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三年目

33
2021年の詩まとめ
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#学校

すこし足りない、

すこし足りない、

電子レンジで温めなかった惣菜のからあげ
気の抜けた三ツ矢サイダー
削ってすぐに折れた2Bの鉛筆
あと一歩のところで点滅する信号
TLが更新されない平日昼間のTwitter
ピントが合っていなかった夕日の写真
冷たくなっていく理科室の机
夕日がなめらかに滲む黒板
日誌に記される誰かの今日
グランドからきこえる野球部の掛け声
リズムよく響く卓球のラリー
職員室から溢れる珈琲の香り
下駄箱にきれいに揃え

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裏庭

裏庭

理科室の窓から覗く裏庭
園芸部の育てている夏野菜の小さな畑
不格好でもおいしい
未熟でなにも知らなくても許されるわたしたち
如雨露で恵みの雨を
束の間の魔法使いごっこ
ホースの先をぎゅっと握って遠くに水撒き
用務員のおじさんは
いつでもいるのにいつもいなくて
きょうも落ち葉がまとめられている花壇の隅に
アルコールランプの炎はいつも妖しい
蓋を被せて消すとき

息をとめた

0831

0831

美術室の隣の音楽室
重い扉を引けば天井が高く臙脂色に囲まれた空間
すべての教室にある机や椅子たちは
違和感として存在していて
五線譜黒板にらくがきすること
なんだか躊躇われて
いつだって綺麗で長いチョークが並んでる
夜中に絵画の音楽家たちが奏でるピアノ聴きたくて
忍び込んだ8月31日

summer

summer

校舎裏のプール
夏限定で僕たちの学校生活の一部となる
去年の一年生が育てた朝顔が
今年はプールのフェンスに絡まって
植物係だけが青い花を見ていた朝
直射日光に焦げるプールサイドを
ともだちの肩つかみながら走らないように
心だけ走って
塩素のにおいと泳げない僕の
夏の記憶のにおい

PM4:15

PM4:15

下駄箱からスニーカーがなくなった放課後
廊下の蛍光灯がつく前の夕方未満の校内
踊り場にたまる影はどこまでも深い闇で
職員室からおとなとこどもの境界線をつくる珈琲の香り
音楽室の窓から吹奏楽部の未完成な曲が校庭にゆるやかに響く
校舎と体育館を繋ぐ廊下を脱線して、上履きのまま裏庭にでる
生活の時間に植えた朝顔が眠っていた

6時間目

午後の道徳の授業
命や死について学ぶとき
きまって同級生の親友の死を語ってくる先生がいた
名前も顔も声も知らないその親友の最期を聴かされるわたしたち
不慮の事故だって
わたしたちは話の中盤にはもう飽きていて
途中から涙ぐみながら語る先生はいつだって不気味で
感動ポルノ監督気分で教壇に立つ
死にたいクラスメートは窓際の席からグラウンドを見つめて
下級生の持久走を眺めていて
一周遅れのあの子は世界の理

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