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市内RPG

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福井丘県子郡市。市役所発の魔王討伐に、高校生勇者がゆるーーく挑む。不定期連載中。
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#短編

市内RPG 11装備と4人目

翌日、1時。また、子郡駅に集合した。 「やっぱり休息は大事だねー」と魔法使いヒラ。 「力がみなぎるねー」と戦士ヤス。 「みんなレベル2だからねー」と勇者のぼくは言った。 「ところで、持って来た?」ヒラが尋ねた。 「一応、持って来たけど」 昨日、家に帰ったところで、ヒラからラインが来た。防具になりそうなものを持ってこいというのだ。 剣道部のヤスは防具一式を担いで来ていた。 「身に付けて」 「ここで?」 「そう。早く」 ヤスは服の上から面と胴、そして小手を身に付けた。 「T

市内RPG 14蛙とコンビニ

ピンクの帽子を被ったおじさんランナーは足を止めない。 ぼくら、つまり、勇者と戦士、魔法使い、僧侶の4人は何とかおじさんに追いついた。 「おじさん、おじさん、止まってよ」 ぼくらは走りながら話しかけた。おじさんは止まらない。ただ何かつぶやいている。小さい声だ。 ぼくらは伴走しながら耳を澄ました。 「魔王は蛙神社。魔王は蛙神社。魔王は、、、」 蛙神社。 蛙がたくさんいる神社。ここからそう遠くはない。小高い丘の上にあり、敷地の真ん中には小さな池がある。たくさんの蛙の置物

市内RPG 15決戦、蛙神社!

蛙神社に着くころには日が傾いていた。 蛙神社に飾られた風鈴の音は、蛙の鳴き声に少しずつ押されていくのが感じられる。 ぼくら勇者、戦士、魔法使い、僧侶パーティーは、蛙神社の鳥居をくぐり、石畳みを踏みしめながら奥に進んだ。 蛙が鳴いている。ゲコゲコ、ゲコゲコ。 竹林に挟まれた小道。右手に池があるらしい。蛙の鳴き声もそっちの方から聞こえてくる。 少し開けた場所にぼくらは出てきた。池も見える。太い木の柵で池は囲まれていて、「入るな、キケン」の看板が立てられている。 「どこ

市内RPG 16 蛙神社から出たカエル

ぼくら勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティーは子郡市の蛙神社で、青いウシガエルと戦っている。 小さな青い蛙にたくさんの蛙がくっついて、牛くらいの大きさの青いウシガエルになったのだ。 前足を振り回す。 噛みつく。 舌を伸ばす。 跳ねる。 青いウシガエルの攻撃に苦戦している。 僧侶のカナは武器の木魚を青いウシガエル呑まれてしまった。 「このクソ蛙」カナは黙って木魚を持ち出していたようで、怒り心頭だ。 カナの方が蛙よりもコワイかも。蛙、蛙、、、コワイ、、、これならどうだ?

市内RPG 17レベル8

蛙神社で青いウシガエルを倒したぼくらのパーティーは全員レベル8になった。 戦士ヤスは相変わらず呪文を覚えない。 勇者のぼくは、火の呪文アツッと回復呪文ナムーを覚えていた。 しかし、今回のレベルアップでは何も覚えなかった。こんなこともあるのだ。 魔法使いヒラは呪文がそろってきた。 火の呪文アツッと強化呪文メチャアツッ。 水の呪文ツメタ。 雷の呪文ビリー。 どれも攻撃魔法だ。しかもビリーは金縛りの効果も期待できる。 僧侶カナも呪文が増えた。 回復呪文ナムーとその全体呪文ナ

RPG 18勇者、横熊山遺跡へ

蛙神社の青いウシガエルを倒したぼくら勇者パーティーは、次の目的地、横熊山遺跡を目指す。 レベル8になり、自信もちょっとついてきた。 「蛙こわかったー」 お寺の娘の僧侶カナは首をすくめて言った。 「木魚が戻ってきてよかったね」 そんなカナに魔法使いヒラが言った。 「う○こ花火買っててよかったな」 戦士ヤスは自分の手柄のように言った。  さて、目指す横熊山遺跡。 横熊山遺跡は光沢にある小さな遺跡だ。 住宅地の真ん中にある。 遺跡とは、わからないくらい。 二師鉄電車の

市内RPG 19鳴いたアブラゼミ

レベル8のぼくら、勇者、戦士、魔法使い、僧侶の友だちパーティーは、横熊山遺跡で、ピンクのアブラゼミを見つけた。 そのピンクのアブラゼミが、目の前でデカくなっているのだ。 初め見たときでも十分デカかったのに、もう高さが2mくらいになった。  ピンクの巨大アブラゼミ。 「まおたをさばひらをかぱんにいけ」 と鳴くたびに大きくなっていったアブラゼミ。しかし、苦しそうだ。謎の呪文?巨大化の呪文? アブラゼミの目が青く光っている。身体はピンクなのに。 アブラゼミはぶーーーーん

市内RPG 20まおた?さばひら?

