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アメジストの魚3-3

映画が終盤に差し掛かったと同時に穏やかな時間は終わりを告げる。

「ぅぇ、けほっげほっ…」
さっきの雨に打たれたせいなのか要が咳込み始めて止まらなくなった。

僕は毛布をかけて彼女の背中をさすりながら治まるのを待つしか無かった。それから落ち着くまでに十数分時間を要した。

「大丈夫…?今、水持ってくるから」
要は咳が治まってからも苦しいのか蹲ったまま黙っている。当然ながら返答はない。

新しいマグカップに水を入れて彼女の側に寄る。

「ほら、飲める?」
要は首を横に振る。

「そっか。ならせめて横になろう、な?」「…。」
無言で首を振る。

頑なに拒む彼女をどうにか休ませたかった僕はそっと肩を掴む。

…震えていた、小さな肩が。

「や、めて。」
普段の地声よりトーンの高い澄んだ音。
嫌な予感がした。

「要、こっち向いて」
声色を優しくして言う。

彼女は諦めたかのように顔を上げる。その瞳は涙に濡れていて、口の端から血が出ている。

「…。」
「血出てるよ」
ティッシュで拭おうとした僕の手は要によって弾かれる。その時、彼女が握りしめていた物が舞って床に落ちた。

それは綺麗な紫色をした鱗だった。