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意外! その言い回しはこんなところから来ていた

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普段 何気なく使ってる言い回し、訪ねてみれば古い書物に載ってることが始まりだったりするものも。
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【十八史略】(じゅうはっ しりゃく)

【十八史略】(じゅうはっ しりゃく)

 ── 伝説的な歴史である三皇五帝の時代から南宋の時代まで、十八の正史を要約した歴史書のひとつ ──

 現在も同じなのかどうかは知らないけど、昔の中国の人たちの歴史に対する姿勢には厳然たるものがあった。
 それを現すエピソードとして、「春秋左氏伝(しゅんじゅう さし でん)に有名な話が載っている。

 戦国時代、斉の国に崔杼(さいちょorさいしょ)という宰相がいた。なかなか優秀な政治手腕の持ち主

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【四苦八苦】(しくはっく)

【四苦八苦】(しくはっく)

 あらゆる苦しみ、非常な苦しみのことをいう。最近はそれほど大した苦労でなくとも「四苦八苦してるよ」くらいの慣用句で使ったりもするが、本来は生きている者なら誰でも経験しなければならない、どうしようもない苦しみのことなのである。
 この言葉の歴史は古く、仏教の前身になったインドの哲学、ウパニシャッド哲学からきている。

 ひとくちに「四苦八苦」というが、「四苦」と「八苦」を合成した言葉であり、その二者

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【舎利】(しゃり)

【舎利】(しゃり)

 米粒をあらわす俗語。今でも寿司屋さんでは米やご飯を呼ぶのに使っている。白米であることを強調するために、銀シャリなどと言ったりもする。

 これはもともとサンスクリット語で、お寺で使われていた仏教用語だった。しかも、なんと、これは骨を表す言葉だったのだ。

 釈迦がいたころの時代、インドでは仏像とか仏画などというものは存在しなかった。教えそのものがあまりにも気高くて、像や絵に現すことは不可能だとさ

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【未亡人】(みぼうじん)

【未亡人】(みぼうじん)

 ── 夫に死別して再婚していない女性。後家(ごけ)──

 普段なにげなく使っている言葉なのかもしれないが、「未亡人」を書き下し文にすると「いまだ亡(ほろ)びざる人」。要するに、まだ死んでいない人、という意味になる。
 まだ、というのだから、早く死ねばいいのに、というニュアンスだ。
 とてつもなく失礼な言い方である。

 「未亡人」という言葉が使われている最も古い記録は、今から2000年ほど前に

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【水清ければ魚棲まず】

【水清ければ魚棲まず】

 ── あまりに清廉すぎると、かえって人に嫌われる ──

 江戸時代の後期、老中となった田沼意次はおおっぴらに賄賂を取り、賄賂を渡さないと何もしてくれない政治を横行させたが、やがて失脚するはめに陥った。
 次に老中となった松平定信(まつだいら・さだのぶ)は、意次の政治への反省からか、今度はやたら清廉な政治を行った。それはいいのだが、あまりにも清廉すぎて、民衆は堅苦しくてしかたない。

  白河の

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【豆を煮るに 豆の豆がらを焚く】

【豆を煮るに 豆の豆がらを焚く】

 ── 兄弟や仲間が互いに傷つけあうことのたとえ ──

 「三国志」に登場する魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)の三国。
 この三国のうち、最終的にな勝者となったのは「乱世の奸雄(かんゆう)」(世の中が乱れるほど力を発揮する男)とうたわれた曹操(そうそう)が率いる魏(ぎ)の国であった。

 曹操(そうそう)には文帝と東阿王という二人の息子があり、曹操(そうそう)が死んだ後、文帝が皇帝となって魏(ぎ

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【隗より始めよ】(かいより はじめよ)

【隗より始めよ】(かいより はじめよ)

