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アメジストの魚。

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アメジストの魚のまとめです。 宜しければプロローグからどうぞ。
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#魚

アメジストの魚。6-2

アメジストの魚。6-2

―恋は盲目。―
茅尋は私が思っているよりもあっさりとその言葉を肯定した。自分から言った言葉なのに、肯定されたことに対して居場所のない不快感が熱を帯びる。

「ねぇ、茅尋。」

駄目、君だけは。
もう狡い私を捉えてしまったんだから、君だけはちゃんと私を見て。視て。お願い。

「一緒に、」
「嫌だよ。」
茅尋が言葉を遮る。
寄せては返す波の音が僅かな沈黙を作った。

「…まだ何も言ってないじゃん。」

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アメジストの魚5-3

アメジストの魚5-3

これが優しいおとぎ話だったなら、
ハッピーエンドが決まっているような物語なら。

…なんて。
そんな不毛な想像をしてやめた。
僕を信じると言った彼女の声は少しの痛みと優しさが混ざって、重ねた唇の冷たさがハッピーエンドなんて存在するわけがないと現実を突き付けている。

数回触れた唇がそっと離れる。

「キスって甘いんだね。」

そう言って少し目を伏せるようにしてはにかむ彼女はさっきまでの涙を忘れてし

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アメジストの魚5-2

アメジストの魚5-2

痛む心も濡れた手も、いっその事全部海に溶かしてしまえば楽になれるんだろうか。

愛する事も愛される事上手く出来ないまま、深海の底から揺らめく何かに縋りながら息をする。僕達はつくづく不器用にしか生きていけないだなと思った。

これが現実逃避にしかならない事はちゃんと分かっている。それでも、彼女が少しでも僕の手を受け止めてくれるのなら僕は最期まで君の為に生きていたい。そう願った。

「私、弱虫でだめだ

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アメジストの魚5-1

アメジストの魚5-1

苦しい、悲しいと叫ぶ彼女の透明な声が僕の胸を刺した。

無力なこの腕は、今はただ彼女が泡になってしまわないように抱きしめることしか出来なかった。

代替品の僕では君を救えないだろう。
心の中のもう一人の僕がそう言っている。
もしかしたら僕の想いは君の負担にしかならないかもしれない。

だから、これは傲慢なエゴで自己満だ。

「それでも僕は要の事が好きだよ」

「…駄目だよ、そんなの。」

「駄目な

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アメジストの魚4-2

アメジストの魚4-2

「茅尋。」
ぎゅっと掴まれた右手が少しだけ痛い。

「…」
何も言わず離れた手。
薄らと残った体温だけがそこにあった。

「ちゃんと話すね、私のこと。」
そう、ちゃんと話さなければいけない。
きっと私はまた彼を置いて行ってしまうから。

「もう気付いてると思うけど、私も同じ病気なの。」

「…いつから」

「茅尋に出会う前だから5年くらい前から、かな。」

きっともう会うことは出来ないであろう幼馴

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アメジストの魚4-1

アメジストの魚4-1

バレてしまった、それもよりによって茅尋に。

薬もちゃんと飲んだのに何でこのタイミングで発作なんか起こすんだろう、ついてない。本当に。

床に散らばった紫色の"ソレ"だってもう見られてしまったからどうやったって言い逃れは出来ないし。

嫌な沈黙が少し流れて、茅尋が動揺を隠せない様子で私の顔を見た。

「何だよこれ、何も言わなかったじゃないか、こんな事一言も…」
「…。」

何も言えるわけなかった。

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アメジストの魚3-3

アメジストの魚3-3

映画が終盤に差し掛かったと同時に穏やかな時間は終わりを告げる。

「ぅぇ、けほっげほっ…」
さっきの雨に打たれたせいなのか要が咳込み始めて止まらなくなった。

僕は毛布をかけて彼女の背中をさすりながら治まるのを待つしか無かった。それから落ち着くまでに十数分時間を要した。

「大丈夫…?今、水持ってくるから」
要は咳が治まってからも苦しいのか蹲ったまま黙っている。当然ながら返答はない。

新しいマグ

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アメジストの魚3-1

アメジストの魚3-1

要と再会して3日が経って、僕は熱を出した。
生え変わりの影響で熱が出てしまうことがあるらしいと前にサイトで見た気がする。

頭はぐらぐらして喉は焼けるように痛んで食事もろくにできない。鱗に触れると一枚、また一枚と剥がれて床やシーツにパラパラと落ちた。

(古い鱗ごと心につかえているものが一緒に剥がれ落ちてくれたらいいのにな。)

そんな事を思いながら僕はそれを拾ってゴミ箱に放り捨てた。

体調もあ

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アメジストの魚。2-4

アメジストの魚。2-4

「茅尋、やっぱりそうなんでしょ…?」

要が顔を歪めて僕を見る。その表情は何だか痛そうで辛そうな感じで今にも泣き出してしまいそうだった。

素直に明かすしかないんだろう。
中途半端な嘘をついたところで彼女にバレて詰められるのが目に見えている。それに、そんな苦しそうな顔をずっとさせるわけにもいかなかった。

「そうだ、僕は人魚症を患ってる。」

「いつから…?」

「2年前。」

「え…」

「要が

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アメジストの魚1-4

アメジストの魚1-4

ジリジリと時計が鳴る。
午前6時30分。あのまま眠ってしまっていたらしい。テレビもエアコンも点いたままで、乾燥してしまったのか喉が痛い。リモコンを手に取ってエアコンを消してベランダの窓を開けると、薄暗い街から冷たい風が吹いて頬を撫でた。テレビ画面の向こうではアナウンサーが笑顔で手を振っている。

「さむ……。」

こんなに寒いならエアコンを消したのは間違いだったかもしれない。窓を閉じてコーヒーを入

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