市内RPG 23辛口カレーパンさん
ぼくらレベル9。戦士、勇者、魔法使い、僧侶のパーティーは平岡パン工場の3階を探索している。
2階で、あんパンが変化したあんパンくんを倒し、エスカレーターで3階に上がってきた。
3階は、黄色のフロアだった。絨毯も黄色。壁紙も黄色。カーテンも黄色。
「こんどは黄色か」戦士ヤスが言った。
「黄色。バナナ、カレー、、、、」
魔法使いのヒラが言ったとき、戦士ヤスが持っている紙袋が、ぐにゃぐにゃと動いた。
「またか」
ヤスは紙袋を放り投げた。
紙袋には1階で買ったあんパンとメロンパンとカレーパンが入っているはずだ。
「オレ様をカレーパンさんと知ってのことかーーーーーーーー」
紙袋から転がり落ちたカレーパンがむくむくと人型になりながら叫んでいる。
「今度は、カレーパン!!」僧侶のカナが身構えた。
「カレーパンさんと言えーーーーー。目上の人に礼儀も知らんのかー。躾がなってなーーい。幼稚園からやり直せーーーー」
結構口がたつ。
「こうなったら、やるしかない!」ヤスが突っ込んだ。
カレーパンさんはそれを身体全体で受け止めて、跳ね返した。
「やっつけてやるとは何事だーーー。お相手願えますかと尋ねるのが普通だろうーがー。言葉遣いが悪ーーい。口を洗って出直してこーーい」
「あいつ、なかなかやるぞ」ヤスは体勢を立て直して言った。
「一言言えば十帰ってくるわ」
カナが、やれやれという表情をして言った。
「辛口だな」
ヒラがうなずきながら言った。
「ヒラ、水の呪文で」
ぼくはヒラに言った。
「オーケー。ミナツメタ」
「それは、、、」
ぼくらが気付いたときには遅かった。大きな波がカレーパンさんと、ぼくらを飲み込んだ。
カレーパンさんはふやけて小さくなって、元のカレーパンになり、動かなくなった。
「お前達、そんなに礼儀知らずでは、ろくなおとなになれないぞーーー」
最後まで辛口だった。
「ヒラ、全体呪文は気を付けてくれよー」ヤスがあきれ顔で言った。
ぼくらは、また、ずぶ濡れだ。
「写メして」カナが言った。
「経験値1500、1000円」の返信メール。
「レベル10は、まだだな」ヤスが言った。
「もうメロンパンしか残ってないよ」
ぼくは落ちている紙袋を拾った。
そのままにできないので、カレーパンも中に入れた。
「また、エスカレーターがあるわ。先を急ぎましょ。おなか、すいたわ」
カナが言った。
『関係勇者以外立入禁止』の看板が立っている。
ぼくらは、その横を通り抜けて、エスカレーターで4階にあがった。
(続く)
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