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会社を辞めたから、夕方にひとり焼肉をした


昨日の17時過ぎ。

締切を控えていたライティングの仕事が、予定よりもかなり早くおわった。外を見ると、まだ明るい。



「焼肉を食べに行こう」と突然思った。近所に「ひとり焼肉専門店」がある。

ガラス張りの店内。外の明るさがよく見える。夜にもなっていない時間帯だったのに、店内はにぎわっていた。大学生と、スーツを着たお姉さんの間の席に案内される。


カルビ定食と、追加でネギダレを注文した。すぐに商品が運ばれる。目の前にある小さな網で、2枚ずつカルビを焼いていく。

仕切りのある一人用のカウンターは、せまいけどなんだか落ち着く。よく焼き派のわたしは、火力強めで長めに焼く。そこにいる全員が、焼き加減もペースも自分の好き勝手にできる。

タレを絡めて、ネギダレを乗せて、ごはんの上にバウンドさせてから食べる。


「なんて自由なんだろうか」と思った。

こんな時間に、思いつきで焼肉店に行けること。会社員のころには絶対に考えられなかった。



当時は、退勤が0時近くになることが何度もあった。そのころにはたいていのお店がしまっているし、外食しようという気持ちにもならない。

コンビニで売れ残っているおにぎりとお惣菜を買って、自宅へ直帰し、3分で食べる毎日。「夜ごはんをたべる」という感覚ではなく、空腹をまぎらわすためのルーティンみたいなものだった。

次の日には、昨日の夜になにを食べたか覚えていない。それくらい、日々の食事に対する熱量みたいなものが少しずつ減っていく。食べたいという欲求より、寝たい・休みたいという欲求のほうが圧倒的に強かった。



その後会社を辞めて、無職になり1年がたち、今年からフリーランスに。仕事がうまくいった瞬間があると「ご褒美においしいものを食べにいきたいな」と思うようになってきた。

食欲と時間のタイミングがぴったりあったのが、昨日だったんだと思う。

まだ明るくてあたたかい時間だった。夕日を浴びながら好き勝手にカルビを焼いている、あの瞬間がなんだかすごく自由で幸せで。明日もあさっても、来年も、この日のことを覚えているかもしれない。


好きな時間に、好きなものを食べに行ける。オプションのネギダレを、躊躇なく頼める。

この生活を守りたいから、いまの仕事を大切にがんばっていこうと決めた。

またね。



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