに織田信長のアバターを作って授業を行うなど、授業内容に合わせてアバターを変えるときっと楽しいだろうし、教育効果が期待できる」と述べ、授業を行う側もアバターを活用することで、効果的な授業が行える」とも、述べています。
メタバースを使うことで、単に、仮想空間で学べるという利点だけでなく、いわば“別人”になりきって、交流できるということ。
ここに、特別な教育効果が生まれる、ということです。
大変興味深いですね。
東京大学のメタバース工学部の取り組みは、メディアでも大変注目されていますが、これは、あくまでも、正規の大学のカリキュラムや学位とは別のプログラムなのです。
では、メタバースが、実際の大学の授業や研究活動に使われている事例はあるのでしょうか?
次回はそのあたりもリサーチしてみましょう。
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