大切にしたいスニーカーの理由
僕は小さな規模のスニーカーブランドをやっています。
名前はblueover(ブルーオーバー)と言います。
2011年の4月に発売され、10年がたちました。
10年。
そう書くとすごい時間がたったんだなぁって、思いますが、あっという間な気もしてます。
ブルーオーバーは国内の靴の工場さんと一緒に作っている、とても小さなブランドです。10年たってもその規模はあんまり変わっていません。
僕個人が立ち上げて、いろんな仲間にたすけられて、いまでも買っていただいてるお客様がいます。このご時世でもそこまで大きな影響を受けないことに本当に感謝しています。そんな感じで続けていられるブランドがブルーオーバーです。
今回の記事ではブルーオーバーについてゆるくお話しできればと思っています。
公式ブランド説明はリンク先に書いております(私の渾身の長文!)、もしご興味あれば、読んで頂ければ嬉しいです。(今回の記事にくらべ、堅いです)
まず初めに
僕は靴がとっても好きです
いまでもナイキやアディダスを履きます。それ以外のブランドもいっぱい履きます。ただ単純に靴やスニーカーが好きなんです。やっぱりビビッとかっこいいなと思うモノは買ってしまいます。
でもブルーオーバーはナイキなどに感じる、クールでスタイリッシュなかっこよさは無いと思っています。素材を吟味して、しっかりと靴をつくる。どちらかといえばクラフト的な革靴のような、しずかで、たたずまいあるよさをまとっているのだと思っています。
この靴のよさみたいなものを改めて、自分なりに考えてみてみました。めちゃくちゃ主観なのでご理解くださいますようよろしくお願い頂きます。
革を吟味
まずブルーオーバーは結構素材にこだわっています。それもわかりにくい部分で!
例えば革。
これは有名なブランドレザーを使った場合、一番わかりやすい”吟味”です。エルメスで使用している革っていえばわかりやすいし、高い!って思われますよね。
でもね。
ブルーオーバーはそんな超有名なブランドレザーは使ってないんです(とは言いながらホーウィンとか使ったことあるけど…)。どんなこだわりかっていうと、ロングセラーのマイキーというモデルがあるんですが、そこで使われている材料がトコと呼ばれる部分です。これは一般的には革の繊維質の部分で決して高級材料ではないんですね。だけどそこをあえて極分厚いものを選び抜いて使っているんです。これはなかなか扱っているタンナーさんがなくて、けっこう驚かれます。(こんな厚いのどこで手にいれてるんですかー?って)
上が通常の厚みで、下が分厚いものです。
で、厚いとどうなんだ?って質問があると思いますが、厚いと、たくさん履いたら”いい感じに馴染む”んですね。というか、そういったお声を頂いております。(つまりはお客様からの結果論)
中の素材を吟味
つぎの吟味は靴の中の素材。ライニングというのですが、僕は不思議と
豚革の素上げがお気に入り
です。これまでも複数回書いた記憶がありますが、やっぱり僕は
豚革の素上げがお気に入り
なんです。なんといいますが、あの素上げ特有のさらっとした手触り。そして蒸れた足にも優しく包み込んでくれる吸湿性。癖になったので、「ぜひこれは皆様にも」と、ご提案したく大体のモデルに採用させて頂いております。
はい
紐も吟味
靴ひもですね。
これは地味にめちゃくちゃ苦労したんです。これまでも、都度ベストの紐を選んでチョイスしてきたんですが、最近ついに見つけたんです。
本当にちょうどいい紐が。
ふわっとしながらも、力強さも感じるコットン製の紐。
過去、ふわっとした紐はあったんだけど、コットンでない。
力強いけどコットンでない。
コットンだけど、ふにゃふにゃしている。
さまざまな苦労をかさね、やっと出会えた理想の紐。
本当にちょうどいい感じのひも。みつけました。
こちら、ブルーオーバーのマイキーの紐に採用させていただいております!
しこみは入念に
靴っていうのは、裁断のあとに、縫製に掛かるんですが、その間が地味にめんどくさい工程があるんです。表と裏の間に副資材を仕込むんですね。心材やノリを引いて、縫製前のしたごしらえ。
じつはここが結構手間で、しっかりした材料をつかって、入念に仕込んどるんです!
「料理のできも、仕込みが大事」といったとかいわないとか
まったくパッと見にはわからない部分です。ウェブ画像でもわからない部分です。説明でも伝えにくいんです。でも日本の職人さんが手掛けるとこういった入念な仕込みがしっかりとあるんですね。
健全なモノヅクリ精神の真骨頂であります。
唯一無二のラスト
よく靴雑誌なんかでラストといわれています。
最後のlastではありません。足型をlastといいます。(つづりも同じ!)
