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【フィクション】心臓取引

一カ月前に妹を心臓病で亡くしてしまった。
僕はそのショックのせいか食べ物がまともに喉を通らない日々がしばらく続いた。
あんなに優しく兄想いで真面目な妹がいなくなってしまうなんて考えられなかったのだ。

そんなある日、街中でお金を1000万支払うと心臓を移植させて生き返らせることができるという広告を見つけた。
僕はその広告に書いてあった住所に行ってみることにした。
幸い、お金は両親の遺した1億円がある。
そのお金を使って1000万の心臓を買って妹に移植してもらう取引を行った。

またあの時の妹に会える、心が躍っていた。
無事移植手術が終わったとのことで、僕は妹に会いに行くことにした。

妹を見つけたのだが、何か様子が変だ。

歩き方が以前よりも大胆になったように感じる。

そして妹は僕をみつけると、
「えー、兄貴じゃん!久しぶりー!! あんたってそんな丸眼鏡かけてたっけぇ? 思ったよりも地味でウケるぅ。」

これが僕の知っている妹なのだろうか?

また一緒に暮らすようになってから一週間後、黒髪で僕と同じ眼鏡をかけていた妹だったのだが、髪を金髪にして、さらには色も柄も派手なシャツ、短めのスカート、おまけに一度もしなかったネイルアートまで。

昔の妹とは180度性格が変わってしまった。

「あんたって勉強ばっかりだよねー。もっと友達といろんな友達と遊んだりとかしないわけー? ま、そんな見た目じゃ友達とかいないか。」

昔は人を見下す妹ではなかった。
こんなことにお金使ってしまった自分が腹立たしくなってきた。





こうなったら妹ごと売ってしまうしかないのか。


#短編小説 #詩のようなもの #フィクション


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