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市内RPG 24酒店とポーション

ぼくらレベル9の勇者、戦士、魔法使い、僧侶のパーティー。

平岡パン工場で、アンパンくん、辛口カレーパンさん、メロンパンレディを倒した。そこで、魔王はエオンの方に飛び去ったという情報を得た。

エオンショッピングセンター。

子郡市の大型ショッピングセンター。全国的な経営で有名なあのエオンだ。

あのエオンが子郡市にできるなんて夢みたいだ。建設時にはそんな声も聞かれた。売り場は1階のみ。土地が安かったのだろうか、馬鹿広い。店内には汽車ぽっぽが走っていて、小さい子や老人が利用できる。それに乗れば、歩かなくても隅から隅まで見回れるようになっている。

それにしても広い。

たくさんの店が入っていて、生活用品を揃えるならエオンだ。

しかし、大雨で2度沈んでいる。すり鉢状の土地に建設されていて、2本の川に挟まれているのだ。もう閉店するんじゃないかと心配したが、見事復活したのだ。店舗が撤退する中にも踏みとどまり、少しずつ元のような活気を取り戻しつつある。

平岡パン工場のメロンパンレディは、魔王らしき青い光がエオンショッピングセンターの方に飛んでいったという。

朝の10時に小保駅に待ち合わせ。平岡パン工場の最寄り駅だ。

エオンショッピングセンターまでは、徒歩20分くらい。

ぼくらは、東に向かって歩き出した。

10分ほど進むと、小保酒店という古めかしい看板が見えた。

「ここが小保酒店かー」魔法使いヒラが言った。

「おいしいアイスクリンが売ってるとこよね」僧侶カナも言った。

「ここにポーションがあるらしいぞ」戦士ヤスも続けた。

たしかに、のぼりが立っている。

『ポーションあります』

うーん、『氷あります』みたいな感じだ。

小保酒店は、小さな木造のお店だった。木のドアは立て付けが悪そうに見える。閉めたり開いたりが面倒なのか、開きっぱなしになっていた。店先には、いくつかの盆栽が並べられていた。店の裏手には、大きな蔵も見える。

「入ってみようぜ」ヤスが言った。

ぼくたちは、ヤスを先頭に薄暗い店内に入っていった。

店内はひんやりとしている。学校の教室くらいの広さに日本酒を中心にたくさんのお酒やおつまみが陳列されている。

「ぼくたち、未成年だけど怒られないかな」ヒラが心配している。

「だいじょうぶよ。アイスクリンも売ってるんだから」カナが言った。

店の奥に大きな冷蔵庫があって、たくさんのジュースやワインが冷やされている。左隅に『特価 ポーション安いよ』と貼り紙がしてあった。

「あった!」ヤスがドアを開くと、冷たい冷気がこぼれた。

ポーションは、小さい瓶に入っているようだった。

「オロロミンC」「チカラBB」「リボビタD」「マカ」など種類がいろいろある。

「全部買おうぜ」ヤスが言った。

「効力が違うから、考えて買わないと」
ヒラが『オロロミンC』を取り出した。

「これは、おろろろろろってならないポーション、つまりはスピードアップだね。」
ヒラは一つ一つポーションを手に取って、説明を読み始めた。

「『チカラBB』はパワーアップポーション」

「『リボビタD』は、Re:body、つまり状態回復系」

「『マカ』は、マホウカイフク」

「『薬汁(やくじる)』は薬草のドリンク」

「おえー、まずそー」ヤスが言った。

「良薬は口に苦しだからね」カナが言った。

「まとめて買えばおまけするよ」

いつの間にか、後ろにピンクのエプロンをつけたおじさんが立っていた。

「!!!」

ぼくらは声も出せなかった。

「どれも10個買えば、1つおまけできるよ」
おじさんは続けた。

「おじさん、ピンクのエプロンだぞ。カゲかな」ヒラが小さい声でぼくに言った。

市の魔王探索部、カゲ。これまでもぼくたちに魔王の情報をくれたのは、ピンクの帽子のランナーおじさん、ピンクのアブラゼミ、ピンクのリボンをした女の子、、、どれもピンクなのだ。

「おじさん、これください」

ぼくらは、とりあえずポーションを10個買って、1つおまけをもらった。

「おじさん、カゲですか」ヒラがおそるおそる聞いた。

「カゲ?知らんがな」おじさんは不機嫌な顔になって答えた。

ぼくらは、その顔にびびりながらお金を払った。

「カゲが、カゲって言うわけないよな」ヒラがカナに言った。

「そうよ、極秘任務なんだから。それにただのおじさんかもしれないし」

ぼくらは、いやな顔されないように急いでポーションをバッグに詰め込んだ。

「おい、これ」ポーションを詰めながらヤスがぼくをひじでつついた。

見ると、ポーションは11個ではなくて15個も入っていたのだ。

ぼくが、振り返っておじさんを見ると、おじさんは片目をつぶって、親指を立てた。

急いで、15個のポーションを持って、日差しの強い外に出た。

「やっぱりカゲだったみたいね」ヒラが言った。

「感謝しなくちゃね」カナも言った。

もう少し行けば、エオンショッピングセンターに着くはずだ。


これまではこちら。

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