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東大が超えられない「女子2割の壁」が生む「男クラ」の問題とは?

初めまして。#YourChoiceProjectでライターを務めている理科一類一年の たけ です。

 さて、この記事をご覧になっている方の中にはご存知の方もいるかもしれませんが、東京大学の女子学生の割合は約2割と非常に低いです。その中でも私の所属する「理科一類」の女子率の低さは際立っています。その割合はなんと、

8.4%[1]。

[1]代々木ゼミナール「東京大学-入試情報」より引用


 これは30人クラスがあったとすれば、女子は2、3人しかいないことになります。これでは女子の居場所がないですよね。そこで理科一類では女子を5、6人ほどまとめて一部のクラスに集中させるシステムを採用しています。その結果生じるのが、

男子しか存在しないクラス(通称男クラ)

です。男子しか入学を受け入れているわけではないのに不思議ですよね。そしてこの現状には問題点があります。それを今回、「男クラ」に所属する私自身が感じた違和感をもとに、3つ述べていきます。

目次

  • 「男クラ」はコミュ力を低下させる!?

  • 他の属性を尊重しづらい「男クラ」

  • ジェンダーバイアスの温床

  • まとめ

「男クラ」はコミュ力を低下させる!?

いきなりものすごい見出しですが、まずは男子しかいないコミュニティに属することと、コミュニケーション力との相関について、私の感想を述べます。

 「男クラ」の存在を問題視していることに対して、こういうことを思われる人もいるかもしれません。

 「別にクラスが男子だけでもよくない?」

 確かに、男子しかいなくても勉強自体はできます。卒業要件も満たせます。しかしそれは、大学の中で男子しかいないクラスがあっても問題ない、ということになるのでしょうか?

私は違うと思います。なぜなら、人生は大学を卒業した時点で終わるわけではないからです。我々は大学を卒業した後は社会人として生活することになります。卒業後の社会では男性しかいないということはなく、否が応でも女性と関わる機会が生じることでしょう。そうなったときに、男クラに安住したまま女性との人脈を持ったことのない状態で大学を出るとどうなるのでしょうか?

 おそらくは、彼らは女性とコミュニケーションをとる方法がわからず、いざこざが生じるでしょう。これだけだとよくわからないかもしれないので具体例を挙げると、何が人を不快にさせる発言(セクハラ発言、と言ってもいいかもしれませんが)になるのかは、男子だけがいる中で考えてもわからないです。次の章でも述べていますが、実際に、中高が男子校かつ男クラに所属している人が、勝手に知らない女子を槍玉にあげて不適切な発言をしてしまったケースを目撃したこともあります。

 このような状態は、将来属するコミュニティの生産性にも関わりますし、また人間関係も築きにくいことでしょう。

 「じゃあサークルで女子と関わればいいのではないか」という意見もあると思いますし、確かにそうなのですが、東大の学部生にとって一番重要となるコミュニティは基本的に自分のクラスです。そこに1つの性別の人しかいないという状況では、他の性別の人のことについて考え、その人たちとコミュニケーションを図ることがかなり難しくなります。

他の属性を尊重しづらい「男クラ」

日本では、大学を出たら社会人になります(大学院は今回大学と同一視しています。他の境界と比べると変化が少ないからです)。言い換えれば、我々が自分を成長させることに集中できる最後の機関が大学ということになります。

 さて、「男クラ」は1つの性別しかいないクラスのことですから、当然多様性が乏しくなりがちな環境です。そこで出会う人の属性・考えが似ていることは多々あります。そのような環境に居座ったまま大学生活を過ごしてしまうとどうなるでしょう?

 まず、男クラは生徒の属性が近くなりがちなので、自分の考えに異を唱える人間が少なくなります。特にジェンダーに関する意見ではなおさらです。そうすると、仮に自分の考え方が間違っていても、誰もその人を止めてくれないのです。

 まず私自身の周りで起きたことから述べましょう。以前私が高校の同期のうち何人かと昼食をともにしたとき(ちなみに私は男子校出身なので、彼らは長い間男子としか関わらなかったことになります)、同期の1人が女子2人と話をしていたことを槍玉にあげて、「お前二股か??」と彼を揶揄した男クラ所属の同期がいました。

私はこれを聞いて、「この人は女性を下に見ている」と憤りを感じました。人に対して「二股」なんて言葉を人に投げかけること自体失礼極まりないのですが、その弄りのためのいわば「道具」として会ったこともない女性を利用してしまっているのです。私は聞くに堪えずそこで立ち去ったのですが、もし彼がクラスで女子と関わることがあれば、そのような発言はしなかったのではないか、と思います。

