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答えがないまま生きる力

マッチングアプリで「好きな言葉はなんですか?」と質問された。不意を突かれた。映画や音楽などの作品についてはよく互いに質問する。「好きな言葉」を聞かれたのは初めてかもしれない。僕がなんて答えたか、覚えていない。彼女はこう答えた。

The trick is living without an answer.

映画のセリフらしい。『サムサッカー』(Thumbsucker)という映画で、親指をしゃぶる癖が高校生くらいになっても抜けない内向的な少年の話らしかった。その中である医師が言うセリフらしい。

「大事なのは、答えがないまま生きる力だ」(The trick is living without an answer.)

不安や虚無感で人生の道の先は真っ暗だ。少し明るくなってきたと思ったらまた暗くなる。生きるってその繰り返しだと思う。僕はうつ病になるなんて思わなかった。一生懸命働いた会社を追い出されるなんて思わなかった。何が起こるか分からない。不条理に振り回される。この先もどんな挫折が待っているか分からない。不安でいっぱいだ。

みんな不安いっぱいで真っ暗の中を生きている。そんなとき、魔法の法則が全てを解決してくれる、そんな風に期待してしまう。誰かとの対話、異国での経験、ある作品との出会い、きらめくようなきっかけがガラッと人生を変えてくれる。そんな風に信じていたことがあった。

でも魔法の解決策なんてない。「こうすれば人生すべてうまくいく」というような魔法みたいな法則を人は探してしまうことがあると思う。でもそんなものはない。正解と思っていたものが崩れることなんてよくある。絶対的な答えなんてない。

大事なのは迷いながら生きる力。正解なんてない。何を選んでも、何が起きても正解も不正解もない。答えを探さずに、ただ生きていくしかない。迷いながら、揺らぎながら、ただただ生きていく。答えがない人生の道草を楽しむ。それが生きるコツなのかもしれない。

答えを探そうとするから満ち足りず不幸せになってしまう。焦燥感や虚無感を感じてしまう。でも答えがなくたって生きていくしかない。そもそも答えなんてないかもしれないし、いつまで経っても答えを見つけることができないかもしれない。答えを見つけて幸せになれるかって分からない。

ときには出来事や出会いに意味なんて求めない方がいいのかもしれない。目の前のことを愚直に淡々とこなして、暗闇に中を一歩ずつ前に進むしかないのかもしれない。答えとは言えないけど、「もしかしたらこうじゃないか?」くらいの小さい光で足元を照らすしか無い。

環境は変化する。時間は流れる。不安なしに生きることなんてできない。ずっと不安なまま。今の不安が解消されたと思ったら、次の不安が生まれる。その繰り返し。そんな人生の中で、「将来や今、どうすればいいか分からず迷いながら生活する力」「答えのないまま生きる力」というのは、とても大切なのだろう。

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