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映画「四月物語」レビュー


四月物語

<監督>
岩井俊二

<出演>
松たか子
田辺誠一
など

<公開>
1998年3月14日

■紹介文

東京の大学に合格した卯月は、北海道からはるばる上京し、新生活を始める。
丁度あの年齢のあの時期にしか出せない、日々の質感と味わいを絶妙にとらえた作品。
劇的な展開などはなく映画は幕を閉じるが、それがかえって心に沁みることもあるのだということを教えてくれる。




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ここからネタバレを含むレビューです
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■配役

散々語られてきたことだが、冒頭のシーンにはやはり笑う。
北海道から上京する卯月(松たか子)を見送る面々が、松本白鸚(当時は松本幸四郎)、松本幸四郎(当時は市川染五郎)、藤間紀子、松本紀保と本物の家族なのだ。

岩井俊二氏は、ちょっとしたシーンでのキャスティングがうまい。
卯月が映画館で観ていた謎の時代劇に江口洋介、石井竜也、伊武雅刀が出ている。
ちなみに映画タイトルは「生きていた信長」(笑)
岩井俊二、江口洋介というとスワロウテイルを連想するので、岩井ファンからするとなおのこと嬉しくなる。

有名な役者をちょい役で出すのだ。
「えー! この人、こんな役でいいの?」という贅沢な使い方をしてくる。
三流監督の作品だったら、こんなちょい役で出るのはまず断っていただろう。

主演の松たか子もぴったりハマリ役だ。
というか出てくる人みんないい(笑)
無神経そうな同級生、憧れの先輩、変質者、引っ越し業者、サークルの先輩、隣の部屋の女性、みんなキャラが立っている。

■映像

クスっと笑えるコメディ要素がありながらも、岩井俊二ならではの印象派に通ずる美しさがある。
音楽や絵画に印象派があるように、映画でも印象派的な表現が可能であるということを教えてくれた。

画質はこれくらいがこの作品には丁度いい。
専門的な映像制作の知識を持ち合わせていないので、適切な語句の使い方なのかは分からないが、現代の映像技術なら、もっとクリアに、もっとくっきり、もっと明瞭度や奥行き感を持たせることも可能だろう。
しかし、物事はケースバイケースである。
それだと、この作品特有の淡い感じが出なくなってしまう。
少しぼやけたところがあるくらいがいいのだと思う。

■演出

劇中、多少わざとらしい演出がところどころに見られる。
観ていてこそばゆいような心地もするし、人によっては鼻につくと感じるかもしれない。
ここが岩井作品の好き嫌いの分かれる点の一つなのかもしれない。
この一種の気取りのようなものをどうとらえるか。
僕の場合は、これこそが岩井ワールドらしさであり、愛嬌の一つだと思っている。
この癖を排除したら、見やすくはなるだろうが、「らしさ」がなくなってしまうだろう。

■ロケ地

配役も素晴らしいけど、ロケ地の選択も素敵だ。
どれもこれもよくこんなところ探してきたなあというところばかり。

岩井俊二氏のファンの中にはロケ地巡りを楽しむ人もいるくらいだ。
それは単純に作品を愛しているからというのもあるが、ロケ地そのものが行ってみたくなる場所だからというのもあるのだろう。

個人的には国立市の大学通りが映るのが嬉しい。
あの道好きなんだよなあ。

■ストーリー

恋愛の話ではあるが、憧れの先輩と結ばれもしないし、大失恋もしないでこの映画は幕を閉じる。

本屋で先輩と会話を交わすことは、主人公にとって大きな出来事だが、大した事件は起こらない。
観る人によっては退屈に感じるかもしれないが、僕は「こういうのもいいじゃん派」だ。

物語に激しいアップダウンがなくても、この映画には惹きつけられる要素がある。

淡く美しく、そして、時々クスっと笑える。
それだけで十分だ。



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