 他にも、2023年の五月祭の模擬店で、わいせつな内容とも取れる店名や宣伝の仕方をしたクラスがTwitter(当時)上で批判を受けたことがあります。そのクラスも男クラでした。誰もその内容を「おかしい」と思わないのです。

 そしてこれは私の周りの経験にとどまらず、東大全体で起きていることが調査でも判明しています。2020年度「東京大学におけるダイバーシティに関する意識と実態調査」報告書の第9章には学生から自由記述で寄せられたセクハラの被害体験がまとめられているのですが、男クラが存在する「学部」の段階においても見るに耐えないものがありました。

例えば、「東大の男子学生の SNS、特に Twitter が酷すぎると思う。実際に目撃したのは、クラスの男子 が同じクラスの女子について彼女の身体的特徴を上げながら彼女と性行為したい、強姦したい と何度も呟いたりしていた。(中略)全体的に男子学生のモラルが 低いと感じた。」「女子学生をクラスでランク付けする等の行為が常態化しており、女子学生等のマイノリティ側 も多数派の論理・風潮を身につけて同調せざるを得ない傾向があると感じている。 」などです(東京大学, 2022)。文章から推測するにこれは男クラでの話ではないですが、男子が圧倒的に多い東大の環境の副産物と言っていいでしょう。

 このように、男クラではみんなが同じ考えを持つことがよくあるため、それと異なる考えや属性の人たちのことを想像できなくなってしまいがちです。自分の立場と違う人と交流する、という「成長」の機会が大きく減ってしまうのです。この章の最初に書いた通り、我々は大学を出ると社会人となります。この状況を放置していると、どうなるでしょうか?

私は、他の人のこと、特に違う性別の人のことを理解・尊重できない人間が量産されてしまうのではないか、と恐れています。日本のジェンダー平等を実現するためにも、その成長の場にジェンダーの多様性が必要となるのです。

ジェンダーバイアスの温床

最後の問題点として、これが自分が一番実感を伴って感じているものになります。

 「男クラ」は理科一類のなかでランダムに現れるようなのですが、私は特に女子が少ない中国語選択であったため、この男クラが6クラス連続で続くという状況でした。そして、東大の必修授業は隣接する3クラス程度を1まとまりとして同じ授業を行うことが多いです。

…このシステムで私のクラスに何が起きたか、お気づきでしょうか?

 つまり、(少なくとも私の周りでは)男クラの人たちは男クラの人たちだけと授業を受けることがあり、「理系の学問を男子としか学ばない」状態になっていたのです。「男性は理系、女性は文系」「女性は数学ができない」といったジェンダーバイアスは皆さんも聞いたことがあるでしょう。このような言動がなくなっていくべきなのはいうまでもありません。

一方、理科一類で学ぶ理系の学問は、男クラの人間の目線だともっぱら男性によって行われているように見えてしまいます。誰も言葉にはしないのですが、この環境で勉強していると、無意識のうちに「理系の学問は男性のもの」というステレオタイプが根付いていきます。

 それは私自身も例外ではありません。私はなるべくこうしたバイアスを頭から取り除こうと努力していますが、それでも時々、理系の学問と男性を無意識に結びつけてしまいます。理科一類に所属する女子に会うと、内心「え?理系?」と驚いたことがありました。こうした学習環境が、社会から無くしていくべきであるはずのジェンダーバイアスを、むしろ再生産してしまっているのです。誰もがバイアスにとらわれることなく自由に暮らせる社会をなくすために、男クラの撤廃は避けて通れません。

まとめ

 今回、私が感じた「男クラ」の違和感を言語化してみたのですが、いかがでしょうか。個人の感想の域を出ていない部分もあったかと思いますが、一方で本当に問題として対処すべきであり、無視できない点もあったかと思います。

 男クラの中にいる私の声で、皆さんがますます東京大学、またはその他難関大学におけるジェンダー問題に関心を持っていただけたら幸いです。


出典

代々木ゼミナール「東京大学-入試情報」https://www.yozemi.ac.jp/nyushi/data/todai/todaijokyo5.html

2024/5/29アクセス


東京大学

「駒場キャンパス|キミの東大 高校生・受験生が東大をもっと知るためのサイト」

https://kimino.ct.u-tokyo.ac.jp/kotohajime/komaba-campus/

2023/12/27アクセス (サムネイル)


東京大学

「2020年度 「東京大学におけるダイバーシティ に関する意識と実態調査」報告書」

https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400180438.pdf

2024/5/21 アクセス p.197


 

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