特にニューバランスのラストは僕はすごくいいと思います(というか自分に合ってる)。
靴を作る人はラストこそ、その靴のすべてを語る。と言っているような気がします(妄想)。
だけど、
ラストほど一般の方にはわかりにくいのでは無いかと思ってます。
そして、
作るブランドも案外、おろそかにしているところも、あったり(なかったり)。
だけど
ブルーオーバーはここ、しっかり作りました。(大事)
兵庫県は魚住に居られる、ラスト職人のおじいさんの家に通いながら何度も修正を重ねて、つくりました。
足甲回りの締め付けはほどほどに、指先にゆとりを持たせるため、横から見た時にはポッテリしたシルエット。上からみたときの感じは程よく丸みを帯びたカーブを描きます。その結果、あまり他にはない唯一無二のラストに仕上あがっています。このラストはマイキーに使われているラストです。(JIS規格でいうとEくらいのサイズ感)
ブルーオーバーではいくつかのラストがありますが、すべてこのマイキーのラストを軸にバリエーションが存在しています。
しっかりとつくる
で
縫製が終わって”アッパー”とよばれるものになります。それをラストにカポって被せて、釣り込みっていう作業をします。
ブルーオーバーはスニーカーなんですけど、基本的には革を使った靴で、昔ながらな釣り込みの方法でアッパーを成型しているんです。
ここも地味に”ワザ”が光る作業なんです。機械と手を混ぜ込みながら引っ張る力を調整して、バッチシ釣り込みを行います。緩いと、ダブダブした靴になり、強すぎると革が割れちゃったりします。
上手に釣り込みをすることで革がラストに沿って、美しいフォルムをうみだすことができるんですね、この作り方が革靴っぽさの理由なのかもしれません。
(余談ですが、スポーツシューズも最近はトレジャーミシンをつかった製法がありますが、昔は釣り込み式でした。ナイキのビンテージタイプの製法は昔の釣り込みを行ってます。インソールをはがしたらわかります。インソールとアッパーが祭り縫いをしているのがトレジャーミシン。硬い中底がはいって縫いがないのが釣り込み式。)
注目してほしい加工底ソール
さてさて、
釣り込みがおわったらお次は”底付け”。これはソールと呼ばれる、クッション機能をもつ足の下に来る材料を指します。
このソール、本当に報われないんです。
なにがって、それを作って頂いている業者さんです。僕らが採用しているソールは加工底と呼ばれるものなんですが、スニーカーのソールはいろいろあるって、バルカナイズド、カップインソール、インジェクション。加工底もその一つです。ちょっと専門的になりますが、ソール材は金型を起こして、成型するものが多く、生産性は非常に高いものになります。要は
短時間でいっぱい作ることが出来ます。
ですが、加工底は読んで字のごとく、加工します。これ、EVAやラバーのシートを裁断して、一足一足、手で削り出して作っているんです。だから
短時間でいっぱい作れない。
実際に作る工程をみましたが、結構大変な作業でした。この加工底もっとスポットライト浴びてほしいんですが、なかなか当たらない。個人的にはクッションの硬度も調整できて、軽くて、歩きやすくて、めちゃくちゃ優秀なソールユニットだと思ってるんだけど。
日本では、パトリックさんが加工底でめちゃくちゃいいソールをつくってますね。実は僕らのソールも同じところでつくってるとか。フフフ
ということで、加工底はぜひチェックしてほしいポイントなんですね。
どこか愛嬌のある靴にしたい
でいろいろといいと思うことを、つらつらと書いてきてしまいましたが、外面の意匠の話をしてませんでした。
マイキーというモデルが僕らのブランドの定番であるんですが、それ以外にも共通した想いでデザインというものを施しています。(本サイトのアバウト記載以外で)それはどこか愛嬌を感じれるようなモノであること。
愛嬌は別にかわいいといったことだけではありません。カッコイイ愛嬌もあると思っています。なにか大切にしたいと思ってもらえる要素をほんの少し仕込んでいます。それは、パターンの部分で言うと、ミリ単位のバランスの集合体です。サンプルではその調整でなんども作り直しています。(職人のZUCCOさんありがとう、そしてごめんね)
↑こちら僕のわがままを聞いてくださっている靴職人ZUCCO氏のNOTEです!
かんじんなことは、目には見えない
そうした見えない何かをお客様は感じ取って頂いているのかもしれないと思っています。
The important thing is invisible(かんじんなことは、目には見えない)
つい先日よんだ「星の王子様」に書いてあったセリフです。まだ読んだ記憶があったので、ここぞとばかりに引用させて頂いております。なんとなく、英語の本なので、英語に翻訳して書いてみました。
なんだか強引にまとめようとしていますが、ブルーオーバーのことを気に入ってくださっているお客様は、みなどれも見えないけれど、かんじんなことをしっかりと受け止めて頂けているのかなと、
これまで、こんなにもモデルについての詳細を説明していなかったんですが、こうして書いてみると、ブルーオーバーというブランドの靴たちは、人の手のワザワザの部分が少しづつ、たくさん集まって出来上がったんだなぁとも思い、そしてそれをお客様は感じ取って頂いて履かれているんだなぁと。勝手に思うようにしました。
なにか見えないけれど、大切にしてほしい理由が見えたような気分でもあります。
ということで、ものすごくポジティブに受けとめて、この回を閉めさせて頂こうかと思います。長文。お読みいただきありがとうございますした!
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