 ── どんな遠大なことでも、まず身近なところから始めよ。転じて、事を起こすときにはまず自分自身から着手せよ ──

 全土が小さな国家に分かれ、自分の国こそ天下に覇を唱えるのだと戦いにあけくれていた戦国時代。そんな時代、各国がもっとも欲していたのは、武器でもなければ軍資金でもなかった。
 いや、もちろんそれはそれで欲しかったのだが、それよりもっと、それこそ喉から手が出るほど欲しがっていたのは、状

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【枕を高くして寝る】

【枕を高くして寝る】

 ── 安心して寝ること ──

 省略して「高枕」(たかまくら)とも言う。何の心配事もないことを表わす言葉で、最初に使われたのは中国の戦国時代である。

 戦国時代とは、文字通り、各国が入り乱れて戦いにつぐ戦いにあけくれていた時代である。
 初めのころこそ天下に覇を唱えるのは誰なのか検討さえつかないほど混沌としていたものの、時間が経つにつれて、頭角を現してくる国と、力が衰えてくる国がしだいにはっ

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【木鐸】(ぼくたく)

【木鐸】(ぼくたく)

 ── 世に警告を発したり、教え導いたりする人 ──

「新聞は社会の木鐸(ぼくたく)だ」という言葉を耳にしたことがあると思うが、この「鐸」(たく)は鈴のこと。
 普通の鈴はラッパ状の本体の内側に金属の舌(ぜつ)がぶら下げられていて、この舌が内側から本体に当たることで鳴るようになっている。「木鐸」(ぼくたく)は、その舌が木でできているところが、普通の鈴と違うため、音色が柔らかいのが特徴らしい。聞い

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【端午の節句】(たんごの せっく)

【端午の節句】(たんごの せっく)

 ── 五月五日のこと ──

 現代の日本では、節句とよばれる日は三月三日の桃の節句と五月五日の端午の節句の二つしかないが、本当は一年に五つある。これを五節句(ごせっく)といい、

 一月七日 人日(じんじつ)
 三月三日 上巳(じょうし)
 五月五日 端午(たんご)
 七月七日 七夕(しちせき)
 九月九日 重陽(ちょうよう)

 と、それぞれ名前がついていて、やるべき行事や特別に食べるものな

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【覆水、盆に返らず】(ふくすい ぼんに かえらず)

【覆水、盆に返らず】(ふくすい ぼんに かえらず)

 ── 一度やったことはもう取り返しがつかないのだ ──

「覆水」(ふくすい)とは、入れ物がひっくり返ってこぼれた水のこと。この場合の入れ物は「盆」だが、茶碗などを載せて運ぶ、食卓にあるような「お盆」のことではなく、茶碗をもう少し平たくしたようなと、あるいは猪口をぐんと大きくしたようなというか、そういう器のこと。酒や水を飲むのに使われてたらしい。

 その器をひっくり返して中に入った水をこぼして

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【ひそみに ならう】

【ひそみに ならう】

 ── よしあしの区別なく他人のまねをすること ──

 戦国時代、西施(せいし)という絶世の美女がいた。後年の楊貴妃(ようきひ)と並んで中国史上の二大美人というから、クレオパトラの合わせて世界三大美人に数えられるほど美しい女性だったらしい。
 そんな女性を愛人にすることができた男性の幸福はうかがい知ることのできぬほど大きなものなのだろう。私には経験がないのでよく分からないが。
 西施は、男性のそ

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【尾生の信】(びせいの しん)

【尾生の信】(びせいの しん)

 ── 愚直なこと ──

 昔、尾生(びせい)という若者があった。
 背はそれほど低いわけでもないが、かといって高くもなく、顔もべつにいい男というほどでもない。家は、貧しくはないものの、さほど裕福でもなく、学歴は低い。
 ただ心根はやさしく、正直なことは他にひけはとらなかった。もっとも、正直というより実直。いや、バカ正直といったほうがより正確だったかもしれない。が、幸いなことに、そんなものは外か

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