ぼくらレベル9の勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティーは、何とかけた巨大ピンクアブラゼミをやっつけた。 動かなくなったアブラゼミは、次第に小さくなっていった。 ぼくは、そのアブラゼミをつまみ上げて、手のひらに乗せた。 「まおたをさばひらをかぱんにいけ」 アブラゼミは小さな声で鳴いた。 「まおたをさばひらをかぱんにいけ?」 「デカくなる⁉︎」 さっきは、この鳴き声を出すたびに巨大になっていったのだ。戦士ヤスは不安そうな顔をした。 しかし、今度は変化はない。弱々しく鳴

市内RPG 21平岡パンに行け

横熊山遺跡で、巨大アブラゼミを倒したぼくら、勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティーはレベル9になった。 次の目的地は、小保駅そばにある平岡パン工場だ。 パン工場といっても古びた工場ではなく、カフェテラスのあるおしゃれな工場だ。ランチ時には、OLさんの姿も見られる。 ぼくらは二師鉄子郡駅に10時に集合した。 「ここからは1駅ね」僧侶のカナが言った。 「トベルーは使わないの?」魔法使いのヒラが言った。 レベル9でカナが覚えた空を飛べる呪文。 「あれはなかなかきついから

市内RPG 22あんパンくんとの戦い

ぼくら、レベル9。戦士、勇者、魔法使い、僧侶のパーティー。 今、魔王の手がかりを求めて、子郡市小保にある平岡パン工場にやって来た。 平岡パン工場、1階の奥の自動ドアをくぐり抜けて、進んでいる。 エスカレーターの前に看板がある。 『関係勇者以外立入禁止』 「オレたち、関係勇者だよな」戦士のヤスが振り向いて、そう言った。 みんな、うんうんとうなづいた。 エスカレータに乗って2階へ。 2階は小豆色のフロアーだった。絨毯も小豆色、壁紙も小豆色、カーテンも小豆色。こんな

市内RPG 23辛口カレーパンさん

ぼくらレベル9。戦士、勇者、魔法使い、僧侶のパーティーは平岡パン工場の3階を探索している。 2階で、あんパンが変化したあんパンくんを倒し、エスカレーターで3階に上がってきた。 3階は、黄色のフロアだった。絨毯も黄色。壁紙も黄色。カーテンも黄色。 「こんどは黄色か」戦士ヤスが言った。 「黄色。バナナ、カレー、、、、」 魔法使いのヒラが言ったとき、戦士ヤスが持っている紙袋が、ぐにゃぐにゃと動いた。 「またか」 ヤスは紙袋を放り投げた。 紙袋には1階で買ったあんパンとメロ

市内RPG 23メロンパンレディ現る

ぼくらレベル9。戦士、勇者、魔法使い、僧侶のパーティーは平岡パン工場の4階を探索している。 2階ではアンパンくんを倒し、3階では辛口カレーパンさんをやっつけて、エスカレーターで4階へやって来た。 4階は、一面黄緑色。絨毯も黄緑色。壁紙も黄緑色。カーテンも黄緑色。 「バッタか、河童が喜ぶな」 戦士ヤスが適当なことをつぶやいた。 「バッタですってーーーーーー。失礼なーーーーー」 「それ、また魔物になるんじゃない?」 僧侶のカナは心配しながら、ぼくが持っている紙袋を見た。

市内RPG 24酒店とポーション

ぼくらレベル9の勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティー。 平岡パン工場で、アンパンくん、辛口カレーパンさん、メロンパンレディを倒した。そこで、魔王はエオンの方に飛び去ったという情報を得た。 エオンショッピングセンター。 子郡市の大型ショッピングセンター。全国的な経営で有名なあのエオンだ。 あのエオンが子郡市にできるなんて夢みたいだ。建設時にはそんな声も聞かれた。売り場は1階のみ。土地が安かったのだろうか、馬鹿広い。店内には汽車ぽっぽが走っていて、小さい子や老人が利用で

市内RPG 26武ん防具コーナーにて

ぼくら、レベル9。戦士、勇者、僧侶、魔法使いのパーティーは、魔王を追って、エオンショッピングセンターに来ている。 そして、『武ん防具コーナー』で買い物の途中である。 いろいろ見て回って、残高とみんなの総意によって、購入する物を決めた。 買い物は、もちろん買い物アプリpaipai。魔物を倒したお金もここに貯まるしくみになっているのだ。 「ぜったい買ってほしい。買わないと、もう戦わない」 なんて言っていたのは、戦士ヤスだ。 戦士は呪文を覚えないから、装備品を買うことで